11話 一夜の夢
明けましておめでとうございます。
俺にもそんなふうに考えていた時期がありました。
電子レンジでチンチンチートは儚く散った。たった、一夜の甘い希望を抱いた夢は、木っ端微塵に散った。
結論から言うと、マイクロウェーブはクソだった。対象物には30センチ以内に近づく必要があり、最低でも3分くらいは対象にスキルを念じ続けなくてはならない。そう、電子レンジと同じで、対処物が大きくなればなるほど時間を要した。
これは絶対に対魔物のスキルではない。
断言する!
これは食べ物を温めるスキルだ。
もうギルドには2度と行けない。さよなら、アンリちゃん。地獄の爆熱裁断者なんて言ってしまった。ああ、恥ずかしい。穴がったら、入りたい。
こうして俺の冒険者デビューは悲惨な結末となった。
今思えば平凡のウェーブというダサいスキル名は妙に的を得ていたな。あの神官は元気にやっているのだろうか?あの人はもしかしたら、天才かもしれない。
俺は兄に短い手紙を出した。すぐに帰ると。若干、役には立ちそうもない的な表現を入れて。だって、期待されていたら可哀想じゃん。
それよりも、優しい家族のことだ。下手したら来るなと言いかねない。平凡のウェーブという無能なスキルを授かってからも、俺に気遣ってスキルの話はタブーにしてくれた。何より、俺を大事に育ててくれた。家族が困難な時に役に立てないなら、この世界に転生した意味もない。孤独なサラリーマン時代を思い出す。まだ何か出来るはずだ。時間こそないが、今こそ、現代の知識を活かすのだ。




