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詩全集3

冰槽

作者: 那須茄子

僕と君の間には

ガラスのクジラが横たわっている


尾羽に腰掛けた君の長い髪を

撫でる夜風はどうやら星屑を飛ばそうと 

必死のようだ


まるで水槽の金魚みたいだねと君は笑う

閉ざされたどこにも行けない僕たちを表している


二人の吐息が白く溶けて

窓ガラスに一瞬の模様を描く

名前を呼ぶその声はこんなにも震えていて

気付かないふりをして

僕はただ君の手を強く握りしめた

 

秘密の物語の主人公はいつだって

二人だけの水槽の中で

世界を忘れて呼吸している


君の言葉の端々に隠されていた

潮の香りのする切なさは残された残機



空になった水槽の底に座り込んだ君

映るのは歪んだ僕の顔とクジラの涙



この限られた時間だけが僕の全て

水槽の外は僕の世界にはなり得ない

止まったままどうか 

想像させて

ずっと広くて美しい場所でありますように、と


そう願うことだけが

僕にできる唯一のことだった

君の言葉の端々に隠されていた

潮の香りのする切なさは

耳を塞いでしまいたくなるほどの

後悔で溢れていた



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― 新着の感想 ―
儚い…… 二人だけの青春、二人だけの世界……そう錯覚してしまったのですね……
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