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プロローグ

結構、設定が抽象的なんでこれは長い年月をかけてゆっくりとやっていくつもりですので。よろしくお願いします。

ガキン!!………キンキンキン!!……ガキン!!


暗闇に鋼同士がぶつかり合う音が響き渡る。闘っているのは、10歳にも満たない二人の少年だった。


一人は銀の長髪を後ろで縛っており、自分の身長と同じくらいの大剣を軽々と振り回している。


もう一人の少年は、薄紫の短髪をし、その手には漆黒の槍がしっかりと握られている。


二人はどれだけの間闘っていたのだろうか、額には玉のような汗が噴き出している。


「はぁ……はぁ……ハァァァァァァ!!」


その銀髪の少年が片手を前に掲げ叫び声を上げる。すると、灼熱の業火が渦となって薄紫色の少年へと迫った。だがそれを見ても、もう片方の少年はまったく動じない。


その少年も同じように両手を前に突き出す。すると、そこに厚さ60センチ程の氷の壁が空中に現れる。


シュワァァァァァァァァァァァァァ!!っとその業火と氷がぶつかり真っ白い水蒸気が周りを満たす。


キンキンキンキン……キンキン……キンキンキン!!その水蒸気によって何も見えない中、鋼がぶつかり合う音だけが響き渡る。


シュン……シュンっとその水蒸気の中から二つの影が飛び出してきた。双方が反対方向へと飛び、銀髪の少年は岩山の上へと、そして薄紫色の髪をして少年は地面すれすれに低く構える。


そこから二人はまるで岩になってしまったように動かなくなった。だが、その二人の闘気がぶつかりあいピシピシピシっと空気が張り詰めていく。


先に動いたのは銀髪の少年だった。その岩山から飛び上がり、大剣を上段に構えながら突っ込んだ。


「ハァァァァァァ!!」


「ソリャァァァァァ!!」


薄紫色の髪の少年も漆黒の槍を構え直して、空へと跳躍した。シュン!!っと漆黒の槍の穂先が少年の喉元へと突き出す。


ギン!!っとそれを最小限の大剣の動きで捌くと銀髪の少年は大剣がギギギギギギっと火花を散らしながら槍の柄を滑る。


「!!」


漆黒の槍を突き出した少年は一瞬驚いた表情をしたものの、すぐにその動きに対応しようとした。だが、銀髪の少年の動きは早すぎた。槍を構え直そうとする一瞬の隙をつき、銀髪の少年の大剣が薄紫色の髪の少年の喉元の直前でピタっと止まっていた。


しばらく、その状態のまま長い時が過ぎ………薄紫色の髪の少年はぱっとその槍を放リ投げる。


「……参った。降参だよ……ガレリウス」


ガレリウスと言われた少年は、アッハッハッハッハ!!っと高笑いしながら大剣をどける。


「今回も俺様の勝利だ!!まぁ……レオンも前よりはほんの少しだけ強くなったぞ」


レオンと言われた薄紫色の髪の少年は人懐っこい笑顔を向けながら、ガレリウスに反論する。


「え~~少し~~?今回は、ガレリウスも危なかったんじゃないの~?」


「はん!!この俺様がレオン如きに後れをとるかよ!!今回も俺様の圧勝だぜ!!」


アッ八ハッハっと高笑いするガレリウス尻目に、レオンは自分が放り投げた漆黒の槍を拾う。


「あ~~あ~~これで、397戦0勝397敗か~、いつになったらガレリウスから勝利をもぎ取れるんだろう」


「諦めな、レオン。俺様にはお前は一生勝てないのさ………てゆーか俺様が勝たせねーー!!」


そんな事を言いあいながら、二人は仲良く山の頂へと向かって歩き始めた。かなり険しい山であるはずだが、二人はそれをまったく気にならないかの如くピョ~~ン!!ピョ~~ン!!っと跳んでいく。


「……すっかり遅くなっちゃってね。師匠怒ってると思うよ~~」


レオンはブルっと何か恐ろしいものでも思い出してしまったかのように体を震わせた。心なしか少しその笑顔が引きつっている。それを地面を蹴って跳びあがりながらチラっと見たガレリウスは……


「レオンは、恐がりすぎなんだよ!!俺様からしたらあんなのいい歳いったばばさぐぼらぁぁぁ!!」


「ガ、ガレリウーーーース!!」


自分の真横を一緒に跳躍していたはずのガレリウスが、後方へと吹っ飛んでいった。しかし、レオンはかろうじて見て取る事ができた。ガレリウスがある禁句を言おうとした瞬間、半透明の拳型の闘気がガレリウスの頬にめり込んでいたのだ。


ガレリウスはその勢いのままゴロゴロゴロっと山の急斜面を転がり落ちて行った。レオンは口をパクパク動かしながら後ろを振り向きしばらく呆然としていた。


そして、ゆっくりと山の頂上の方を見つめて……………一言。


「……………師匠……ひ、酷すぎます」


レオンはガレリウスに哀悼の念をこめ、そのまま助ける事もせずに山を登って行った。




==============    ====================




レオンが垂直に反りたった岩壁を命綱もつけずにスルスルスルスルっと登っていくと、山の頂上付近とは思えないかなり開かれた場所へ出た。


そこには樹木が生い茂り、その奥には木で造られた小さな小屋が建てられている。そしてその小さな小屋の前に、一人の女性が椅子に腰かけスッと夜空を見上げていた。


「ああ……レオン。今日は実にいい月が出ているとは思わんか?」


レオンもそれにつられるように空を見上げてみる。


どこまでも黒でありながら、手を伸ばすだけで触れられそうな程透き通った夜空。青白く神秘的な月影と、宝石箱をひっくり返したように溢れる星明かり……静かな夜だった。


「………そうですね」


そこに座っているは若い女性だった。その声音から受ける印象は二十代前半、あるいは中頃だろう。その人物は体のラインが分かる程密着した白い法衣を着、その法衣を内側から押し上げるように浮かび上がる豊艶で蟲惑的な体つきをしている。髪は腰まで届くであろう滑らかな黒の長髪をしている。


しかし、自分は知っている。何年も前からこの人はこの姿のままなのだ。自分よりも以前から一緒にいるガレリウスさえも本当の年齢は知らないのだ。しかし、この人の前で年齢の事は禁句だ。いえば、先ほどのガレリウスの二の舞になるだろう。


師匠はしばらくそのまま夜空を見つめていたが、ふ~~っと大きく息を吐いた後自分をその黒い瞳で見つめてきた。


「……さて、レオン。すでにアリサとカールには聞いた事をお前にも尋ねようか」


「はい。何でしょうか?」


師匠はよく自分達4人に問答のようなものをする事がある。普段はすごく明るくて、でたらめな人なのだが、この問答をする前の師匠はまるで別人になってしまったかのように感じる。すごく簡単な質問もあれば、答えが出せないような難しいものもあった。例えば…………



==============     =====================



「さぁ……お前達に尋ねよう。人は……強くなるためには何かを背負わなければならないのだろうか?」


それを聞いたアリサは師匠に少し噛みついていた。


「師匠。それは逆なんじゃないでしょうか?人は何かを背負うと強くなるんですよ。例えば………復讐のためとか」


「…………それがお前の答えか。アリサ」


「はい」


「では……カールはどうだ?」


びくっと師匠に名前を呼ばれたカールという少年は飛び跳ねていた。カールはとても臆病だった。長く一緒にいる自分たちですら緊張するらしい。


「えっと……えっと……そう…ですね。やらなくちゃっと思う方が…頑張れる……と思います」


「なるほど……それがお前の答えだな?カール?」


「は、はい!!」


っとカールは上ずった声で答えていた。それを聞き、ふ~~っと長く息をはく師匠。そして、その瞳が今度はガレリウスを捉える。


「お前はどう思う?ガレリウス?」


それを聞いたガレリウスは、はん!!っと馬鹿にしたように鼻を鳴らしていた。


「俺様は全然そうは思わないぜ?お師匠さん。強くなる奴ってのは、勝手に強くなるもんだ。その証拠に俺様は別に何も考えてね~けど、こんなに強えーじゃねーか」


ガレリウスはアッ八ハッハッハっといつものように高笑いをしている。師匠はその答えを聞き、お前らしいなっとほほ笑んでいた。


「では……最後にレオン、お前はどう思う?」


師匠は今度は俺の方を向いて他の三人に尋ねたのと、まったく同じ事を聞いてきた。俺は真剣に考えてみた………俺は師匠のこの問答が好きだった。自分というものがくっきりと浮かび上がってくるような気がするのだ。


しばらく……黙ったままだったが、レオンは師匠の目をしっかりと見つめながら言った。


「………俺は……まだ、分かりません」


「それが、お前の答えか?」


「はい……すみません」


そう申し訳なさそうに、謝ったレオンにその黒髪の女性は少し面白そうに笑った。


「何を謝る必要がある。それがこの問答に対するお前の答えなのだからな」




===============   =================




師匠が行なうこの問答にどういう意味があるのか……長く一緒に暮らしている自分にも分からない。だけど、すごく重要な事のような気がしていた。


「……さて、レオン。お前は、どれほど強くなりたい?」


「………どれほど?」


自分は師匠の言っている意味がよく分からなかった。それが表情に出てしまったのだろうか?。師匠は少し悲しそうに頭を振ってくれた。


「ああ……すまないな。私の言い方が悪かったかもしれない。お前達は毎日毎日……つらい鍛錬に精を出しているだろう?私が聞きたいのは、強くなりたいと思う理由ではないのだ。つまり……自分が満足できる強さとは……という事だ」


「………」


「アリサは、こう言った。‘私は、この世にある謎をすべて解き明かしたいんです。このオスタリア大陸中にあるすべての謎を。そのためには秘境に行く事や、国を敵にまわす事になるかもしれない。それでも自分の我を通すだけの力が欲しいです’っとな。


 カールはこう言った。‘自分は……この性格を変えたいんです。だから、自分に自信が持てるだけの強さでいいです’っとな。


 まだ、聞いてはいないがガレリウスならこう言うだろう。‘誰よりも強くだ……俺様がこの大陸の誰よりも、そしてお師匠さんよりも強くなった時には、満足できるだろうな!!’っとな。


 お前はどうだ?レオン。お前が満足できる強さとはどれほどだ?」


今度の問答は自分にとっては簡単だった。


「………守れるくらい……ですかね?」


「うん?」


「俺は、自分が大切に思っている人を守れるだけの力が欲しいです」


「…………お前にしては珍しく即答だな」


「そうですね。でも、考えなかった訳じゃないですよ?俺は師匠もアリサもカールもガレリウスも大好きだから、みんなを守れるくらいの力が欲しいです………まぁ、師匠やガレリウスに一度も勝った事がない俺がいうのもあれですけどね」


「…………そうか。それがお前の答」


師匠がいつものように締めくくろうとした瞬間……ヒュン!!っと崖の方から黒い影が空高く跳躍した。


それは山の中腹から転げ落ち、全身砂まみれになったガレリウスだった。


「何しやがんだ!!死にそうになったじゃねーか!!」


ガレリウスは全身に闘気をみなぎられ、あろうことか師匠に向かって斬りつけようとしていた。それを見た師匠は……


「……ガレリウスか。お前にも同じ問いを尋ねよう……お前は」


「うるせー!!このババァ!!」


その暴言を聞いた瞬間ピクっとその師匠の眉間に深い深い皺が刻まれたかと思うと、ふらっと椅子から立ち上がった。その師匠めがけてガレリウスは突っ込んでくる。


師匠は目にもとまらぬ速さで何百もの拳をガレリウスの方へと突き出した。拳型の闘気が雨あられっとガレリウスに迫る。


キンキンキンキンキンキン!!っと初めのうちはガレリウスもそれを空中で自らの大剣で捌いていたが………


「ぐぼらぁぼがぁぁぁっぁぁぁ!!」


捉えきれなくなったのか師匠の拳を全身に食らい始めた。そして………ガレリウスは宙に浮いていつまでも落ちてこなかった。


いや、落ちてこなかったという表現は正しくないだろう。ガレリウスは空中でずっとぼこられ続けているのだ。師匠の拳によって。


「し、師匠!!やめて下さい!!ガレリウスが死んでしまいます!!」


レオンは必死になって師匠を止めようとした。だが、師匠の怒りはまったく収まらなかった。


「………死ねやぁぁぁぁぁぁぁっぁぁぁ!!」


というより、師匠はガレリウスを殺す気のようだ。


その雄たけびと共に師匠の拳の勢いがさらに増し、ガレリウスは空高く……空高く上っていった。そして、ピタっと師匠はやっとその猛攻を止めてくれた。


しかし、ガレリウスは中々落ちてこなかった。いったいどれほどの高さまで吹っ飛ばされたのだろうか。


師匠はくるりっと自分に背を向けると小屋の方へと歩いていこうとした。そして……


「いいか?レオン……これだけは覚えておけよ?女性に歳を聞くような男は、最低の糞野郎だ。お前はそんな男にはならないよな?」


コクコクコクっとレオンは高速で首を縦に振った。背を向けている師匠からは見えないはずだが、


「………それでいい。レオン、あの馬鹿が落ちてきたらさっさと小屋に連れてこい。飯にするからな」


それだけ言い残して、師匠は小屋の方へと去っていった。レオンは満天の星空を見上げながら…………


「……………ガレリウス………俺はお前を守れる自信がないよ」


その小さな独白は満天の星空へと消えていった。


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