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落第女子高生、幼稚園児はじめました(休載中)  作者: 062


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3/11

3.幼稚園初日

「お姉ちゃん、あ!違った。サトミちゃん。水筒を忘れているよ」


わざとらしく言い間違えて、ユキが玄関に水筒を持ってきた。今日からサトミが通うことになる関東国立教育大学附属湘南幼稚園の制服は、本来なら高校生の彼女には場違いな、赤色のギンガムチェックの吊りスカートにブラウス。そして、黄色い帽子という、どこかコスプレのような格好だった。


(よりによって、国立の附属幼稚園だなんて……)


サトミは小さく息を吐き、ユキから水筒を受け取った。「ありがとう」と力なく言うのが精一杯だった。自宅から車でわずか10分。こんなに近い場所で、まさか自分が幼稚園に通うことになるとは、夢にも思わなかった。しかも、これは文部科学省が決めた前代未聞の落第パターンなのだ。


幼稚園に到着すると、整然とした美しい園舎と、楽しそうに遊ぶ子供たちの声がサトミを包んだ。先生に連れられ、年長組の教室に入る。担任の前田先生は、優しそうな笑顔でサトミを迎えた。


「今日から一緒に過ごしましょうね。サトミちゃん」


サトミは小さく頷いた。周囲の子供たちは、見慣れない大きな子が来たことに興味津々の様子で、小さな声でくすくす笑っている。


午前中の活動が始まった。記憶力を養うためだろうか?A4サイズ8枚のカードがホワイトボードに貼り付けてあり、2分経つと裏返しにされる。今回はライオンやウサギのような動物のイラストが反対向きにされて、みんなが手を挙げて答えている。


(あれ?おしっこしたいかも?)


サトミは、小さな違和感を覚えた。しかし、子供たちが活発に手を挙げている中で、自分だけがトイレに行きたいと言うのは気が引けた。それに、すぐに終わるかもしれないと思い、サトミは下腹部に意識を集中させた。


しかし、下腹部の違和感はゆっくりと強まっていく。カードが再び裏返され、子供たちが「キリン!」「ゾウ!」と元気よく答える声が聞こえる中、サトミの意識は膀胱に集中していた。


(やっぱり……行きたい……)


しかし、もう遅かった。冷たい汗が背中を伝い始めたその時、サトミは温かい感覚を下半身に感じた。


「だめ……!」


小さな声が漏れた。床に小さな染みが広がる。周囲の子供たちが、何かに気づいたようにサトミを見つめた。担任の前田先生が、異変に気づき駆け寄ってきた。


「サトミちゃん、どうしたの?」


サトミは顔を赤くして、下半身を指さした。前田先生はすぐに状況を理解した。


「あらあら……大丈夫よ」


と優しく声をかけながらも、その表情には微かな困惑の色が見えた。


「あなた、本来なら高校3年よね?」


という言葉が、小さな声でサトミの耳に届いた。幼稚園には、予備の着替えが用意されている。しかし、それは当然ながら小さな子供用のものばかりで、サトミに合うサイズはない。前田先生は少し考えた後、「スッポンポンよりは……ね」と、予備の中で一番大きなサイズのオムツを取り出した。

抵抗する間もなく、サトミは先生にオムツをつけさせられた。下半身に感じる異様な感触と、子供服特有の匂いが、彼女の自尊心をゆっくりと奪っていく。


教室に戻ると、先ほど下半身を濡らしたことに気づいた園児たちが、「あ!サトミちゃんおむつだ!」と指さして笑った。純粋な子供の笑い声が、サトミの胸に深く突き刺さる。


しかし、サトミの不幸はこれで終わらなかった。水筒の飲み物を飲むたびに、膀胱は再び圧力を増してくる。


昼食の時間。小さな子供たちが、目の前のトレーに乗せられた給食を幸せそうに頬張っている。サトミのトレーには、他の子供たちの倍ほどの量のカレーライスとサラダ、フルーツが盛られていた。高校生のサトミに合わせて用意されたのだろう。


(早く食べ終わってトイレに行かないと……!)


午前中の失敗が頭をよぎり、サトミは焦燥感に駆られた。しかし、なかなか減らない給食の量に、内心で小さな悲鳴を上げた。スプーンを持つ手に力を込め、カレーライスを掻き込む。しかし、その間も下腹部にはじわじわと増していく圧迫感が押し寄せてくる。フルーツの甘さも、今のサトミにはまともに感じられない。ただただ、早くこの時間を終わらせたい一心だった。


周りの子供たちがゆっくりと食事を楽しむ中、サトミはひたすら目の前の給食を詰め込んだ。喉を通らないような感覚を覚えながらも、トイレへ行けるのは食後だと分かっているから、必死だった。しかし、膀胱の合図はだんだんと強さを増していく。スプーンを持つ手が震えそうになるのを堪えながら、最後のフルーツを口に放り込んだ。


「ごちそうさまでした!」


ほとんど味わうこともできなかった給食を形ばかりに終え、サトミは立ち上がろうとした。その瞬間、下腹部に三次元的な緊張がかかり、温かい感覚が下半身に広がった。


(また……!)


サトミの顔から、すっかり血の気が引いていくのを感じた。どうしようもない脱力感と、繰り返される失態への自己嫌悪が、彼女の心を深く蝕んでいく。


前田先生が、またもや困惑した表情でサトミに近づいてきた。


「サトミちゃん……」


サトミは顔を上げることができなかった。ただ、小さく震える肩が、彼女の感情的な状態を物語っていた。


「今日は、もう年少組で少し落ち着いて過ごしましょうか」


前田先生に連れられ、サトミは年少組の教室へと向かった。年少組の教室には、優しそうな目をした竹中先生がいた。


「竹中先生、この子は年長組のサトミちゃんです。午前中に少し体調を崩してしまって……」


前田先生は、サトミの事情を小さな声で竹中先生に説明した。竹中先生は、心配そうな表情でサトミに近づき、優しく微笑んだ。


「あらあら、サトミちゃん、大丈夫?無理しないでゆっくりしていきましょうね」


まず、竹中先生はサトミの汚れてしまったオムツを交換してくれた。子供服特有の匂いが鼻をつく。新しいオムツをつけた下半身は、どこか落ち着かない。


「少し気分転換に、お外で遊んでいきましょうか?温かいですし」


竹中先生に促され、サトミは園庭へと向かった。小さな子供たちが、砂場で遊んだり、滑り台を滑ったりして楽しそうな声を上げている。サトミは、オムツ一枚にブラウス姿という異様な格好で、園庭の隅に体を丸めて座った。太陽の光は温かいのだが、サトミの心は冷たかった。周りの子供たちの視線が、まるで自分を奇妙な生き物を見ているかのようで、サトミはさらに深く頭を下げた。


早く時間が過ぎてほしい―― サトミはただそれだけを願っていた。


そして、お昼寝の時間。小さな布団が並べられた部屋で、サトミは自分の布団に潜り込んだ。前日のほとんど眠れなかった夜と、今日一日経験した精神的な疲労が、彼女を深い眠りに誘った。意識が途切れる最後の瞬間、サトミは温かい安心感に包まれたような気がした。


どれくらいの時間が経っただろうか。ふと、サトミは下半身に嫌な湿り気を感じて目を覚ました。身体を起こすと、下半身の感覚はさらに明確になった。注意深く布団の中を確認すると、おむつの周りの布団が、小さな範囲で濡れているのがわかった。


(まさか……)


サトミはゆっくりと下半身のオムツに手をやった。ぐっしょりと濡れた感触が、冷たい事実を彼女に突きつける。おねしょをしてしまったのだ。高校生にもなって、幼稚園で、おねしょ―― その些細な言葉が、サトミの最後の自尊心を完全に打ち砕いた。恥、自己嫌悪、そして未来への深い不安が、一度にサトミの意識に押し寄せ、彼女は布団の中で静かに涙を流した。


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