【第2話】ゼウス・フォン・アゲアシトル情報管理大臣
この作品はフィクションです。
実在の人物・団体・事件は、一切関係がありません。
また、このような政策を、
実施している国・自治体は、ありません。
「ゼウス・フォン・アゲアシトル男爵だね?」
牢に捕らえられた俺に、老獪な牢獄長が声をかけてきた。
「女王……『魔女』に歯向かい拘束された、違うかね?」
最初は、俺を笑いに来たのかと思った。
「君のような人材を、私は待っていた。どうだろう、私の仲間にならないか?」
牢の鍵は開かれた。俺には、これ以上の選択肢がなく、その選択は俺の力を活かすものだった。
◇ ◇ ◇
夜更け、情報管理省の奥深くにある俺の執務室は、無数の水晶板の光に照らされている。
それぞれの板は遠国の街を映し出し、火炎と叫喚が織りなす生のドラマを伝えてくれる。
「ほう、また一つ、政府庁舎が焼け落ちたか」
指先で水晶をなぞれば、そこには反政府組織が武器を手に歓声をあげる姿。
その武器がどこから流れたか?もちろん、俺の手元からだ。
内乱は、短く終わってしまっては、つまらない。
そろそろ、俺の『同盟国』が動くはずだ。
水晶板には、数十の星が描かれた鉄の塊が、いくつも映し出される。機械仕掛けの戦車だ。
『内乱鎮圧のための武力介入』
この世界には戦争がない。それは全ての国で『憲法』に『第9条・戦争の放棄』が組み込まれているから。
しかし『内乱を鎮めるための戦力』は保持してもいい。
それが、俺と『同盟国』の抜け道だ。
俺は、他国の政治不信を煽り、反政府組織を育て、武器を売る。
頃合いを見て『同盟国』が『内乱鎮圧』にやってくる。その費用を政府に請求する。
こうして国土は荒れ、経済は停滞し、難民が溢れる。
その難民は、エリス労働大臣の網へと吸い込まれ、再び我らの利益へと変わる。
「見事な循環ではないか」
俺の行いは破壊ではなく、調和だ。
世界を動かす偉大なる歯車を整える芸術行為。
遠国の炎が、まるで祝祭の灯火のように揺らめいている。
俺は杯を掲げ、炎に向かって囁く。
「さあ、もっと踊れ。もっと争え。お前たちの苦悶と絶望こそ、俺の糧だ」
情報とは、武器である。
だが俺にとっては、それ以上に至高の娯楽だ。
俺は情報を操り、歴史を塗り替え、存在を消す。
そして、世界は俺の指先ひとつで形を変えていく。
ユピテル・フォン・コーアン警務大臣……あの日、俺は、コーアンの旦那の仲間になった。
コーアンの旦那の指示は、『同盟国』に接触し、軍需産業と軍部と協力して『ビジネス』をすること。
何でも、彼らは『グローバリスト』の指導する『国際分業』によって、戦闘を引き起こし、軍需産業を維持しなければならないらしい。
そこで、俺が『内乱』をでっち上げ、彼らが『介入』する。
信頼関係が構築されるのは、時間の問題だった。
情報管理大臣ゼウス・フォン・アゲアシトル。
俺は今日も、最も美しい舞台を鑑賞する。
◇ ◇ ◇
「ゼウス・フォン・アゲアシトル……貴様は、やり過ぎた」
おっと、こういう手合いは、たまにいる。俺の情報の綻びを辿ってやってくる正義漢。
「さぁて、何のことかな?バカな恋人でも、内戦で死んだのか、なッ!」
俺は躊躇なく、『ゼウス』の『雷撃』の権能を使う。
……いや、待て。ここは監視装置があって、発見されずに、ここまで来れないはずじゃ?
「……この程度、避けるまでもない!我が権能は『太陽』!『太陽風』よ、雷撃を反らせ!」
俺が放った『雷撃』は、きらびやかな衣装をまとった男に当たることはなかった!
『太陽』?つまり『光の速さ』で、監視装置を駆け抜けたと!?
「てめぇ!もしや、あの国王か!?」
ガツッ!!
俺が、やっと男の正体を悟った時、意識を刈り取られてしまった。
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