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転生宰相アラカワの華麗なる悪政  作者: 水井竜也(仮)
第2章・議会編

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【第5話】親宰相派

 ※この作品はフィクションです。

 ※実在の人物・団体・事件は、一切関係がありません。

 ※また、このような政策を、実施している国・自治体は、ありません。


 ◇◇◇


 『事業仕分け』は、完遂された。


 王宮の闇は暴かれ、膿は出された……少なくとも、世間は、そう信じている。


 夜の王宮は、静かだ。

 俺は、王宮で一番高い塔に立ち、冷たい夜風を受けていた。

 ここに来ると、不思議と肩の力が抜ける。


「……なんだ、あんたか」


 背後から聞こえた足音に、振り返る。

 そこにいたのは、クベーラ財務大臣だった。


「……お見事でした、アラカワ宰相」


 俺は、わざとらしく肩をすくめる。


「何がだ? 不正は正され、『埋蔵金』は暴かれ、挙げ句の果てに、俺は報道機関で反省の弁まで述べさせられたんだぞ?」


 だが、クベーラは微動だにせず、俺を真っ直ぐ見つめてくる。


「……それが、あなたの底が知れないところです」


 その言葉に、思わず笑いそうになった。


 クベーラは、俺の隣に立ち、同じ夜景を見下ろす。


「あなたは、議員たちに『賄賂』をばら撒いた……違いますか?」


 俺は、思わず鼻で笑った。


「『賄賂』なんて、人聞きが悪い……ほんの『御礼』さ」


 クベーラは、続きを促すような視線を向けてくるが、手の内を明かすつもりはない。


 買収した議員たちへの指示は、ただ一つ。


 『レーン・フォウを、励まし続けろ』


 改革の戦乙女を支え、称え、称賛し続ける。

 元来、人は善意で動くものだ。そこに『御礼』が出るのだ、やらない理由はない。


 痺れを切らしたのか、クベーラは静かに息を吐いた。


「報道の仕方も、異常でした……アゲアシトル情報管理大臣に、指示を?」


「……くっくっく。使えるものは、何でも使うさ」


 アゲアシトルには、レーンを持ち上げる報道を指示した。


 英雄譚は繰り返され、民衆の期待は膨れ上がる。

 俺自身も、時には頭を下げ、反省の弁を述べた。


 改革は、敵を打ち倒す物語でなければならない。


 ……だが、その熱に浮かされ、人は大事なものを見失う。


 しばしの沈黙の後、クベーラは口を開いた。


「そして……私には、仕分けリストを作らせた」


 俺は、クベーラに向き直る。


「ああ。よくやってくれた……あのリストのおかげで“王国”は守られた」


 クベーラには、あらかじめ“切っても痛くない予算”のリストを作らせた。

 飾りとしては十分で、血も出る。だが、致命傷にはならない。


 レーンは、薄々気づいていただろう。


 だが、周囲の議員たちの熱と、国民の期待の前で、立ち止まって考えることはできなかった。


 クベーラは、探るような目を向ける。


「……まだ、何か隠していますね?」


「さぁて、な」


 俺は、わざと曖昧に笑う。


 今回、買収した議員たちだ。


 最初は、軽いお願い、気遣い程度。だが、やがて要求は膨らんでいく。

 最後には『賄賂』を受け取った事実そのもので、縛る関係になっていく。


 国民議会には、まだ政党はない。派閥や政治グループといった集団が、散見されるだけだ。


 俺は、派閥も、思想も関係なく『賄賂』を、ばら撒いた。

 政局が進み、与党と野党ができたとしても、超党派で俺の影響力は働く。


 ……親宰相派。


 その“見えない与党”がある限り、議会制など、俺の悪政を阻めないのだ。


 ◇◇◇


 夜風が、塔を吹き抜ける。

 クベーラは何も言わず、立ち去ろうとしていた。


「……政治も勿論だが、行政もお金が掛かるからな」


 その一言で、クベーラは珍しく笑った。


 『埋蔵金』の在処。

 それは帳簿上は、“積立金”などと記載されている。

 しかし実際は、情報への謝礼、諜報費用、関係を保つための資金として使われる。


 既に、支払ってしまった後なのだ。


「ふふふ……本当に宰相閣下は、人が悪い」


「褒め言葉として、受け取っておくよ」


 『事業仕分け』は、“改革の成果”という名の『手土産』を議員たちに渡して、穏便に幕を閉じたのだった。

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