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転生宰相アラカワの華麗なる悪政  作者: 水井竜也(仮)
最終章・悪政の終焉
12/15

【第7話】『事務シティ』作戦開始!

この作品はフィクションです。

実在の人物・団体・事件は、一切関係がありません。

また、このような政策を、

実施している国・自治体は、ありません。

 翌朝。王宮に、妙な来訪者が現れた。


 白と青のストライプのシャツを着た屈強な男。見慣れぬ制服に「佐川」と刺繍されている……どう見ても配送スタッフだ。


 男は無言のまま大きな荷物を運び込み、玉座の前にどさりと置いた。


 中から現れたのは、ブラウン管モニターと灰色のゲーム機、それから一枚のパッケージソフト。


 ……『事務シティ』。


「……古臭ぇな」


 思わず独り言が漏れる。


 確かに『ノアズ・アーク』に連絡を取った。だが、そのアーティファクトは、携帯電話の前身である『PHS』……のはずだ。


 俺が子どもの頃には、もう『液晶テレビ』や『PS5』の時代だった。なぜわざわざ『ブラウン管テレビ』と『初代PS』なんだ?


 ああ、なるほど。あの女の趣味の悪い嫌がらせか!?


 ……まあ良い。俺はすぐさま、官僚たちを『勉強会』に召集した。


 ◇ ◇ ◇


「私も臣下の端くれです。ならば『勉強会』に参加する資格はあるはずです!」


 翌日、玉座の間に集まった官僚たちの中に、ひときわ目立つ姿があった。


 女騎士アルテミス。あの真っ直ぐすぎる正義の剣が、ここに現れるとは。


 俺を監視するためだろう。そう考えるのが自然だ……だが、拒む理由はない。


「……好きにするがいい」


 やがて、ブラウン管モニターに虚構の街並みが映し出される。


 『事務シティ』……住民の生活を管理し、税収を運営し、公共施設を建てて発展させていく。そんな単純なシミュレーションゲームだ。


 アルテミスは、眉をひそめた。


「これは……虚構の国が再現されているのですか? そんな子ども騙しなど、実際の国を預かる我らにとって、学ぶものはないでしょう!」


 一理ある。だが、俺は肩をすくめながら口を開いた。


「逆に考えてみろ。子ども騙しのゲームすら攻略できない者に、国を預けておくわけにいかないのではないか?」


 その言葉を挑発と受け取ったアルテミスの目が、ぎらりと光る。


 アルテミスは無言でコントローラーを握り、画面に向き合った。


 俺は官僚たちにミッションを提示した。


 1. 異変があったら必ず報告すること。報告には1ポイントを贈呈。



 2. 改善策を提案すること。どんな案でも1ポイント。



 3. 結果を共有すること。これは競争ではなく、攻略法を模索する過程だ。有力な案には、さらに1ポイント。


 報告、提案、共有……三つの柱。


 俺の声が広間に響いた瞬間、空気が変わった。


「ここ、財政が赤字ですよ!」


「なら公共投資を一時的に削減してはどうか?」


「教育予算は維持すべきです。住民の不満が高まります!」


 ゲーム画面を前に、官僚たちが自然と語り合う。


 部署の垣根を超えて、意見を出し合い、報告し合い、結果を共有する。


 ……そうだ。これこそが俺が欲しかったものだ。


 『事なかれ主義』に塗れていた官僚たちが、ついに“自走”を始めたのだ。


 アルテミスも黙々とプレイしていた。


 最初は鼻で笑っていたが、住民暴動イベントを前に本気になり、眉をひそめながら都市を再建していく姿は、どこか痛快ですらあった。


 ◇ ◇ ◇


 このように、自然に『事務シティ』について語り合う環境を作った。


 官僚の間では『報告』が徹底され、部署の垣根を超えて『提案』し、知識を『共有』する空気が生まれた。


 それは『事務シティ』だけではなく、実際の業務においても影響したのだった。


 だが、その熱気を遠くから見つめる影があった。


 背広に身を包み、銀の眼鏡をかけた男……クベーラ財務大臣だ。


「……アラカワ宰相。あなたは禁忌を犯しました」


 その声は低く、だが確実に全員の耳に届いた。


 ゲームの光に照らされたクベーラの顔は、不気味なほど冷ややかだった。


 俺は思わずコントローラーを握りしめる。


 ……禁忌、だと?

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