【第6話】敵は『事なかれ主義』
この作品はフィクションです。
実在の人物・団体・事件は、一切関係がありません。
また、このような政策を、
実施している国・自治体は、ありません。
目を覚ました俺は、王宮の一番高い塔に来ていた。
夜の冷たい風が頬を打つ。遠くに広がる街並みは、いつもと変わらぬ静けさを湛えている。
だが、その静けさの裏で、俺は理解した。……俺はこれまで、ただ『暴走』していただけなのだと。
転生後の俺は「汚職官僚」として振る舞っていた……そして、悪政の限りを尽くし、最後にはミトラ王に裁かれることを望んでいた。
まるで大きな力に導かれるように“悪”を演じることに酔いしれていたのだ。
「……宰相さん」
背後から小さな声がした。振り返れば、秘書のサラが立っていた。怯えと戸惑いが混じった目で、俺を見つめている。
「……宰相さんは、私たちを騙していたのですか? 『王国』のために政治をしていたのではないのですか?」
その問いを、俺は真正面から受け止めるしかない。
「俺は裁かれるべき人間だ……『悪政』をして、この『王国』を混乱に陥れた」
サラの顔がぐしゃりと歪んだ。唇を噛みしめ、走り去ってしまった。追いかけようと思えばできた。だが、俺にはその資格がない。
◇ ◇ ◇
玉座の間に足を運ぶと、そこは混乱の渦中にあった。
ミトラ王が三悪臣下を連行したことで、王国中枢の権力構造が崩れ、官僚たちは右往左往している。
「さ、宰相閣下!?」
俺の姿を見つけた一人が叫ぶ。視線が一斉に集まり、ざわめきが広がった。
「宰相閣下……すべては三悪臣下を捕らえるための『演技』だったのですよね?」
は?こいつは何を言っている?
「そ、そうだ!宰相閣下は奴らを泳がせ、ミトラ王と連携して、捕らえることに成功したのだ!」
「なるほど!さすがは天才宰相!」
「『王国』の膿を出し切るための一手だったのですな!」
俺はうつむき、目頭を抑えた。
「おまえら……」
涙……ではない。頭が痛くなったからだ。
こいつらは、本気でそう思っているのか?いや、違う。ただ事実を直視するのを恐れているだけだ。
責任を問われるのが怖い。だから、俺の『悪政』を都合よく解釈し、自分の安泰を確保しようとしているのだ。
「宰相閣下、万歳!『王国』、万歳!」
……駄目だ。こいつらを、なんとかしなきゃ。
◇ ◇ ◇
俺は、王宮の宝物庫に来ていた。
ハーデス王は、エリス・ゼーゲンの『認識阻害』の権能と、ユピテル・フォン・コーアンが発明した薬物により、半ば廃人になっていた。いつもボーッとしてたしな。
今は療養して、回復に向かっている。
つまり、今、宝物庫を物色する俺を咎める者は居ない。
「……あった。が、これで大丈夫なのだろうか?」
俺が、『地球人類最後の英霊』である新川修司が『転生』できたということは、ここは『地球』ではなくて、おそらく……
その『アーティファクト』は、手に収まる大きさに、短いアンテナ、液晶ディスプレイ、そして1から9までの数字と*と0と#。
耳に当ててみると、ツーという電子音が聞こえた。マジかよ!
「……ごほん、応答せよ!『ノアズ・アーク』!!
オペレーション・パンドラの追加ミッションだ!!」
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