表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星深奏界〜星に夢見る少女と異形の騎士は何を守る〜  作者: 赤っ恥のShazara
第一章《沈黙の森にて》
30/55

エリス:第15話

エリス視点

足を踏み出す。崖沿いの道を迂回しながら進んでいく。足元の草は、もうまばらだった。ところどころ、剥き出しになった土が硬く乾いていて、靴の裏に冷えた感触がじんわり残る。


見上げると、遠くの木々の影が揺れていた。その揺れ方が、不自然で、どこか輪郭を持たない。形が結ばれる前に、風に溶けていくようだった。


私は、ふと立ち止まって言葉を漏らした。


「……景色が、揺れているように見えます」


感覚のずれ。それを言葉にしたとき、すぐに隣から返事があった。


「見えてるものが、正しいとは限らない。ここはもう、普通の地形じゃない」


ルーゼンの声は静かだったが、その響きに私の感覚も落ち着きを取り戻す。


風に乗って届いた草の音が、視界よりも遅れて耳に入ってくる。視覚と聴覚のタイミングが、少しずつずれている。まるで、この場所の“時間”だけが、少し違っているような錯覚。


(ここは……何かと何かの境目)


言葉にするには曖昧すぎる。でも、そういう“違い”が確かにある。皮膚の下で、何かがずっとざわめいていた。


少し歩いた先で、地面が滑らかに沈んでいる場所があった。


踏み崩れたというよりも、何かが通り抜けたような形。


ルーゼンが立ち止まり、呟く。


「通った痕……?」


私も足を止め、同じように地面を見つめる。


「人、ですか?」


「いや。人の歩幅じゃない。……這いずるか、滑るか。形を持たない何かが通った跡だ」


その言葉が、静かに胸の内側に沈んでいく。


形を持たないものが、現実に痕跡を残している。


見えていないだけで、この空間には、私たちの常識では測れない“何か”が確かに存在している――そう確信してしまうほどに。


私は無意識に、外套の留め具に触れていた。自分の呼吸を整えるように、感覚をひとつの点に集めて、揺れないように保とうとする。


「ルーゼン様」


「どうした」


「私たち、今……どこを歩いてるんでしょうか」


その問いには、自分でも答えを求めていたわけじゃなかった。ただ、いまのこの感覚が“異常”だと、誰かと共有しておきたかった。


「――現実の端か、あるいはそのすぐ手前だ」


静かに返されたその言葉に、私はそっと目を伏せて、そして前を見た。


空気が重い。でも、胸の奥は妙にすっきりしていた。


「……じゃあ、もっと先に行きましょう」


返事はなかった。でも、それでよかった。


ルーゼンが並んで歩き出す気配を感じる。


その背に吹きつけた風が、外套の裾を揺らしていた。


二人分の影が草の上に伸びていく。


風に煽られても、その影がかすんでも――今の私は、もう迷っていなかった。

最後まで読んでいただきありがとうございます!

基本的に2話ずつ視点交代でやっていこうかなと思ってます。


※この作品は【夜・深夜】更新しています。

ブックマーク・評価・ご感想など、何かしらの形で応援していただけると励みになります!


光と闇、信仰と裏切り。

崩れゆく世界。

これは、運命に抗う者たちの物語です。


救いは、ただ祈ることで手に入るのか。

それとも――誰かの絶望の上に築かれるものなのか。


どうか、あなたの心に何かが残りますように。


それではまた暇な時にでわでわ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ