表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星深奏界〜星に夢見る少女と異形の騎士は何を守る〜  作者: 赤っ恥のShazara
第一章《沈黙の森にて》
23/55

第11話:ルーゼン・エリス

ルーゼン・エリス視点!

互いの歩みが、草原のただなかで交錯する。


光の残滓が空を淡く照らし、風はすでに弱まっていた。焚き火の煙が細く立ち上る中、足音だけが静けさを縫って近づいてくる。


巡礼者たち――白の外套に身を包み、胸元に銀の徽章を灯す五つの影が、草を分けてゆっくりと歩み寄ってきた。


先頭を行く副司祭の少年が、やや早足で前に出る。そのすぐ後ろを、落ち着いた歩幅の司祭が続き、さらに三人の騎士が間隔を保ちながら背後を守っていた。動きには疲労がにじんでいるものの、確かな警戒と気品があった。


俺は剣から手を離し、視線だけで彼らを迎えた。


エリスも隣で小さく頷く。その横顔にはかすかに笑みが浮かんでいたが――その奥にあるものを、俺はまだ知りきれない。


「……旅の方々、でしたね」


最初に口を開いたのは、副司祭の少年だった。疲れを帯びながらも、礼を崩さぬ声音。


俺は返事をせず、目で応じた。


静かな間が流れ――それを埋めたのは、司祭の落ち着いた声だった。


「……森の方で、少し問題がありまして。ご迷惑をおかけしていたなら、どうかお許しください」


エリスが一歩前へ出る。


「いえ。ちょうど休憩を取っていたところです。そちらの皆さんこそ、大丈夫ですか?」


その声は穏やかだったが、その奥底に宿る“観測”の気配を、俺は感じ取っていた。


副司祭がわずかに笑みを浮かべ、頭を下げる。


「……ご心配、ありがとうございます。多少の疲れはありますが、無事です。……少し、想定外のことがあっただけで」


言葉の奥に、かすかな歪み。


その瞬間、背後に控える三人の騎士たちが、こちらに視線を向けた。構えではない。ただ、静かな警戒と、情報を読み取ろうとする観察。


俺は名を名乗らなかった。


この場では、言葉より“在り方”で示すべきだと考えたからだ。


エリスが再び口を開く。


「道に迷ったわけではないんですよね?」


「はい。地図はあります。ただ……少し遠回りをして、村を通るはずだったのですが」


司祭が言葉を濁しながら答えると、エリスは目を逸らさずに言った。


「……村は、もうなかったみたいですね」


彼女の声は冷静で、どこか確信に満ちていた。


張り詰める空気の中、俺はただ黙して、その場に立っていた。

この再会が、光となるのか、影となるのか――それを測る術は、まだなかった。


「……やはり、そうでしたか」


そう返したのは、副司祭の少年――ジニアだった。


穏やかな声音の奥に、どこか重さがにじんでいた。


「私たちは、あの場所の“状況”を確認するために立ち寄ったんです。……星霊教会としての、任務の一環で」


ジニアの視線が、少しだけ伏せられる。悔やむようでもあり、何かを押し殺すようでもあった。


「“闇の力”に関する、兆しが……いくつか報告されていましたので」


その言葉に、俺の眉がわずかに動く。


(闇の兆し、か――)


けれど俺は口を開かず、代わりにエリスが静かに訊ねた。


「……兆し、というのは?」


ジニアは少し言葉を選び、努めて柔らかく答えた。


「直接的な魔力の発生ではなく、“地脈の揺れ”のようなものです。……星の流れに反する、微かな乱れ。放っておけば広がる恐れがあると、そう判断されて」


その横で、司祭――ネヴィルは沈黙を保っていた。

だがその沈黙は無関心ではない。多くを“見てきた”者の、深い静けさだった。


俺は言葉を持たず、ただその説明を受け止める。


(兆し。拡がる恐れ。……ならば、教会の動きは、まだ“前触れ”にすぎない)


ジニアがやや姿勢を正し、問い返してきた。


「お二人は、この先も南へ……?」


その問いには、明確な真意があった。


単なる進路の確認ではない。“何を知っているのか”“どこへ向かおうとしているのか”――それを測ろうとする視線。


俺は、ほんのわずか間を置きながら、応じた。


「……あぁ、南に行く。ただ村による予定はない……」


その答えに、ジニアは目を伏せ、小さく頷く。


その動きがどこか安堵に近かったのは、気のせいだっただろうか。


その横で、エリスが一歩、俺の横に歩み寄る。


「私たちは……ただ、進むべき道を歩いているだけです」


その声はまっすぐだった。飾りも、偽りもない。


巡礼者たちはそれ以上、何も問いかけなかった。互いに視線を交わすだけ。


疲労の色を帯びたその表情に、敵意も、明確な警戒もなかった。


だが、それでもなお――


交差したまなざしの奥で、境界は静かに揺らいでいた。


その揺らぎが、この先の何を導くのか。


それを知るには、まだ――少しだけ、夜が足りなかった。

最後まで読んでいただきありがとうございます!


※この作品は【夜・深夜】更新しています。

ブックマーク・評価・ご感想など、何かしらの形で応援していただけると励みになります!


光と闇、信仰と裏切り。

崩れゆく世界。

これは、運命に抗う者たちの物語です。


救いは、ただ祈ることで手に入るのか。

それとも――誰かの絶望の上に築かれるものなのか。


どうか、あなたの心に何かが残りますように。


それではまた暇な時にでわでわ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ