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37話

 話を聞いたところ、今回の騒動の関係者だと思われたルシナはこの部屋で泣き叫び暴れ、落ち着かせるために薬を多量に摂取させられ今昏睡状態だと言うことだった。


 そこに何かしらの悪意を感じた。


 ネージュ達騎士が犯人であるルベルトとレベッカを捕らえる間に、ルシナにはきちんとリュシアンが助けられ王宮内で保護されていることを伝え、ルシナは精神的に疲弊していたため医務室でゆっくりしてもらっていると訊いていた。なのに間違いで犯罪者のように扱われていた?


 ネージュはぐったりとしたルシナを見つめ、頭に手を置くと髪の毛をガシガシと掻きむしり「くそっ」と何度も吐き、拳を握り締め自分の太ももを何度も殴りつけた。


「誰がこんなことを指示したんだ」


 ネージュの鋭く冷たい視線に看護師が震えた。

 看護師は真っ青な顔をして「………妃殿下からのご指示です」と震えながら小さな声で仕方なく答えた。


「妃殿下?」


 なぜ妃殿下が?

 眉を顰め考え込むネージュ。

 王太子殿下と妃殿下は政略結婚でそこに愛はないが互いに信頼しあっているはず……


 ネージュはルシナが妃殿下と顔見知りだと言うことを思い出した。


 妃殿下も侯爵家の令嬢でルシナと妃殿下は共に優秀な令嬢で昔からよく比べられていた。

 だからと言って理由は?


 今ここで詮索することはできない。


 ネージュは頭をふり考えるのは諦めた。それよりもルシナは……


「ルシナは大丈夫なのか?」


「あ……多分……いずれ意識は戻るはずです……ただ……どんな副作用があるのか……この薬は治験薬で……多量摂取による症例がないので……」


 しどろもどろになりながら説明する看護師に「医師を呼んでくれ」とネージュが苛立ちながら叫んだ。


 医師は慌ててやって来て事情を説明されたが看護師の話とたいして変わらず『犯罪者なので治験薬を使ってもなんら問題ない』との指示を受けた。


 ただ、後々取り調べなどもあるので生死に関わるほどの量は飲ませていないので意識は戻るだろうとのことだった。


 副作用は……今までの症例でいえば、軽い健忘症や倦怠感などを挙げた。ただ、一時的なもの……多量摂取に関してはわからないと首を横に振った。


 妃殿下の悪意しか感じない。まさかレベッカやルベルトのことも妃殿下が関わっているのか?


 ネージュは王太子殿下に話をしなければと思いながらも医務室を離れることに不安を感じ戸惑った。


 ここを離れて何かまたあったら……


 信頼できる騎士を呼び寄せ護衛を頼む。



 そしてリュシアンを王宮からこちらに連れてくるように別の騎士に頼んだ。


 妃殿下の子供の乳母。安全だと思っていた王宮内も……もしかしたらリュシアンに何かあるかもしれない。


 リュシアンを連れて来てくれた騎士にお礼を言い「誰もここに入れないように」と伝えた。


 リュシアンはネージュにペコっと頭を下げた。攫われた時助けてくれたひとだと理解していたリュシアンは「さっき、ありがとぉ」と少し怖がりながらもお礼を言ってルシナの眠るベッドへと走って行った。


「かあさま……」

 顔色が悪く眠って返事をしないルシナに心配そうに覗き込むリュシアン。


 ネージュは床に膝をつきリュシアンと目の高さを合わせて優しく声をかけた。

「君の母様は疲れて眠っているんだ、目が覚めたら君が居ると喜ぶと思うからそばにいてあげてくれないか?」


 自分が父親であることは伝えていない。あの屋敷であった時も「おじさん」だと認識されていて父親だとは思われていないはず。


「おじさん……がかあさまに…ひどいことをしたの?」



 驚き目を見開いたネージュは慌てて首を横に振る。

 

「おじさんは……そんなことはしていない……でも、おじさんがそばに居ると君の母様にあまり喜んではもらえないと思う。だから……すまないが君がそばに居て見守ってあげてほしい」


「うーん……よくわかんないけど…かあさまのそばにいたいから、いるっ!」


「頼む」

 ネージュはふっと優しく微笑んでリュシアンの髪をわしゃわしゃと触った。


「君は男だ。母様を守ってやってくれ」


「うん!」


 ネージュは騎士に目配せして先程居た王太子の執務室へと向かった。


 ここまでのことには王太子妃殿下が何かしら関わっている。胸騒ぎの中、執務室へ入ると王太子は数人と難しい顔をして話をしていた。


「うん?ネージュ、どうした?元嫁に出て行けと言われたのか?」










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