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32話  パーティー ⑤


 レベッカ様とソフィアと別れて私は廊下を急ぎ足で歩いた。会場に向かうと話しかけて来る人たちに愛想笑いを浮かべ軽く会話をしながらも、気持ちはもう庭園へと向いていた。


「では失礼致します」

 笑顔を見繕って上手く躱していく。


 本当はもっと社交をしてドレスを売り込むべきなのに、今はそんなことよりリュシアンのそばに行きたかった。


 ソフィアのことは可愛い。でもリュシアンは愛おしい。レベッカ様のあのいつもは我が子を蔑ろにしている態度と裏腹に愛おしそうにソフィアを見つめた優しい表情に感化されたのか、リュシアンにとても会いたくなった。


 そばに行ってむぎゅっと抱きしめたくなった。


 他人のことは指摘できても自分だって仕事にかまけて子育てを棚に上げている。


 気持ちがモヤモヤとして落ち着かない。リュシアンは私をどう思っているのかしら?


 リュシアンに嫌われていたら?


 不安が胸をよぎる。変な胸騒ぎがする。護衛がいるからと、王城内だからと安心して子供達だけで遊ばせているけど、何かあったら?


 気が急いているのにヒールの靴が邪魔をする。


 私は靴を脱ぎ捨てて、裸足で走って庭園へと向かった。


 背中の後ろからざわっと声がした。まさかヒールを脱ぎ捨て走る人がいるなんて……「何をしているの?」「まあ、はしたない」と声が聞こえて来たけど、そんなのどうでもいい。


「リュシアン!」


 控え室から見た時にいた場所にリュシアンがいない。


 キョロキョロと見回すのにどこにもいない。


「リュシアン?どこ?」


 子供達の楽しそうな声が耳に入ってくるのに、リュシアンの聴きなれた声が聴き取れない。


「リュシアン?リュシアン!!」


 なりふり構わず大きな声で叫んだ。


 返事は?


『かあさま!』と呼んでくれるあの可愛らしいリュシアンの声が聴こえない。


「リュシアン!!」


 私は庭園の中を探して回った。いつもついてくれている護衛の姿が見えた。


「リュシアンは?」


「すみません……あ、あの……リュシアン様のお父上が来られて……」


「え?ネージュ様が?」


「はぁ……多分……そのお方だと思います。リュシアン様と同じ金髪でこの国では珍しい髪色の方でした。ただ、『とうさま』とは仰らなかったので、リュシアン様に尋ねると『おじちゃん』だと言ってましたが、その方は自分は父親だと仰って、少し話をしたいと連れて行かれました」


「なんで勝手なことを?私に許可を得ようと思わなかったの?」


「申し訳ありません。でもどう見ても親子に見えましたし、あの……身分は上だし……とても威圧的で断ることができませんでした」


 この護衛は、公爵家の騎士団にいるのだけど、身分は子爵家の三男で伯爵家当主の旦那様に逆らえなかったのかもしれない。


 腕は確かだからと安心していた私がいけなかった。


「どこへ行ったの?」


「あ、そこの四阿で座って話していると思います」


 一応は見ていたのね。


「わかったわ、行ってみるわ」


 急いで四阿に行くとリュシアンが楽しそうに話していた。


 笑い声が聞こえてきてホッとした。


 ネージュ様は背中を向けていたけど、「うん?」となぜか違和感を感じた。


「リュシアン?」


「あ、かあさま!」


 私に気がついて嬉しそうな声を出した。

 ーーよかった。


「勝手に居なくならないで!心配するわ」


 思わず大きな声が出た。


「ええ?いいっていったよ?」


 護衛がいいって言ったんだと訴えているのはわかる。でも、それでも、心配で、ついそんな言葉が出てしまっていた。


「うん、でも、護衛の人が許可しても母様の許可をもらってからにしてちょうだい」


「……うん」


 少し不満そうだけどまだまだ素直に頷いてくれた。


「へぇ、あんたがこの子の母親?」


「えっ?貴方……は誰?」


 振り返ったのはネージュ様ではない。


 金髪だけど顔は全く違う。……なのにリュシアンは楽しそうに話していた。


 考えてみたらリュシアンはネージュ様のことを怖がっていたし、楽しそうに話をするわけがない。


 ネージュ様はいつも無口で楽しい話をするタイプの人ではないし。リュシアンは確かに笑っていた。


「俺?俺は……ははっ。この子を攫いに来た」


 そう言って目の前でリュシアンを脇に抱えて「じゃぁな、レベッカに俺がこの国にいると伝えろ」と言うとニヤッと笑って走り去った。


 一瞬何が起こったかわからなくて固まったけど我に返り「待って!リュシアンを連れて行かないで!」と叫んで「誰かあの男を捕まえて!」と大声を出した。


 でも男は子供を片手で抱えて剣を軽々と捌き、騎士達を近づけない。そしてあっという間に姿を消した。私は必死で後を追ったけど男の走るスピードには追いつけなかった。


「リュシアン!!リュシアンを返して!!」


 消えた方へ向かって叫んだ。


「申し訳ありません。急いで緊急配備をして捕まえますので」


 王城で警備に当たる騎士達がリュシアンを助けるために動いてくれている。


 目の前で連れ去られてしまった私は泣くことも出来ず、急ぎレベッカ様を探した。


 あの男は……レベッカ様に伝えろと言った。


 ネージュ様によく似た金髪……だけど顔は全く違う。……だけど、なんとなくソフィアに似ている気がする。


 答えは……レベッカ様に聞くしかない。




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