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3話  リュシアン初めての父との対面

 リュシアンは妹ができたことを喜び数ヶ月しか違わないのに仲良く遊ぶ二人の姿に癒される。


 子供部屋は旦那様がいる執務室や私室から離れた場所にあるので運が悪くなければ今の所会わなくて済む。

 旦那様が帰ってきて慌てて子供部屋を移したのはジョンソンだった。


 ソフィアは片言だけどお喋りが上手。でもリュシアンのことは旦那様の前で話そうとしない。


 幼いながらにわかってるのか、ただ話さないのか……ただ旦那様が怖いのか……


 旦那様に抱っこされ我が家にやって来たはずなのにソフィアは旦那様にどう見ても懐いてはいなかった。


「ソフィア?」と旦那様が話しかけるとビクッとして私のスカートの後ろに隠れてしまう。


 モジモジと照れているというより慣れていなくて怖がっているようにしか見えない。ここに来た時は一番顔見知りだったから仕方なく黙って抱っこされていたのかもしれないわね。


 今では家令のジョンソンやメイドのサラに懐いている。ジョンソンにはリュシアンと同じくらいの孫がいるしサラはリュシアンのお世話をしてもらっているので、今はソフィアも一緒にお世話をお願いしている。

 少し給金をあげてお礼をしないといけないかな。



 悪戯盛りの二人はとても手がかかる。


「奥様、それよりももう一人誰か回してください!」

 サラに給金を上げる話をしたら懇願された。


「わかったわ、サラが子供達と気が合いそうなメイドを一人選んでちょうだい」


 サラは長年この伯爵家でメイドをしているので彼女ならいい人を選んでくれるだろう。


 それに私の気持ちも理解してくれているので極力旦那様の目にリュシアンが触れないように配慮してくれる。


 というか、ここの屋敷の使用人みんながリュシアンを可愛がり大切にしてくれているから旦那様の前ではリュシアンのことには触れない。


 私がお願いしたわけでもないのに、徹底しているのはジョンソンや執事のセバスチャンのおかげかもしれない。



 旦那様が帰ってきてからは彼は執務室に籠ってひたすら執務に追われていた。


 一応仕事は滞りなくやっているのでそんなに必死にならなくてもいいのに。


 元々無口な人ではあったけど笑うと優しい人だった。何気ない優しさを感じることもあった。

 なのに今の彼は真面目で堅物、笑うことを忘れてしまったようだ。


 朝食は私とソフィアと三人でいただく。


 昼食は執務室で食べるので私は子供達と三人で食べている。


 夕食は旦那様の仕事に合わせて……だけど、気疲れしたくないしリュシアンを蔑ろにしたくないので

「可愛いソフィアと二人でどうぞお召し上がりになってくださいませ」と宣言した。


「はっ?」と何か言いたそうにしたけど私は有無を言わさず無視した。


 仕事は伯爵夫人として今まで通り手伝いはするけど極力旦那様とは同じ空間にいることは避けた。


 私は私の執務室で自分が嫁いでから手掛けた仕事をすることにした。


「旦那様、私がこの4年間で始めた事業はもしよかったらこのまま自分がしたいと思っているのですが」


「ああ、うん、いいんじゃないか」


 旦那様は書類をじっと見ながら了承してくれた。旦那様がいない間の仕事内容はわからないことも多くジョンソンがサポートしながらなんとかこなしているようだ。


 私なんか嫁いでひと月で訳も分からずなんとかやってきたのだもの。旦那様には弱音は吐いてほしくないわ。


 チラリと旦那様の顔を窺うと険しい顔つきで書類を見ていた。ソフィアに話しかけるくらいの気遣いはあるのに私には「すまない」とか「よろしく頼む」なんて言葉は一度もない。


 ハァーと小さくため息を吐き旦那様の執務室を出た。


 ふと庭を見るとそこには手入れされた子供用の遊び場があった。リュシアンのために作った砂場やシーソー、小さな木のお家などもある。


 旦那様は廊下を歩く時窓の外に目をやることはないのかしら?


 リュシアンのことに気が付かないまま2週間が過ぎた。リュシアンはなんとなく今の状況に不安を感じているのかやっと外れたオムツがまた必要になりそう。


 おねしょが再び始まった。昼間はあんなに楽しそうに笑って過ごしているのに、やはり変化を敏感に感じているみたい。

 ソフィアは少しずつ落ち着いて安定している。


 突然連れてこられたソフィア。子供には罪はない。それに前世で娘と息子を育てた私としては二人を育てることに違和感はない。自分が産んでいなくても子供は可愛い。懐いてくれたらさらに可愛さが増す。


 リュシアンが私の膝の上に座るとソフィアも座りたそうにしている。


「ソフィア、おいで」

 と声をかけるとモジモジしながら膝の上にちょこんと座る。

 リュシアンも怒らずに二人で仲良く膝の上でくっついている。


 二人の頭を撫でながら「明日はピクニックに行きましょう」と声をかけた。


「やったぁ!」リュシアンはとても喜んだ。


「ぴくにっく?」キョトンとするソフィア。


「ソフィアはピクニックが分からないのね?お外に出て遊んだり食事をしたりするの。サラやリズ達とみんなでいっぱい遊びましょう」


 二人が喜んで遊ぶ姿が思い浮かぶ。もうそれだけで夜遅くまで仕事を詰め込んで頑張った甲斐がある。


 旦那様が帰ってきてから意地になってリュシアンを隠しているため、あまり外で遊ばせてあげられないでいた。


 仕方なく旦那様が外出中を狙って外で遊ばせてはいるけど自由にさせてあげられないでいる。

 意地を張るのもそろそろ限界かしら?でも少し周りに目をやればソフィア以外に子供がいることだってわかるだろうと思うのだけど。


 ハァー……またため息が出た。


 明日は旦那様にはソフィアを連れてお出かけをすると伝えてあるので子供達と一日中しっかり遊んで過ごそう。








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