26話
「ルシナ、このお店は従業員に任せてリュシアンと二人、公爵家の屋敷に住まないか?」
突然の提案に驚き目を見開いた。
「父上も心配してる。君の父親が圧力をかけて君の店を潰しにかかるか、無理やり自分の屋敷に連れて帰るんじゃないかと言ってるんだ」
「難癖をつけたくて?」
「いや、うん、そうだね。それもある……」
少し言いにくそうに言葉を詰まらせた。
「君が自分の思うように動かないことに苛立ってるのもあるだろうし、その新しい発想を自分のものにしたいと思って軟禁する可能性もあると思うんだ」
「私が離縁した時、絶縁したのに?」
「君にその時は価値がないと思ったんだろう」
「今は価値があると?」
「うん、君が……まぁ、うちの商会が新しい物を売り出しているのを不審に思い調べたら君に辿り着いたらしい。惜しくなったんじゃないか?」
「私がお金を生み出すから?軟禁して利用するだけ利用しようと思っているの?以前は私を苛々を抑えるための道具として屋敷に住まわせていたのに?叩かれたり叱られたり、無視されたり嘲笑われたり……
伯爵家との事業提携のためだけに嫁がせて働かされたのよ?」
もちろん実家の侯爵家にいるよりもネージュ様の屋敷の方が住みやすかったしみんな親切で家族のようだったから必死で頑張れた。
「ごめんな、君を助けてあげられなくて。父上も後悔してるんだ。もっと強く君の父上に会わせて欲しいと言えば辛い思いをさせなくてすんだのに。
だからこそ今度はリュシアンとルシナの力になりたい。本当はこの店で好きなことをしながら暮らさせてやりたい。でも今はその時ではないと思うんだ」
「……意地を張ればリュシアンに何かある…かもしれない?」
「護衛はおくつもりだ。でもそれだけでは足りない……もし火事になったら?もし悪評をばら撒かれたら?今の公爵家と君の関係では守りきれない。せめて後ろ盾となりキチンとした業務提携をしたい。ただ君の意見を聞いて開発するだけの口約束ではこれから先守れない」
「……そうね、私が発案者だとあまり知られないように曖昧にしていたから……わかってはいたんだけど今の自由な日々をもう少し楽しみたかったの」
マシュー達に甘えて発案だけして彼の商会に投げてしまっていた。
売り上げの一割をもらえば十分だった。
「リュシアンを不安にさせたくない。……侯爵はそんなに私が嫌いなのね」
「父上曰くルシナの母……妹を愛し過ぎて歪んでしまったんだろうと言ってた」
「お母様を愛してた?外で愛人を囲って子供を産ませたくせに?」
私は思わず吐き捨てるように言った。
愛してるなんて言葉、あの人にだけは言ってほしくない。
お母様は寂しい思いをして亡くなったんだもの。
私は悔しいけどマシューの公爵家の力をしばらく借りてリュシアンを守ることにした。
遅くなりました。
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