39.罪は裁かれる
今回の件に関わっていた者は、全員捕らえられた。
捕らえた場所は、ギルヴァーナ王国内。なので、全員がギルヴァーナの法で裁かれることになる。
エルス王国にも事件の詳細を報告し、それに対する返答も届いていた。
エルス王国の貴族と荒くれ者たちについては、かの国は彼らを見放した。エルス王家とは何の関係もない、彼らが勝手にやったことだ、いいようにしてくれて構わない、と。
国に見放された彼らは、見るも無残なものだった。本当はエルス王家も一枚噛んでいただろうに、罪を全て擦り付けられてしまったのだから。
「彼らはエルス王家も関わっていると主張したが、王家が突っぱねているのだからどうしようもない。それに、証拠もない。切り札は用意しておくものだけれど、あの貴族が迂闊だったのか、王家が狡猾だったのか」
「……両方でしょうね」
まず裁かれたのは、エルス王国の者たちだった。こちらは、問答無用で死罪である。
エルス王国では栽培不可能なロメロの実の輸入し、国内で禁断の薬であるスカーヴを生成、それをギルヴァーナ王国に輸出することが目的だった。その窓口が、ダニング侯爵だったのだ。
「ダニング侯爵は、また盛大にやらかしてくれましたね」
「見せしめも兼ねて、かなり厳しい判決が出るだろう。……シャルロット嬢だけは情状酌量できる予定だったが、彼女もまたやらかしてくれたね」
アーネストが疲れたような顔でそう言った。
彼がシャルロットとの婚約の打診を候補としてでも受けた理由は、彼らの不正を暴くためだった。だから、そのダシに使った彼女のことは助けるつもりでいたのだ。しかし、シャルロットまでもこの件に加担していたとは。
「おそらくですが、加担というよりは、人を操れる便利な道具があったからそれを使おうとした、といったところでしょう」
「……それがどういうことなのか、深くは考えなかったのだろうか。罪であることはわかっていただろうに」
「彼女にとっては些末なことでしょう。バレなければいい、それだけです」
レオナードの言葉に、アーネストは眉を下げる。
本質スキルを持っている彼の人を見る目は確かである。シャルロット=ダニングは、とどのつまり、とんでもなく浅はかな人間だったというわけだ。
「あんな令嬢とうちのアイリーンを同列にされたことは、いまだに恨んでいますよ、アーネスト様」
「っ……そ、それは……仕方がなかったんだ。でも……申し訳ない」
「……まぁ、仕方がなかったのはわかっているんですけどね」
アーネストは、元々アイリーンを愛していた。彼はタイミングを見計らって、オルブライト侯爵家にアイリーンとの婚約を打診するつもりでいた。
だがちょうどその時、今回の件が持ち上がったのだ。王太子ランドルフに、ダニング侯爵家の調査を命じられてしまった。
シャルロットに接触せずに探る方法もあっただろう。しかし、それでは時間がかかりすぎる。
この件が終わるまで婚約を申し込むどころの話ではなくなったアーネストは、最短で事件を解決できる手段を選ばざるをえなかった。
「ところで、アイリーンには相当絞られたみたいですね」
「……言わないでくれ」
アーネストがアイリーンの作ったお守りを踏みつけられるのが嫌という理由で、危うく大怪我をするところだったという話を彼女にしたところ、アイリーンは冷静な仮面を剥ぎ取り、大激怒した。
それは、普段のアイリーンからは想像もできない姿で、アーネストは驚くやら戸惑うやら恐ろしいやらで大変なことになっていた。だが、その後で涙をポロポロと零す彼女に、アーネストはこの上なくアイリーンへの愛を自覚したのだという。
また、ここまでアーネストに対して感情を露わにしたアイリーンも何か吹っ切れたらしく、これまでよりずっと表情が豊かになった。雨降って地固まる、とはこのことだろう。




