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隠密侍女は推し令嬢を幸せにしたい!〜推しの兄は同士ですが、何故だか私にも甘いです!?〜  作者: 九条 睦月


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32.出発

本日夕方にも更新します!

 レオナード様のあの発言は、まさか現実化しないだろうと思っていた。だって、どう考えても実現は困難だ。

 まず、レオナード様はオルブライト侯爵家の長男で、次期侯爵となる身だ。万が一のことがあってはならない。それに、すでに旦那様の補佐として働いているレオナード様は、常に忙しい。そんな彼が長く家を空けるのは難しいだろうし、何より旦那様の許可が必要だ。


(でも、それを可能にしてしまうのが、レオナード様なのよね……)


 ダニング侯爵領へ向かう馬車に揺られながら、私はこっそりと溜息をついた。

 そう、レオナード様は諸々の問題を全てクリアにし、ダニング領のロメロの実を採取してくる任務に同行しているのだ。


「何か言いたそうだね、マリオン」

「いえ……」

「両親やアイリーンをどうやって説得したのか、とか?」


 さりげなく視線を逸らすと、レオナード様がクスクスと笑う。


(もちろんそれもそうですが、一番は……どうしてレオナード様と私が一緒に馬車に乗っているのかってことですよ!)


 私は今、レオナード様と二人きりで向かいあっている。立派な造りの馬車の中で。いや、立派なのは中だけで、外側は乗り合い馬車のような質素なものなのだが。


「もちろんそれもありますが。それより、この馬車の用意もすぐでしたし、なんだかこうなることを見越していたような気がして……」

「鋭いね」

「え……」

「いざとなったら、俺がダニング領に乗り込もうと思っていたんだ。うちの精鋭たちを引き連れてね」


(ちょおおおおおっ! それはちと攻撃的すぎやしませんか? それって、明らかに力で捻じ伏せる的なものですよね!?)


「あの、レオナード様? もしかして、レオナード様ってかなり好戦的……」

「うん。姑息な奴は大嫌いなんだ。剣と拳で叩き潰したい」

「(ヒィッ!)」


 虫も殺せないようなそんな整った綺麗なお顔で、そんなことをおっしゃいますか。しかも、すっごくいい笑顔で。

 レオナード様は、ひょっとしたらアンリ兄様と張るかもしれない。彼もまた、そういうタイプの人間だから。


「学術院で、アイリーンが肩身の狭い思いをしているのは以前から知っていた。それに、シャルロット嬢が女王のようにのさばり、多くの令嬢を使ってつまらない話をアイリーンの耳に入れていることも。俺はね、そんな状況に我慢がならない。シャルロット嬢が筆頭侯爵家の令嬢であるアイリーンを下に見るのも、ダニング侯爵が間違った方法で家を大きくし、うちと並ぶまでになったこともだ。俺は、彼らの悪事をさっさと暴いて、彼らのプライドを粉々にして、どん底に突き落としてやりたいんだよ」

「……それについては同感です」


 アイリーン様は、学術院でひたすら耐える日々を送っている。

 レオナード様の言うとおり、シャルロット様は取り巻きの令嬢を使って、あることないこと言いふらしている。その内容は、どれもこれもアイリーン様を貶めるようなことだ。


 許せない。ほんっとうに許せない。私だって、はらわたが煮えくり返っている。

 なのに、アイリーン様はあくまで冷静に対処しているのだ。

 その姿が私にはとても眩しく映り、何度傷ついても蘇る不死鳥のように気高く、神々しくて。私はそんなアイリーン様を見る度に、心の中で号泣している。


(ううっ……。一番悔しいのはアイリーン様、それはわかってる! でも、でも、腹が立つのよ! 相手を貶めて優位を保つとか、シャルロット様の性格が悪すぎる! 貴族にはよくあることだけれど、こういうの、本当に苦手だし、大嫌いだ!)


「マリオン、そんなに強く握ると、手を傷つける」

「ひゃっ!」


 レオナード様が突然私の手を握ったものだから、思わず変な声が出てしまった。


「落ち着いて」

「……はい」


 恥ずかしくて俯いてしまう私を見て、レオナード様が小さく笑う。そして、彼は私の手を軽くトンと叩き、腕を引っ込めた。


 離れていくレオナード様の手。

 握られた時は驚いてしまったけれど、離れていくのはなんだか寂しい……。


(……って! 私はなんてことを考えているの!)


 私は大慌てで、心に湧き上がった感情を遥か彼方へと追いやる。


(レオナード様はお優しいから、使用人の私にも気安くしてくださるだけ。さっきだって、あまりに強く握りしめた手を見て、怪我をしないか心配してくださっただけだし! ……にしても、わざわざ手を握らなくてもいいような……。ううん、その方が効果的だと思ったからで、他意はないから! 勘違いしちゃだめ!)


 チラリとレオナード様を窺うと、優しく微笑んでいる。


(レオナード様、だめですよ、その笑顔は。そんな表情で見つめられたら、普通のご令嬢ならコロッと落ちます。勘違いしちゃいます。もしかしたら、想われているのではないかと──)


 私はすぅっと息を吸い込み、静かに吐き出す。

 心を静めなければ。冷静でいなくては。今私がここにいるのは、与えられた役割があるから。


(遊びに行くんじゃないの。今から行くのは敵地。失敗は許されないのよ)


 浮ついた心を落ち着け、私はかねてより疑問に感じていたことを、レオナード様に尋ねた。


「レオナード様、一つ疑問があるのですが、おうかがいしてよろしいでしょうか?」

「うん、いいよ」

「ロメロの実ですが、エルスはどうしてギルヴァーナから手に入れようとするのでしょうか? 自国で栽培すれば話は早いと思うのですが。あまり栽培に適していなくて、量が取れないとか?」

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