表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
隠密侍女は推し令嬢を幸せにしたい!〜推しの兄は同士ですが、何故だか私にも甘いです!?〜  作者: 九条 睦月


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

39/64

30.告白

(レオナード様が、スキル持ち……?)


「レオナード様、私はこれにて失礼いたします」

「ご苦労だったね。引き続きよろしく頼む」

「はっ」


 私が呆然としている間に、諜報部員さんが応接を出て行った。その後ろ姿をぼんやり見送っていると、レオナード様が私に声をかける。


「マリオン」

「……」

「マリオン、座って」

「あっ……はい」


 私が向かいのソファに腰掛けると、レオナード様は眉尻を下げながら言った。


「俺がスキル持ちだということは、家族とダン、一部の諜報部員しか知らない。いや、届けは出しているから、国も知っているね」

「届けているのですか?」

「うん。筆頭侯爵家として、叛意がないことを示すためにね。届けていない貴族もいるだろうけど、一応高位貴族は届け出ることが望ましいから」

「そう……なのですね」


 ほんの一部の人しか知らない、レオナード様のスキル。そんな大切なことを、私に明かしてよかったのだろうか。

 もしかして、いやしなくても、私が強硬手段に出ようとしていたから言わざるを得なかったのか。


(でも、レオナード様なら本気になれば、私を止めることなど造作もないはずだわ。わざわざスキルのことを明かす必要はない……)


「マリオンが何を考えているのか、大体想像はつくけど。俺は、マリオンになら話してもいいと思っていたよ。まぁ……こんなタイミングで話すことになろうとは思わなかったけどね」

「申し訳……」

「謝らなくていい。謝っても、マリオンの意思は変わらないのだろう?」

「……」


 私は唇を噛みしめ、小さく頷く。


「慢心しているわけじゃないね?」

「失敗すれば、私だけの問題では済まないこともわかっています。慎重に進めるつもりです」

「はぁ……。話を聞かれたのは失敗だったなぁ」


 瞳を閉じ、レオナード様が嘆息する。


 レオナード様は失敗だったと言うが、私は聞けてよかった。

 アイリーン様とアーネスト様が早く結ばれるよう、応援したい、協力したい。アイリーン様をあらゆる悪意から守りたい。

 そう思ってはいるけれど、現実的に私がやれることなどたかが知れていて、いつももどかしさを感じていた。


 私がもし普通の侍女であれば、それでも仕方なかった。でも、実際はそうじゃない。

 私には「隠密」というスキルがあって、元王宮騎士団長の父や、第三王子近衛の長兄、現役の王宮騎士である次兄に鍛えてもらった武力があるのだ。それを、今使わずして、いつ使うのか。


「レオナード様の「本質」というスキルは、私の「隠密」が通用しないのですね」

「そう。俺は、スキルを発動したマリオンがはっきりと認識できる」

「……私がスキル持ちだと、最初からわかっていたのですか?」

「いや。俺の「本質」スキルは、相手がスキルを発動して、初めて認識できるものなんだ」


 レオナード様は、自分の持つ「本質」スキルについて話し始めた。

 それによると、「本質」スキルでは、人や物の本質がわかる。大雑把に言うと、善悪や真贋といったものらしい。

 人だと、本性などがそれにあたる。愛情深いとか、正義感が強いとか、欲望に弱いとか、身分主義だとか。その人間の思考の大部分を占めているものが見えるのだそうだ。だから、使用人の面接や取引相手の選別などには、レオナード様が関わることが多いとのこと。


(オルブライト家の使用人が信頼に値する人たちばかりなのは、こういうわけだったのね……)


 物に対してだと、真贋。それが本物であるか偽物であるか。鑑定に近いけれど、それが何なのかまではわからないらしい。


「そこまでできれば、マリオンの拾った赤い実を見た瞬間に、ロメロだとわかったものを。物質に対しては、あまり役には立たないんだよね」


 そうは言うけれど、真贋がわかるのは大きいと思う。


「自生しているロメロがどこのものかがわかるというのは、鑑定スキルを持っている人が?」

「うん。ただの成分分析じゃ、そこまではわからない。アーネスト様も「詳細に記録されている」と言っていただろう? 鑑定スキルを通すと、それ以上の情報がわかるんだよ。ただし、鑑定スキルにも階級があるんだけどね」

「階級?」

「マリオンの拾ったロメロの実と、畑で栽培されているロメロの実。同じ区域のものかどうかの鑑定は、鑑定スキルの中でも上級に属するものなんだよ。自生しているロメロの実の管理に際しては、その鑑定者が深く関わっている」

「……あの、ここまで聞いておいてなんですが、これって……」

「トップシークレット。絶対に内緒だよ」


(ヒイィッ! 内緒だよ、じゃないですっ!)


 操り人形のように何度も首を上下に振る私を見て、レオナード様がようやくいつもの笑顔になった。


「あの! 相手がスキルを発動することで、それが認識できるというのは?」


 これ以上とんでもない秘密を聞くのが怖くて、慌てて話を変える。


 レオナード様は、「これもね、便利なのかそうでないのかよくわからないけど」と前置き、説明してくれた。


「その人の本質を見極めるという点で、スキルを持ちかどうか、どんなスキルを持っているのかもわかってよさそうなものだけど、それは何故かできない。スキルは万能じゃないからね……」


 それについては同感だ。

 私の隠密スキルだって、完璧じゃない。例えば、声を出したり大きな音を立ててしまえば、たちまちバレてしまうのだから。どうせなら、全部隠してくれたらいいのに。


「でも、スキルが発動されている状態の人間を見ると、それがわかるんだ。偶然マリオンがスキルを使っているのを目撃して、マリオンがスキル持ち、それが隠密であると知った。こんなに身近にスキル持ちがいるなんて、と驚いたよ。そして、面白いスキルだとも思った」

「どうしてレオナード様にスキル持ちだってバレているのか謎だったんですが、これですっきりしました」

「あはははは、ごめんね」


 少しの間、和やかに二人して笑っていると、突然レオナード様が沈黙し、ぶつぶつと何やら小声で呟き始めた。


「レオナード様……?」

「……やはり……だが……あの件はダンに……」


 私は、オロオロしながらレオナード様を見守る。何かを真剣に考え、あれこれ采配しているように見えた。


「よし」

「レオナード様……」


 レオナード様は私を真っ直ぐに見つめ、こう言った。


「俺も行く」

「え? 行くって……どこへ?」

「決まっている。ダニング領の畑だ。ロメロの実を採取しに行く」


(ええええええーーーーーっ!?)

いつも読んでくださってありがとうございます。

いいな、面白いな、と感じていただけましたら、ブクマや評価(☆☆☆☆☆)をいただけますととても嬉しいです。皆さまの応援が励みになります!

どうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ