27-2.グレイ男爵家(2)
本日夕方も更新します!
「自生している方のロメロは、収穫されないのでしょうか?」
今度は、アンリ兄様がアーネスト様に尋ねる。それについても、アーネスト様は丁寧に答えてくれた。
「届けがされているものは、厳しく管理されています。収穫して外へ持ち出し、仮にそれが明らかとなった際には刑に処されることになりますので、よほどでないと手はつけないと思います」
「でも、どこで収穫された実なのかは、収穫されてしまえばわかりませんよね?」
アンリ兄様の疑問はもっともだ。私も同じことを思った。だけど、アーネスト様は驚くべきことを口にした。
「わかりますよ。各領地で自生しているロメロの実の成分は、詳細に記録されています。生えている場所によって、成分値が異なるのです。それによって、実がどこのものかわかるようになっています」
(なんですとーーーーっ!? なんという高度な技術!)
「実は、これも秘匿されている情報なので、ご内密に願います」
「しょ、承知いたしました!」
なるほど。これも秘密にされているわけね。ということは、おそらく、成分詳細を確認できるような鑑定スキル持ちが存在するのだろう。
そこで、ふと気づいた。
私が拾った実がどこのものかの調査は依頼済みだとレオナード様は言っていた。つまり、レオナード様はこのことを知っていたということになる。
私がレオナード様の方を見ると、彼は思わせぶりに微笑み、僅かに唇を動かした。
『な・い・しょ』
うーん……。やっぱりレオナード様には謎が多い。底知れない。
味方だとこの上なく頼りになるけれど、敵に回すととんでもなく恐ろしいお方である。
「畑の方の実は、手に入れていますか?」
これには、肩を落として否と答えたアーネスト様。
ガチガチに管理されているのだから、持ち出すことは容易ではないだろう。これについては、諜報部員さんたちも苦戦しているそうだ。
お父様は小さく唸り、考え込む。その間に、アンリ兄様が護衛の件について話を切り出した。
「ところで、アイリーン様の護衛についてですが、王宮騎士団から私を含め、三名がつくことになりました」
「アンリがついてくれるのか! それはありがたい」
レオナード様が破顔する。
護衛は、する者、される者の信頼関係が肝となる。アンリ兄様は脳筋なところがあるけれど、人懐っこく気安い。だからきっと、アイリーン様もすぐに打ち解けてくださると思うのだ。
「アンリ兄様、あとの二人は?」
「アンディーとコリンだ」
「まぁ! それは心強いです! お願いした甲斐がありました」
アンディーとコリンのことはよく知っている。二人ともアンリ兄様の学友で、ともに切磋琢磨してきた仲間。うちにも何度も来たことがあり、私も顔なじみになっていた。
「マリオンも知っているのかい?」
「はい。二人とも信頼できる騎士ですわ。ご安心ください」
「それはよかった。確か、アンリは第三隊だったね。隊長の采配に感謝しなくては」
「ランドルフ殿下が隊長に直接打診してくださったのです。マリオンから話を聞いていた私も立候補しましたし、殿下からもマリオンの話が出たようなので、私とアンディー、コリンがつくのが一番いいだろうと」
(え? 私の話!?)
目を丸くしている私に、アーネスト様がそっと補足してくれた。
「マリオンの話も、もちろん殿下にお伝えしています。グレイ男爵家の協力が得られるのは大きいと、とても感謝されておりました」
「は、はぁ……いえ、その、あの……精一杯頑張ります」
少し呆然としてしまい、間抜けな答えを返してしまう。
(頑張りますって……。いやまぁ合っているけれど、もっと気の利いたこと言えないのか、私)
よく考えると、私のこともしっかり報告していることなど至極当然のことだ。だってこれは、極秘重要任務なのだから。
改めて気を引き締めていると、ノックの音と執事の声が聞こえた。
「あぁ、いらしたようだな」
「そうですね」
お父様とレオナード様が顔を見合わせ、頷きあう。アンリ兄様も心得ているとばかりに、ニッと笑った。
(え、なに? 私、何も聞いていないんですけど?)
すると、事態を把握していない私とアーネスト様に向かって、レオナード様がこう言った。
「アイリーンが到着したようです」
(待て待て待てーぃ! 専属侍女が知らないって、どういうことですかーーー!)




