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隠密侍女は推し令嬢を幸せにしたい!〜推しの兄は同士ですが、何故だか私にも甘いです!?〜  作者: 九条 睦月


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24.共闘しましょう

「アーネスト様、私たちはあなたの本心を聞きたいのです」


 レオナード様がダメ押しのようにそう言うと、アーネスト様は瞳を伏せ、小さく呟いた。


「あなた方には、とても敵いそうもない」

「はい。諦めてください」


 彼は顔を上げ、私たちを真っ直ぐに見据える。そして、覚悟を決めたように言った。


「私は、アイリーン嬢を想っています。だから、例えそれが最適であろうとも、シャルロット嬢と婚約を結びたくなかった。それに、アイリーン嬢がまた他の誰かと婚約してしまうのを、黙って見ていることはできなかったのです」


(……。…………。ひゃ、ひゃあああああああ! 熱烈な愛の告白、キターーー!!)


 もう大興奮である。心臓がバックンバックンと高鳴っている。今にも部屋を飛び出して、ギルヴァーナ学術院にいるアイリーン様の元へ行き、お伝えしたいっ!


(でも、こういうことは本人からでなきゃだめよね。私から伝えるなんて、無粋よね。くぅーーー、も・ど・か・し・い!)


「……そうでしたか」

「最初にお話できればよかったのですが、ダニング侯爵家のことについては秘密裏に進める必要があり、お伝えできませんでした」

「それほど厄介だということですね」

「ええ。ですが、放置はできません」


 ということは、ダニング侯爵家は現在のところ、かなり黒に近いという感じか。


「マリオン」

「は、はいっ」


 思考を中断し、レオナード様を見る。言葉にしなくても、レオナード様が何を言いたいのかがわかる気がした。

 私は力強く頷く。レオナード様がこれから言うことについて、私は大賛成だから。


「アーネスト様、その任務、私たちにもお手伝いさせていただけないでしょうか」

「……」


 アーネスト様が目に見えて驚いた顔をする。まさかこんなことを言われるとは思っていなかったのだろう。


 能力の高さ故か、信頼度の厚さ故か、おそらく両方だと思うけれど、アーネスト様はたった一人でこんな重要で難しい任務にあたっている。内容について詳細はまだ明かしていないけれど、私たちはそれを八割程度は掴んでいる。なら、協力し合うべきだ。


「アーネスト様は、ラズベリーによく似た赤い実のことはご存じでしょうか?」

「……」


 今度は、微かに身体を震わせたアーネスト様。

 普段なら絶対に見せないであろうその動揺に、アーネスト様の抱える案件の闇深さを垣間見た気がした。

 私と同じことを感じたのか、レオナード様が語気を強める。


「決して邪魔はいたしません。そして、足手まといにならないこともお約束します」

「いや……しかし……」

「私もこう見えて、多少は腕に覚えがあるのですよ?」


 そう言って挑戦的な笑みを浮かべるレオナード様を見て、アーネスト様は肩を落とし、大きな溜息をついた。


「……知っていますよ。レオナード=オルブライト、ギルヴァーナ学術院在学中、剣技大会で一度も勝ちを譲ったことがない逸材。私は一年生だったあなたに負けを喫したのですから忘れようがない。あなたは……人は見かけによらないという典型ですよね」

「それは、アーネスト様にも言えると思いますが」


(そうなのよね……。お二人とも、見た目だけなら荒事は不得手という感じなのだけれど、めちゃくちゃお強いのよね……)


 ギルヴァーナ学術院では、毎年剣技大会が開催される。上位に入った者は騎士団からスカウトがきたり、王族の近衛を打診されたりもする。だから、少しでも腕に覚えのある者たちはこぞって参加し、剣技を競いあうのだけれど。

 レオナード様は学術院に在学している間、その大会でずっと優勝し続けていたのだ! 今ではもう伝説のように語り継がれている。

 アーネスト様も一年生、二年生と優勝されていたのだけれど、三年目の最後の年に、その年入学してきたレオナード様に負けてしまった。


(今の今まですっかり忘れていたわ……)


 特に親しくはなくとも、少なからず関わりはあったのだ。アーネスト様とレオナード様は。


「わかりました。ランドルフ殿下の許可をいただくことにしましょう。正直、助かります」

「お察しいたします。あの家にはいろいろと黒い噂もあり、たった一人でというのは危険すぎます。が、生半可な者をつけては、更に危険が増すだけ」

「そのとおりです。……ところで、そちらの女性はアイリーン嬢の侍女の方ではなかったでしょうか? 今更ですが、このような話を聞かせてしまっては……」

「いえ! 私は大丈夫です!」


 勢いよく答える私に、レオナード様がふき出すのを堪えるようにクッと喉を鳴らした。


「本人もこう言っておりますので、問題ありませんよ」

「そうは言っても……」

「アーネスト様。彼女は、マリオン=グレイといいます」

「マリオン……グレイ……。もしや、グレイ男爵家のご令嬢ですか!」


 またもや驚くアーネスト様。

 グレイ、という名前に反応してくださったのは、私としてもとても誇らしい。


「クレマン殿に、一度お手合わせ願ったことがあります。本当にお強くて、私などでは全く歯が立ちませんでした。嫡男のディオン殿は、ユーグ殿下の近衛でしたよね? そして、次兄のアンリ殿も、将来の王宮騎士団長と目されるほどの実力をお持ちだと聞いています。あなたは……そちらの家のご令嬢だったのですね」

「いえ、私など令嬢というほどのものでは……。父や兄たちの影響もあり、私も女性騎士を目指しておりました。家族からは、じゃじゃ馬娘と言われているくらいなのです。あの、ですので……私も、少しは腕に覚えがございまして……」

「クレマン殿から教えを?」

「はい。それに、兄たちともずっと手合わせをしてまいりました」

「それはすごい。……なるほど、問題がないということがよくわかりました」


 アーネスト様が、私とレオナード様に向かって頭を下げる。


「レオナード殿、マリオン嬢、どうか私に力をお貸しください」

「頭を上げてください、アーネスト様。それに、私のことはレオナードとお呼びください」

「わ、私も、マリオンと……っ! 微力ではありますが、喜んでお手伝いさせていただきます!」

「もちろん、私も喜んで。さっさとこの案件を片付けて、アイリーンとの婚約を成立させましょう」

「レオナード……マリオン……ありがとう……!」


 こうして、私たちはがっちりと固い握手を交わしたのだった。

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