23-2.極秘の訪問(2)
本日2回目の更新です。
大混乱状態の私をよそに、ダンさんはアーネスト様を迎えに行ってしまった。
残された私は口をパクパクと開けたり閉めたりと、みっともないことこの上ない。
「ごめんね。これから言おうと思ったんだけど、先に到着しちゃったみたいだね」
「えっと、あの、いったいどういうことなのでしょう……?」
レオナード様は密かにアーネスト様と連絡を取り、こちらの手札を明かした上でアーネスト様の目的も白状させようと目論んだらしい。それで、彼をオルブライト侯爵家へ招待したのだそうだ。
(こ、こわっ! レオナード様が大胆で命知らずで怖すぎるっ!)
「でも、アーネスト様がこちらに来られたことが皆に知れたら……」
「大丈夫。その辺りは内密に進めているから。現に、アーネスト様が来ることは側近の一人とダンにしか知らせていないよ。アーネスト様には、裏門から訪ねてほしいと伝えてあるしね」
「裏門……」
「それに、本人だとわからないよう変装してきてほしいとも言っているし」
「……アーネスト様は、よくご了承されましたね」
「未来の義兄と仲違いは避けたかったんじゃないかな? 兄といっても、俺の方が年下だけどね」
そう言って、にんまりと笑うレオナード様が本当に恐ろしい……。
(未来の義兄ってなんですか! アイリーン様が選ばれること決定じゃないですか! それは……それは……激しく同意したいですけどっ!)
「失礼いたします」
そうこうしているうちに、ダンさんがアーネスト様を伴ってやって来た。
アーネスト様は黒のマントを羽織っており、フードもすっぽりと被っていて、一見誰だかわからない。
「ようこそいらっしゃいました。このような形でのご招待となり、申し訳ございません」
すでに立ち上がっていたレオナード様がアーネスト様に近寄り、恭しく頭を下げる。私も弾かれたように立ち上がり、そちらへ駆け寄った。
「い、いらっしゃいませ」
深く頭を下げると、フッと呼吸の和らぐ音がした。
「いえ。こちらこそお招きいただき、ありがとうございます。……アーネスト=サザランドです」
アーネスト様がフードを下ろし、鮮やかな金髪を露わにされる。そして、優しげな青い瞳を細くし、にっこりと微笑んだ。
*
ダンさんがお茶の用意をし、皆にふるまう。本来は私がすべきだと思うのだけれど、話に集中するようにとのことだった。
(こんなに動揺してちゃ、うっかりいろいろやっちゃいそうだから助かったかも……)
私はレオナード様の横に移動し、固唾をのむ。これからどんな話が飛び出すのだろうか。
「私は回りくどいことを好みませんので、単刀直入におうかがいいたします。アーネスト様は、ダニング侯爵家を探っておられますね?」
(ちょっと待って! いくらなんでも、単刀直入すぎやしませんか!?)
サーッと血の気が引いていく私とは違い、レオナード様は飄々とした表情でアーネスト様を見つめている。肝の据わり方が半端ない。
アーネスト様は僅かに目を見開き、しばらくの間、無言でレオナード様の様子を窺っていた。が、やがて観念したように吐息し、口を開く。
「……こちらが考えていた以上に、すでにいろいろと掴んでおられるようですね」
「大変申し訳ございません。ですが、大切な妹を守るためですので」
「そうですよね。こちらこそ申し訳ございません。それにしても……調査されることは想定しておりましたが、まさかここまで探り当てられるとは思いませんでした」
アーネスト様は、意外とあっさり白状した。少し困ったような顔をしている彼が、とてもお気の毒である。
アーネスト様が他の側近の方とは違うお仕事をされている、ということまではわかっても、その内容まで探るなど至難の業なのだ、普通なら。
しかし、なんだかいろいろととんでもないレオナード様は、それを可能にしてしまったのですよ。……ほんっとうに申し訳ございません!
私が内心で平謝りしているというのに、レオナード様はしてやったりといった得意顔。
アーネスト様の方が年上だというのに、その表情はどうなのだろうか。いや、相手が年上だからこそなのか。それとも……
「愛しい妹の憂いは、すべからく排除すべき。これが、私の信条なので」
(ですよねーーーっ! 全てはアイリーン様のため! これに尽きる!)
ブレないレオナード様が素敵すぎる。
決して表には出せないけれど、私は激しく同意し、心の中でブンブンと頭を振った。
「そもそも、アーネスト様ほどのお方が婚約者候補を立てることに疑問を持ちました。そして候補は、アイリーンとダニング侯爵令嬢。ダニング侯爵家から以前に打診があったにもかかわらず、その時はお受けにならなかった。なのに、今回候補に入れたという部分がどうにも引っかかりましてね」
レオナード様の言葉に、アーネスト様が苦笑する。
「そのことに疑問を抱かれる方は、それなりにいらっしゃるでしょうね」
「本来なら、ダニング侯爵令嬢を婚約者にすればよかった。でも、あなたはそうしなかった」
(うおぅ! なんて強気なレオナード様!)
しかし、彼の言うことはもっともなこと。
ダニング侯爵家に探らねばならない怪しい点があるのなら、いっそ婚約者になってしまった方が早いのだ。その方がずっと探りやすい。それに、ダニング侯爵家の不正などが明らかになれば、婚約は結局白紙になるのだし。
「……そのとおりです。ですが、婚約した後、もしもあの家に何も疚しいところがなければ、私はいずれシャルロット嬢と結婚しなくてはならなくなります。それは、私の本意ではないのです」
「つまり、他に想う者がいると?」
「……」
レオナード様と私の瞳がギラッと光った。
(ここまできたら、最後までちゃんと言ってください、アーネスト様!)
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