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隠密侍女は推し令嬢を幸せにしたい!〜推しの兄は同士ですが、何故だか私にも甘いです!?〜  作者: 九条 睦月


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02.マリオン=グレイ

 私は、オルブライト侯爵家のご令嬢、アイリーン=オルブライト様の専属侍女であると同時に、一応貴族令嬢でもある。


 マリオン=グレイ、グレイ男爵家の娘だ。


 ただ、男爵令嬢といっても、実家は由緒正しい家というわけではなく、いわば成り上がりである。

 三十年ほど前にあった隣国エルス王国との戦争で武勲をあげ、平民騎士だった父は叙爵された。

 領地はなくて王都で暮らしているけれど、場所は平民街に近く、邸もそれほど大きくないし、さほど裕福でもない。それでも、一応食うには困らない、そんな底辺の隅っこ貴族なのである。


 父が武勲をたてるほど腕が立ち、かつては王宮騎士団の団長を務めたことからも、グレイ家は武に特化した家だ。

 私には兄が二人いるのだけれど、もちろん騎士である。

 長兄は第三王子付きの近衛、次兄も王宮騎士団に所属している。どちらかといえば、長兄のディオン兄様は頭脳派で、次兄のアンリ兄様は武闘派といったところか。


 となると、母もそのような人物かというと、これがまた真逆ともいえるタイプなのが我が家のおかしなところだと思う。

 母は、かつて社交界で『妖精姫』と謳われるほどで、子爵令嬢にもかかわらず、王家や高位貴族からも求婚されたほどの女性。だから、戦闘などもってのほか、まるきり縁のない人なのである。

 そんな女性がどうやって父のような脳筋……コホン、バリバリの武闘派と恋に落ちたのか、いまだに謎である。


 ……そう、驚愕なのだけれど、うちの両親は貴族には珍しい恋愛結婚なのだ!


 そんな中、一人娘として生まれたのが私、マリオンだ。

 生まれた時の父や兄たちの騒動……いや、喜びようといったらとんでもなかったと聞いている。なので、彼らは私に対して基本的に甘い。特に父はデロデロである。溺愛しているといっていい。

 普通これほど甘やかされて育ったなら、とんでもない我儘令嬢になっていただろうけれど、そこは母がきちんと締めてくれた。私をこれでもかと甘やかす男連中なんて目じゃないほど、厳しく、厳しく育てたのだ。


 マナーをはじめ、ダンスや楽器、絵画、読み書きはもちろん、外国語や政治経済などの勉学に至るまで、徹底的に叩き込んだ。おかげで私は、我が国ギルヴァーナ王国が運営する学び舎、ギルヴァーナ学術院では、常に成績上位をキープしていた。

 まるで妖精のように儚げで美しく、まさに可憐という言葉が似あう母は、実のところ、我が家で一番の実力者なのだった。人は見た目じゃわからない、最たる例だと思う。


 私は活発な兄たちと一緒に育ったこともあり、普通の貴族令嬢ならありえないほど鍛えられているし、武器の扱いにも長けていた。なんなら、見習い騎士くらいは簡単に倒せるほどの実力は持っている。

 当然、夢は女騎士一択! ……と思っていたのだけれど、それを阻止したのもやはり母だった。


『私、他のお嬢様みたいに社交なんてできないし、やりたくない!』

『あら、マリオンは自信がないのかしら? ひととおりのことは教えたし、あなたもきちんと習得したはずよね?』

『そ、そうだけど。それは……感謝しているわ。私も一応、貴族の端くれだし』

『端くれでもなんでも、あなたは貴族の令嬢なの。いつかはお嫁入りをして、婚家のために……』

『嫌よ! そんなの考えられない! 私もお父様やお兄様たちみたいに騎士になりたい! 騎士になって、弱い人や困っている人を助けたいの! 王宮騎士団には女性も在籍しているでしょう? だったら、私も……』


 たぶん、母は私には普通の令嬢として生きてもらいたかったのだと思う。そうでなくとも、私は他の人にはない「特別な能力」を持っていたから。

 武に適性があり、それと相性の良い能力もある。私はその能力を存分に発揮したかったし、そうすべきだと思っていた。

 そして母もまた、私を完全に止められるとは思っていなかったのだろう。それならばと、代替案を出してきた。


『それじゃ、百歩譲って……オルブライト侯爵家で働くのはどうかしら?』

『……(こ、侯爵家で働く!? メイドにしろ侍女にしろ、かなり難易度が高いんですけど? お母様、それは譲ってないわ! 仮にそうだとしても、百歩なんてとんでもない! せいぜい二、三歩程度よ!)』

『騎士ほどではないけれど、存分に身体を動かせるわよ?(にっこり)』

『……(その微笑みが怖いわ)』

『オルブライト侯爵夫人はね、お母様の学術院時代の親友なのよ。それでね、働き者で気遣い細やかな、素敵な侍女を探しているのですって!』

『気遣い細やか……?』

『マリオンにぴったりだと思わない?(にこにこにこ~)』

『!!(ヒィッ)』


 働き者はともかく、気遣い細やかなんて無理! と思いつつも、私はいつの間にやらオルブライト侯爵家へ連れていかれ、侯爵夫人や何故か一緒にいたご子息と面談をし、ほぼコネだろうけれど、オルブライト侯爵家の侍女として採用されてしまったのだった。

読んでくださってありがとうございます。

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