10.アイリーン様を応援します!
少し短めです。
私のテンションは上がるばかりでちっとも下りてこられない。このままだと興奮しすぎてぶっ倒れそうだ……。
それでも、アイリーン様のお顔が少し離れたこともあって、少しだけ冷静になる私。
(今よ、マリオン! ご尊顔をガン見できるチャンス!)
「どんなに冷静を装っても、マリオンにはわかってしまうのよね。マリオンには気を許しているからかしら? マリオンが鋭すぎるのかしら? ……いえ、きっと両方ね」
にっこり。
とても控えめに微笑まれるアイリーン様。
ユーグ殿下の婚約者候補だった時は、お辛い思いもたくさんして、結局婚約は成立せずに自信をなくされてしまったアイリーン様だけれど、結果よかったのかもしれない。だって、真にお慕いする方と結ばれる可能性が出てきたのだから。
それなら。それならば!
「私、アイリーン様を応援します! アイリーン様の想いが報われるよう、アイリーン様とアーネスト様が結ばれるよう……私にできることがあれば、なんだってやります!」
両こぶしを握り締めてしまう。
これは口だけじゃない。アイリーン様には秘密だけれど、行動でも示しましょう!
(よし、今度はサザランド公爵邸に忍び込んで……)
「ありがとう、マリオン。でも、無茶なことは絶対にだめよ?」
まるで、私のやりそうなことがわかるとでも言いたげなアイリーン様のお顔。思わずドキリとしてしまった。
「む、無茶なんていたしませんよ。私、そんなこと、したことないですし」
そっと視線を逸らすけれど、アイリーン様は流してくれなかった。
「あら、そうかしら? 以前、私の我儘を聞いて町のカフェに連れて行ってくれた時のことを覚えている? 店を出た時、憲兵から追いかけられていた窃盗犯に出くわしてしまったわよね。その男がこちらに向かってくるのが見えるやいなや、護衛よりも早くマリオンが反応して飛び出して行って、男を気絶させたのよ。あの時は本当に驚いたし、心臓が止まるかと思ったわ」
「あの時はあんな下衆……コホン、とにかく、アイリーン様に危険が及ぶと思ったら、勝手に身体が動いていたのです!」
距離はあったけれど、こっちに向かってくることは確かで、窃盗犯がアイリーン様に危害を加えることも考えられなくはなかった。
なら、先に危険分子は潰しておこうと思ったのだ。
まぁ当然のことながら、後で侍女長をはじめ、旦那様や奥様、レオナード様にもこっぴどく叱られてしまったわけだけれど。特に、レオナード様のお説教は長かったな……。
「でも、今回はアイリーン様の恋の応援をするだけなのですから問題ありません! 大丈夫です!」
「こっ……」
危険などあろうはずもない! と主張したくてそう言ったところ、アイリーン様はとても珍しいことに、真っ赤になって俯いてしまった。両手で頬を押さえながら。
(なに? なにこれ、なにこれ! 可愛すぎるんですけど! 愛らしすぎるんですけど! くぅぅぅ!)
(なんというご褒美なの! ここで転がっていいですか? いいですよね? だってもうたまらないー! 無理ぃーーーーっ!)
「マリオン……絨毯が敷いてあるとはいえ、床はベッドではないのよ?」
「はいぃ……(ふかふかだけどね!)」
ちょうど跪いていたものだから、私は本当に床にゴロゴロと転がって悶えてしまったのだった。




