(27)ウィーネの予選の最初の試合は圧勝です
さて、新人戦予選の最初の試合は、ウィーネの組の第一試合で、帝国対共和国です。
両者とも体格の良い男子よ。
地元の選手の登場だから、会場はすごい歓声で、すごい盛り上がりよ。
両者とも、ちょっと身体を斜めにして、木製の長剣を両手で持って剣先を相手に向けて構えた。
試合開始の合図があると、じりじりと前に進んで間合いを詰め、両者が同時に斬りかかる。
ガツン
木剣同士がぶつかりあって、剣は相手の身体には届かない。
お互いすぐに剣を振る。
ガツン
さらに
ガツン
ガツン
剣をぶつけ合うだけでは勝負はつかない。両者は少し離れて正対すると、じりじりと回り始める。
わーー
両者互角の戦いに会場が湧く。
私の隣に座ってるマリィさんは、この戦いをなんだか興味なさげにボーッと見ている風だ。
私はマリィさんに聞いた。
「マリィさん、この人たち強いんですか?」
マリィさんは気だるく答える。
「代表だから、お国では強いんだろう……でも、アリサはどうしてあいつらが弱いと思うのだ」
私は言った。
「ウィーネの剣は、もっとすごい速さでバシバシきてたので……それとは根本的に違うって感じがしたんです」
ガツン
わーー
ガツン
「ウィーネと試合したことあるの?」
「はい。幼年学校の時は、ウィーネに頼まれて、よくふたりで遊びでやってたんですよ」
「それは気の毒だったな」
「いや本当に、防ぐので精いっぱいだったですよ」
「防ぐので精いっぱいって、防げたの?ボコボコにやられなかった?」
ガツン
わーー
「たぶん手加減してたんじゃないかな」
「はぁ、わざわざ頼んで手加減ねぇ……」
マリィさんは何を言いたいんだろう。素人の私が止められてたんだから、手加減してたに決まってるじゃない。
ガツン
わーー
ガツン
「ところでアリサ、今試合をしてるやつらが強いかどうかって話だけれど、わが公国が、3つの大きな国の真ん中で存在できているのはどうしてだと思う?」
「山の中にあって不便だから……」
「それに加えて、剣士個々の力と魔法使いの力が圧倒的だから。それで、うちは兵隊の数が少なくても他国から攻め込まれないんだ」
ガツン
わーー
「他の国ではうちみたいに鍛えないんですか?」
「強い平民がたくさんいると、貴族の政治体制がひっくり返される危険があるんだとさ」
「はぁ、そんなことがあるんですか」
とか話していたら、共和国の剣士が受け損なってよろめいた隙に帝国の剣士が肩に打ち込んで勝負がついた。
わーーわーーわーーわーー
帝国の勝ちで場内が湧く。
さて次はいよいよウィーネの出番だ。
対戦相手の神聖皇国の剣士は大柄で体格が良く、木製の長剣をブンブン振りながら、やる気を前面に押し出しての登場だ。
それに対してウィーネは木製の長剣を片手に持って静かにゆっくり登場してきた。
エリカが大声を出して声援を送る。
「ウィーネ、頑張れ」
場内は先ほどに比べて静かである。
下馬評で強いといわれるウィーネを、みんなが注目しているって感じの静けさだ。
神聖皇国の剣士が力強くウィーネに木剣を向ける。
いつものようにゆったりと構えるウィーネ。
両者が向かい合うと、審判が大声で試合の開始を告げた。
「はじめ」
その合図と共に、神聖皇国の剣士が素早くウィーネに近づき、木剣を大きく振り上げて斜め上から斬りかかった。
でもウィーネはゆったりした構えのまま動かない。
神聖皇国の剣士の木剣が思いきり振り下ろされる。
ウィーネはまだ動かない。
カン
木剣を弾く軽い音とほぼ同時に、神聖皇国の剣士の木剣が宙に舞い、彼は両膝をつくようにして崩れ落ちた。
ウィーネは、半歩だけ立ち位置が動いているものの、何事もなかったかのように、元のゆったりと構えに戻っている。
場内が静まりかえる。
「公国ウィーネ」
審判がウィーネの勝利を告げた。




