(23)カーリー一族 vs ミーシャの子熊たち(その2)
「神聖国なら相手にとって不足なしじゃ」
「さっきからやけに元気じゃないか。大怪我してるじゃなかったのか。やっぱり嘘っぱちか」
「うるせい黙れ。戦争するなら話は別じゃ」
帝国の闇組織カーリー一族に属するカヘシュと神聖皇国諜報部のマーカスの言い争いはどんどんひどくなっていく。
でも、その原因となった私たち3人はただ呆然と眺めるだけだ。
「止めた方がいいんじゃないですか」
私が小声で言うとマリィさんも小声で言った。
「まあそうなんだけどな。でもどうしよう。困ったな」
「マリィさんが剣で脅したらどうですか」
「選手が下手に手を出すと後が面倒なんだよなぁ」
そういえば、ゴルードリア高原でウィーネと神聖皇国の無礼な奴が試合をした時にイオナもそんなことを言ってたっけ。不都合なことをしたら団長に御目玉を頂戴するから、いろいろとやり方が難しいって。
マリィさんがボソッと言った。
「そうだ。これは、帝国の組織と神聖皇国の争いだから、公国には関係はないことであって、公国の剣士である私が両国の争いの間にわざわざはいる必要はないのではないだろうか」
「はぁ、なに言ってんですか。
私たちは、ばっちり関係ありって感じですよ」
「関係ありなんだよな。いやぁ、困った、困った」
私たちがコソコソ話してる間にもふたりの言い争いは続いているのだった。
「我が神聖皇国が本気を出せばお前らチンピラ集団はあっという間に消滅だ」
「はあ、神聖国の兵隊はこのビキレヌムを落としたことはないんだぞ。いつも撤退だ」
「あほう。どんな昔のこと言ってやんでい」
言い争っているカヘシュとマーカスだけではなく、後ろに控えている人たちも互いを睨んで威嚇し合っているのである。
仕方がない。私が止めに入るか。
メイドの言うことなんて聞かないだろうから、姫様を騙るんだけれども、どういう風になにを言ったらいいんだろう。
ちょっと考えて、覚悟を決めて、私が大きな声で皆に話そうとしたその時だった。
「はい、やめて、やめて、双方黙って」
急にモリィの声がした。
「仲間同士で内輪揉めはやめてちょうだい」
カーリー一族のドンのジッテの後ろにいつの間にか鍛冶屋のモリィが立っていて、大きな声で両者を制した。
ジッテが振り返って、ちょっと驚く。
「おう、モリィじゃないか」
モリィが微笑む。
「親分さん、お久しぶり」
急に現れたモリィにカヘシュは戸惑う。
「はぁ?仲間?内輪?」
マーカスは声を荒げる。
「出たなモリィ。こいつらとは仲間じゃねえし、内輪揉めってなんだよ。なに訳のわからんこと言ってやがる。ちょっと黙ってろ」
「まあまあ、マーカス。落ち着いてよ」
「うるせい、落ち着いてるぜ。俺はいつも冷静沈着だぁ」
「そう、じゃあねぇ、大きな声じゃあなんだから、ちょっとこっちにお願いできるかしら」
「はぁ、なんだよ」
モリィはマーカスを呼ぶと、親分のジッテと3人で小声で何やら相談を始めた。
まわりの全員が急な展開に訳が分からず顔を見合わせた。
置いておかれたカヘシュと兄貴が呆然として私たちに言った。
「ありゃいったいなんだ?」
「さあ?」
聞かれた私たちも答えようがなくて、とりあえず首を傾げて返したのである。




