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公国で最強のアリサ ~飽くまでメイドです~  作者: 鎚元コマチ
第 II 部 四か国武闘大会編
32/47

(17)私とエリカは暇なので町を散策することにしました。


 選手団のみんなと別れて、私とモリィとエリカの3人は、荷をおろした5頭の山羊を連れて、細い路地を歩いていった。


「姫様は山羊を連れたりしないんじゃあないの?」


 私が聞くと、山羊を4頭引き連れたエリカが言った。ちなみに私が1頭を引いている。


「クラリーナ様は動物が大好きで、一流の動物使いなんですよ。動物に抱きついて、舐められて唾液まみれでも全然気になさらないし、動物舎のお掃除も進んでやられる方なんです」


 クラリーナ様は、物静かでお淑やかな深窓の令嬢だったはずなのに、実は、元気ではきはき、度胸満点なんだって言うし、荷物を背負わせたらピカ一だって言うし。

 さらに動物の世話も好きで、動物舎で糞まみれだって……いったいどこまでが本当なのかしら。


 それで、我々3人と山羊5頭がたどり着いたのは、宿屋じゃなくて、公国の連絡使が駐在している館でした。


 その館は、細い路地に面していて、周囲は建て込んでいて両隣りの建物が近い。公国の公式の建物なのに、両隣りの建物より少し大きめなだけで、外観は両隣りと似た質素な造りである。


 通りに面した玄関を入ると広間があって、なんとそこには、連絡使のコールモンド男爵ご夫婦と館の者たちがずらりと並んでいるのだった。


 揃ってのお出迎えである。


「姫様。いらっしゃいませ」


「いえ姫じゃありませんから」


 思わず私が否定すると、コールモンド男爵が笑って言った。


「はい、わかっております。姫じゃありませんよね。わかっておりますよ。はははははは」


 隣の男爵夫人がモリィに微笑んで言った。


「モリィ様もお久しぶりでございます」


 モリィが微笑んで答える。


「様はやめてください」


「いえいえ、そこは本当に主人がいろいろとお世話になりましたので……」


「ははははは、それでは改めて、みなさまようこそイストン帝国へ」


 再度、みんなが揃ってお辞儀をしてくれた。


 メェー


 同時に山羊が揃って鳴いた。


 私たちが案内された部屋は、モリィとエリカと私の3人用で相部屋なんだけど、メイドの部屋にしては広くて豪華なのである。お姫さま用の部屋かしら。

 中庭に面していて、窓から中庭の動物舎にいる山羊たちが見える。


「ところでモリィ、どうして私たちは選手団の他のみんなと別なところに泊まるんですか?」


「それは、こっちの方が守りが固いからよ」


「さっきの人たちの中に、何人か兵士の人がいたみたいですけど、マリィさんとウィーネ、ミスリィさんやイオナと一緒にいた方が良くないですか」


「向こうのみんなは武闘大会に気が行くでしょ。それから、向こうは普通の宿屋だからいろいろな人が入ってくるでしょ。それに比べて、こっちは部外者は入れないし、それに、周囲の建物は表向けは普通の集合住宅なんだけど、実は帝国の諜報が全部押さえているの」


「は?」


「帝国がまわりを囲んでいるから、赤いきつねが襲って来たら、まず彼らが騒ぐし、まず彼らが対応するからね」


「帝国の諜報部がなぜ?」


「我が公国の動向を探るために、昼夜張り付いてるのよ」


「は?張り付く?」


「すべて見られてると思っていいわよ」


「は?」


「トイレも音くらい聞かれているかな」


「えええ。魔法で覗かれないように、とかしないんですか」


 そう言う私にモリィが笑いながら言った。


「そんなことしたら陰謀を企ててるって疑われちゃうじゃない。だから、しないのよ」


「じゃあ、いろいろと気をつけないといけないじゃないですか」


「だから、アリサは普段通りでいいって言ってるでしょう。気にしなくて大丈夫よ」


 さっきの男爵がそうだったけれど、私が姫じゃないと言っても姫だと思う人は思うし、私が姫だと言っても、違うと思う人はいるってことよね。


 それじゃあ、これについてはあまり考えずに、いつものように普通に行動しようと思いました。


 それで、部屋に落ち着いた私たちなのであるが、やることがないのである。とりあえずは、お昼ご飯までなんだけれども、その後もなにもやることがないようなのである。


 せっかくだからこの館のメイドの仕事を手伝うのはどうでしょうか、とか提案したんだけれども、館のメイドさんに却下された。

 山羊の世話もダメだって言われて、エリカがちょっとがっかりしていた。


 宿屋に泊まる剣士たちは、早速、闘技場の下見に出かけると言っていたし、午後は大会前の調整と練習だっていう話だ。魔法使いたちは、早速、他国の魔法使いと開催の打ち合わせをするということだが、いろいろと揉めることがあって時間がかかるらしい。

 団長さんとか偉い人たちは他国の偉い人たちとの会合があるとのこと。


 みんな忙しそうなのに、私たち3名は部屋でボーッとしてお茶を飲んでいるのである。


 でも、モリィは昼過ぎから野暮用つまり秘密の用事があって出かけるのだと言う。


 モリィだけずるいな、私も出かけたいな、町は武闘大会があるので賑やかなんでしょう、せっかくの異国の旅なんだから部屋の中でじっとしてるのは嫌だな、とか思ってたら、私が言うより早く、それまで静かだったエリカがモリィに言った。


「私とアリサで街に出ていいでしょうか」


 ちょっと考えるモリィ。


「そうね、どうしましょう」


 それで、ふたりでごにょごにょと相談してたんだけど、相談が終わってモリィが言った。


「じゃあ、ふたりは今日は街に出ていいわよ」


 なんだか知らないけれど、モリィの許可が降りたわよ。うれしいな。


「私が昼食前にここを出て、昼食で宿屋に戻ったマリィを捕まえるから、3人で街を散策するといいわ」


「マリィさんがいれば安心ですけど、マリィさんは剣士の練習は出なくていいんですか」


 と私は聞いた。


「大丈夫でしょ。マリィは強いから練習はいらないわよ」


 と、モリィ。


 エリカもうれしそうに微笑んでいる。




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