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公国で最強のアリサ ~飽くまでメイドです~  作者: 鎚元コマチ
第 II 部 四か国武闘大会編
28/47

(13)アルモ砦の死闘もいよいよ決着です(その1)


 野営地でお茶飲みながら、私たちは10年前のアルモ砦の戦いの話を、ご本人たちから聞いているのであるが、いよいよ話は最後の戦闘のところとなったのである。


 アルモ砦に突然と攻め込んできた神聖皇国の『灼熱の魔女クアイン』と『武神ドルゴラル将軍』と20名の兵士たち。彼らは砦を守る公国の兵士たちをすべて殺戮し、とうとうアルモ砦の館の入口にある大階段の下に達したのだった。

 公国の兵士として最後に残った剣士のマリィさんと魔法使いのミスリィさんのふたりは、大階段の上で彼らを見下ろすように立ち塞がった。しかし、口上を述べる間もなく、灼熱の魔女の魔法がふたりを襲ったのだ。


「『よくここまで来たな……』とか言おうと思ってたのに、いきなり身体中に湯気が立ち昇って、熱いやら湿っぽいやらで大変だったぞ」

 と、マリィさん。


「最初から全力で氷を作ったら、なんとかなったのよね。魔女の熱で氷から水蒸気になった水が湯気になるのは、こちらの温度が上がってないってことだから、とりあえずは燃やされずにすんだと思ったわ」

 と、ミスリィさん。


「用意した口上を述べられなかったが、将軍が笑っているのが一瞬見えたんだ。だから、なにも言わなくても大丈夫だったと思ったよ」

 

「魔女もニヤリって感じの顔をしてたのよ」


 それを聞いてイオナが言った。

「すごい。そんな状況でもしっかり見ているんですね。で、この状況で敵が笑ってるって、確かにちょっと安心しますね」


 ウィーネも言った。

「うん、こちらに有利」


 なんで安心で有利なの?

 私にはよくわからないわ。


「ねえ、ちょっとイオナ、ウィーネ、どうして安心で有利なのよ」


「敵が油断したってことだからよ」

 というイオナの答えに続けてマリィさんが説明してくれた。


「さっき、奇襲をしかける前に敵を油断させるって言ったろ。

普通、こういう状況では、物陰からいきなり攻撃するのが常識なわけなんだけれども、それをせずに、ちびっ子が目の前に現れて口上を叫ぶって、すごく馬鹿っぽいだろ」


「は?馬鹿っぽいんですか」


「馬鹿っぽく振る舞って、敵がこちらを馬鹿だと思って油断するのを狙ったわけなんだが……結果として私らちびっ子が立ち塞がっただけで将軍と魔女は私らを馬鹿にして笑ってくれたわけだ」


 そこでマリィさんが笑って言った。

「それで、油断した敵にミスリィが一発切り札をぶちかましたんだ」


 ミスリィさんが静かに言った。


「さて問題です」


 は?

 ぶちかますんじゃないんですか?

 問題なんですか?

 やっぱり、なんだか学校の講義みたいね。


「魔女の切り札をとりあえず防いだわけなんだけれども、もしこのまま魔女が温度上げを続けたら、魔力量の差で最後は私の魔力切れで防ぎきれなくなって、私たちは燃やされちゃったのよね。

さて、この状況からどうやって反撃にでれたのでしょうか」


 イオナならすぐわかりそうな質問だと思ったら、すぐにイオナが言った。

「私、それ、知ってます」


「じゃあ、アリサさん、答えてください」


 は?私ですか?

 急に振られても困っちゃうわ。

 メイドにそんなことわかるわけないじゃない。


「えーと、つまり、基本はだまし合いなんだから……うーむ、燃えてないけど燃えたふりをして敵に魔法をやめさせる……そう、火粉をドカーンと燃やしたりとか」


「馬鹿ね、温度を下げて氷を作りながら、一方で温度を上げるなんてことをできる魔法使いはいないわよ」

 と、イオナが私を馬鹿とか言うんだけれど、答えを知ってる人に言われたくないわよね。


 でも、私の答えを聞いて、マリィさんが言った。

「実はそれも考えていたんだ。やらなくて済んだがな」


「え、言っちゃっていいの」

 と、ミスリィさん。


「ああ、最近は知られちゃってるからかまわんさ。つまり、ミスリィは全力で冷やしてるから無理だが、いざとなったら私が魔法で火粉を燃やしてだます予定だった」


「魔法で火粉を燃やせるっていうのは普通の魔法使いなら誰でも出来ることだけれども、剣士のマリィは魔法はまったく使えないということにしていてね、それをいざという時の切り札にするって言ってたのよ。だから、そんなことも考えていたのは、当時は秘密にしてたのよ」


 おお、当たらずも遠からずって感じね。私もなかなか冴えてるじゃない。でも、正解はどうなのかしら。


 で、ミスリィさんが正解を発表します。


「では正解です。その時はそんなことをしなくても、魔女はこちらが温度を下げて防御したのがわかったとたんに、こちらを逆に凍らせようと温度を下げてきたのでした。これは、燃やされずに死んだ魔法使いがいたのを見ているから、予想された対応よ」


「それで、ドカーンと必殺の切り札を……」


 マリィさんがさっきからなんだか盛りあがってるんだけど、ミスリィさんは私たちに問題を出して答えさせたりしてたし、なぜか冷静だ。


「それでね、私が切り札『氷の柱』の魔法で魔女を潰して、マリィが将軍の首を刎ねて勝負がついたのよね」


「いやいや、そうじゃなくて、そこで何か言うことがあるだろ」


「え、なんのことかしら」


「しらばっくれてもダメだぞ」


「……やらなきゃダメ?」


「だって、一番の見せ場だろ」


「もう勘弁してほしいわ」


「せっかく熱心な若者が聞いてるんだからさ」


「うーむ」


 マリィさんはミスリィさんに何を言わせようとしているのだろう。

 一番の見せ場ってなんなのだろう。




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