(6)鍛冶屋のモリィが今回の陰謀について説明します(その1)
イオナがみんなに言った。
「まず、お茶会の時の話し振りから、熊のミーシャはアリサをクラリーナ様ではないかと疑っていたように思います」
は?イオナはいきなり何を馬鹿なことを言ってるの。
私はイオナに言った。
「私をクラリーナ様だと疑う?……確かにクラリーナ様はあまり表にお出にならない方だからミーシャさんもクラリーナ様の姿は知らないかもしれないけれど……私だってまだ直接お会いしてないけれど……でもクラリーナ様は公爵様と同じ灰色の髪で物静かでおとなしい方なんでしょう。私をクラリーナ様を間違えるわけないじゃない」
「それがそうでもないのよね。アリサ」
と、ちょっと微笑んで、モリィ。
「クラリーナ様はね、元気ではきはき、度胸満点ということになっているのよ、うちの業界の間ではね。髪色は元が灰色だとどんな色にも簡単に変えられるわよ」
モリィさん。なんなんですか、それは。
「さっき聞いた話からすると、アリサのその度胸満点な態度から、信じちゃったかもな」
と、少し楽しそうにマリィさんが言う。
「えーまさかー。だってクラリーナ様はお誕生日の式典とパレードに出席されるんだから、こんなところに居るわけないじゃないですか」
「影武者なら何人かいるから」
黙っていたミスリィさんが、ボソッと言った。
「えー」
ここでイオナが思い出したように言う。
「そういや、アリサ、あんた『はじめはお誕生日の式典とパレードの方をやるはずだったんだけれども、武闘大会の方に行くことになった』とかミーシャに言ってたわよね」
それは確かに言ったけど……でも……本当に最初はそっちのお手伝いの予定だったんだからね。
「あー、信じた、信じた、これは信じた」
と、マリィさん。
「なんか私、まずいことをしちゃいましたか」
そんな私にモリィが言う。
「クラリーナ様が秘密裏に選手団に同行して帝国に行くといううわさを流したのは私よ。それで、アリサのおかげで、そのうわさが真実味を帯びたわけだから、よくやったとほめてあげるわよ。熊のミーシャを騙すなんてたいしたものだわ」
なんだか褒められてるんだけれども、どういうこと?
「いやぁ、モリィのとこは騙しあいの世界だからな。やんなっちゃうよな」
と、マリィさん
「うんうん」
うなずくミスリィさん。
イオナがマリィさんに聞く。
「クラリーナ様が秘密裏に選手団に同行して帝国に行く、といううわさを意図的に流したってことはわかりましたが、クラリーナ様が帝国の武闘会に行く理由はなんなんですか?
やはり帝国の第四皇子と婚約のお話があるからですか。密かにクラリーナ様が直接に帝国の第4皇太子を見るため……とか」
「うん、イオナ、そんな感じよ。クラリーナ様と帝国の第4皇太子の婚約の話が水面下であるんだけれども、帝国の第四皇太子はなかなか公の場所に出てこないので、人となりがわからない。だから、元気ではきはき度胸満点なクラリーノ様は、密かに自ら第四皇太子を見に帝国まで行っちゃう、っていうのが今回の遠征の裏の設定になっているのよ」
マリィさんが付け加える。
「アルモから私たちふたり、それに鍛冶屋のモリィ、新人だけども最近いろいろ大活躍の公爵邸の君たちふたりという最強の護衛陣、さらにご不自由がないように専属メイドも付けたり……これは誰が見てもクラリーナ様御一行っていうメンバー構成だろ」
イオナがさらに聞く。
「でも、アリサがクラリーナ様の替わりで、本物は行かないんですよね。なんでそんなうわさを流して、わざわざ偽物を仕立てたりするんですか」
「なんでだと思う」
「もしかして、赤いきつねに対する陽動のためだったりとか……」
「いや、本当にバレバレだな」
マリィさんが感心する。
「そうなのよ、赤いきつねがクラリーナ様を狙っているのならば、城下で行われる式典とパレードが危ないでしょ。こちらの偽物に奴らを引き付けられないかと思ってね」
と、モリィが言う。
「はぁ」
イオナがため息を吐きながら、あきれたように言った。
「なんだか、本当に、騙しあいですね」




