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6.永遠の絆を結ぶ石

 

 着々とジャックさまとの結婚準備が進んでいる。ウェディングドレスとティアラなどの装飾品は、華やかで繊細なデザインが得意な新鋭デザイナーにお願いした。

 ティアラとジュエリーは、幸せを運ぶと言われている蝶をモチーフに提案してもらった。


 結婚式には真っ白なドレスに紫水晶を贅沢に散りばめた豪勢なデザイン。披露宴にはラベンダー色のドレスで、たくさんの小花が咲いたデザインに。


 そして、今日は、ジャックさまとお揃いのアクセサリーを購入するため、皇都で人気のお店に向かう予定だ。


 ――ジャックさまとの初デート……。


 朝から侍女のリラが、張り切って着飾ってくれたので、いつもよりも華やいで見える。昼間だから宝石も露出も少ないのに、侍女のリラはとっても有能だ。

 支度が終わった頃に、ジャックさまが、我が家の正門から馬車で迎えに来てくださった。


「ヴィー、お待たせ。今日も一段と綺麗だ」

「……っ!」


 ジャックさまは、わたくしに跪き、手の甲に唇を落とす。

 服装を合わせた訳ではないのに、わたくしと同じく、青を基調にしたコーディネートをしている。まるでリンクコーデのようで、顔が熱くなってしまう。


「ご、きげんよう、ジャックさま……っ!」


 火照った顔を隠すように、目を伏せながらカーテシーをすると、いつの間にか立ち上がっていたジャックさまが、わたくしの頬に触れる。


「寂しいからこちらを見て」

「っ!」


 くいっと顎を優しく持ち上げられると、熱っぽい瞳と視線が重なった。とろけそうなほどの甘くて強い意志を感じて、目をそらせない。真っ赤で恥ずかしいお顔が、ジャックさまに見られてしまって、顔から湯気が出そうだ。


「君の視線ですら、僕から逃げると不安になる」

「申し訳ありません。恥ずかしくてジャックさまのお顔を見れなくて……。っでも、ジャックさまから逃げるだなんてあり得ませんわ。ご安心くださいませ」

「うん、ありがとう」


 ジャックさまが、わたくしだけを見ている。

 ――何だか改めて好かれてると実感して、胸がきゅっとした。



 ***



 馬車に乗り込むと、ジャックさまは向かい側ではなく、わたくしの隣に座った。

 肩が触れそうなほど距離が近い。そう思っていたら、がたんと馬車が揺れて、ジャックさまと肩が触れてしまう。

 触れるたび鼓動が早くなって、苦しいくらい。ドキドキしながらお話していると、直ぐに、お店へ到着した。


 ジャックさまが、先に馬車を降りると、手を差し出してくださる。そっと手を預けて、地上に足をつけた。ぐいっと腰を引き寄せられ、ジャックさまと密着する。


「さぁ行こうか」

「はい。ジャックさま」


 ジャックさまが扉を開けて、店内に入ると、煌びやかな世界が広がっていて心が弾む。ここのブランドは、一日一組限定で中々予約が取れない。公爵家の我が家も、屋敷に一回だけ来てもらったことがある位だ。

 折角だから、直接お店に行ってオーダーしようと、ジャックさまから誘ってくださった時は嬉しくて心が踊った。


「ジャック皇太子殿下、ヴァイオレット公爵令嬢、ようこそおいでくださいました。どうぞこちらへお掛けください」


 デザイナーであるマダム・セレスティーヌが、わざわざ出迎えてくれた。

 そして、ガラス張りのカウンターの前にある椅子へ腰掛ける。


「本日はどのようなジュエリーをお探しでしょうか」

「婚姻記念にお揃いの物が欲しいんだ」

「まぁ、素敵でございますわね。リング、ネックレス、バングルなど、どのような物がよろしいかお決まりでいらっしゃいますか?」


 どうしようかと、ジャックさまを見上げると、パチリと目があった。

 ジャックさまは、大きく頷かれたので、私の好きなものに決めてもいいということだろう。

 それだったら……。


「わたくしは、リングが良いかと思いますわ」

「うん。ヴィーの希望通りにしよう」


 嬉しいわ。ジャックさまとお揃いのリングを持てるだなんて。


「かしこまりました。デザインや宝石の種類は、いかがなさいましょう」

「ジャックさまにいただいた、この指輪と重ね付けが出来るような、そんなデザインにしたいのです」


 わたくしたちの想いが通じ合った日に下さった、ゴールドの台座に、紫水晶が誇らしげに乗ったリング。ジャックさまの瞳の色の紫水晶は、今も右手の薬指に輝いている。


「ヴィー、そこまで大切に想ってくれてありがとう」

「それでは、そちらのリングを見せていただいてもよろしいでしょうか」

「はい」


 ジャックさまからいただいたリングを外し、マダム・セレスティーヌに渡す。

 マダム・セレスティーヌは、手袋をはめて、念入りにリングのデザインを確認した。その後、デザイン画をものすごいスピードで書き上げていく。


「数パターン考えてみましたが、いかがですか?」

(どのデザインも素敵だけれど……、一番はこれかしら)


 気に入ったお揃いのリングのデザイン画を手に取ろうとすると、ジャックさまと手が重なる。


「あ、ヴィーもこれがいい? 一緒だね」

「はい。このデザインが、ジャックさまのイメージにピッタリで……!」

「えっ、そうかな。僕はヴィーに似合いそうと思ったデザインを選んだのだけど」


 ……お互いを想って、デザインを選んだ事実が擽ったい。


「うふっ、ではこちらのデザインにいたしましょうか。この後、台座にはめる宝石を決めていただいて、オーダーは終了になります」


「僕はヴィーの透き通ったあおい瞳が好きだから、それに近い色のサファイアがいいな」

「っジャックさま……!」


 わたくしの色が、ジャックさまの指にはめられるだなんて。

 ――こ、今度こそ、心臓が止まってしまいそうだわ……!


「ヴィーはどうする? もうこのリングで、僕の色は使ってしまっているしね」


 そう、以前にいただいたリングは、ジャックさまの瞳の色に、ゴールドの台座は黄金の髪の毛の色を表している。


「婚約や結婚に使う宝石ですと、ダイヤモンドがお勧めですわ。永遠の絆を結ぶ石と言われております」

「永遠の絆を結ぶ……! わたくしダイヤモンドにいたしますわ」

「僕のリングの脇石もダイヤモンドがいいな」

「承知しました。それでは、清書したデザイン画を後ほど送らせていただきたく存じます。ご了承いただけましたら制作いたします」

「わかりました。ありがとうございます」


 浮かれた気持ちで、お店を出て、また馬車へ乗り込む。

 我が家で、お茶をしながら、お互いの好きなものや苦手なものを沢山話す。

 過去の自分に教えてあげたいほどの幸せな一日を過ごした。


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