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8

 遂にこの日が来てしまった。今日は俺の受験の面接の日である。

 正直、俺には自信がない。まだ、少し他人と喋るのが怖いからだ。昔よりは確かに対人恐怖症は軽症になってきた。しかし、まだ完全に完治してはいないのだ。


 俺は制服に着替えて凛華と兄貴と共に玄関へ向かう。


「僕からのアドバイス。怖くなったら面接官の人の事を親しい人誰かに置き換えて捉えるといいよ。各々、頑張って来てね。それじゃあ、いってらっしゃい」


 そう言い兄貴は俺と凛華を送り出してくれた。


 正直、ここまで色々としてくれた兄貴の為に頑張りたいと思えた。


 俺は凛華と天命高校へ向かう。道中、会話はしなかった。俺も凛華も面接の為に集中したいからだ。


 俺は教室に入ると考えてきた面接の答え方を何回も自分の番が来るまで心の中で暗唱する。


 心の中で暗唱していると遂に俺の番が来てしまった。俺は一緒に面接する奴と面接会場である教室に入った。中には面接官が3人居た。


「まず、最初に名前、受験番号、出身中学校を言ってください」


 他の奴が言い終わり、俺の番が来た。俺は声を出そうとした。しかし、声は出なかった。

 俺は終わったと思った。しかし、ここで俺は朝、兄貴に言われた事を思い出す。


「僕からのアドバイス。怖くなったら面接官の人の事を親しい人誰かに置き換えて捉えるといいよ」


 俺は面接官は勿論、他の受験生も兄貴と思い込もうとした。すると、何故か安心感が湧いた。そして、俺の口から自然と名前、受験番号、出身中学校が出た。

 その後も、何故かスラスラと問に答えていけた。


「最後に君は自分の白髪の事をどう思っていますか?」


 やっぱり聞かれた。と俺は思った。

 この髪は他の人とは全然違う特徴だし目立つからな。


「はい。私はこの髪の事を気に入ってます。周りから気持ち悪いなどの暴言を履かれた事があります。しかし、家族が私の髪の事を綺麗だと言ってくれました。なので私はこの綺麗な髪の事を気に入ってます。以上です」


 俺は笑顔でそう返した。

 これは本当の事だ。俺はこの髪を気に入っている。もし、この髪がなかったら俺は虐待をするような親に育てられていたかもしれない。兄貴やお父さんに会えなかった、家族になれなかった。そう思うとこの髪には感謝しないといけないと思った。


 その後、面接は終わり家に帰された。玄関の扉を開けると兄貴が走って出迎えてくれた。


「面接は?どうだった?」

「できた。予想より上手に」

「よかったぁ」


 兄貴は膝から崩れ落ちた。それほど、嬉しかったのだろう。俺の事でここまで喜んでくれる人がいるなんて俺は本当に幸せだな。


「その、ありがとう。あのアドバイスがなかったら一言も喋れなかったと思う」

「どういたしまして」


 兄貴に連れられ俺は家に入った。

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