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 あれから、毎日陽馬をおつかいに行かせた。初日は怯えていた陽馬だったが、次の日からは少しずつ自信がついたようになった。冬休みが終わる頃にはほとんど対人恐怖症を克服し、俺に怒鳴った時と同じような口調で喋るようになった。


 まさか、あの口調が素だったとは思わなかった。


 勿論、精神科の医者にも一応見せに行ったが驚かれ叱られた。たった数ヶ月で無茶な特訓をしたので仕方がない。

 本当は医者の正しい治療で治さないといけないがそれを無視して治したんだから怒られて当たり前か。


 まぁ、そんなこんなで今日は陽馬と凛華が学校に通う日になった。たった数ヶ月しかいないが友達ができるといいなと思っている。凛華ちゃんもその中学校に居るので大丈夫だと思うが、今の時期は受験前でピリピリしているから友達ができるか心配である。


「荷物持った?制服ちゃんと着た?」

「お兄ちゃんがお母さんみたい」

「お父さんにも言われたぞ。その言葉。2人揃って過保護なんだよな」

「それじゃあ、いってらっしゃい。頑張ってね」


 僕は苦笑しながら2人を送り出す。2人は笑顔で「行ってきます」と言い、学校へ向かった。


 ◇◇◇◇◇


 私は今日から学校へ行く。どうやら陽馬と別のクラスに行く事になるらしい。


 正直、不安だ。

 靴を隠された記憶。

 鉛筆を折られた記憶。

 髪を引っ張られた記憶。

 暴言を履かれた記憶。

 トイレに閉じ込められた記憶。

 そのせいで大切で大好きなおじいちゃんの最後を見送れなかった記憶。

 その記憶が蘇る。


 正直私は学校に行く事が嫌だった。今日からの学校も正直不安だ。知り合いの玲奈ちゃんが居る。彼女は信頼している。けれど、他の人からいじめられるかもしれない。それが1番不安で仕方がない。


「それじゃあ、入って来て」


 私は先生に呼ばれたので中に入る。堂々としよう、そう思いながら教室の扉を開く。


「それじゃあ、自己紹介して」

「私は堺 凛華です。短い時間ですがよろしくお願いします」

「皆さん仲良くしてあげてください。凛華さんは左奥の空いている席に座って下さい」


 私は自分の席に向かう。


 朝の会が終わり、私の周りに人だかりができた。色々な子が『好きな芸能人は何?』とか『何処の高校に行くの?』など、質問攻めしてくるが淡々と返していく。


 ◇◇◇◇◇


 俺は今日から学校に行く。どうやら凛華とは離れ離れになるらしいが玲奈ちゃんと同じクラスになれたらしい。


 正直怖い。

 また、対人恐怖症が発症するかもしれない。

 うまく喋れないかもしれない。

 白髪の事で虐められるかもしれない。

 うまく馴染めないかもしれない。


 そう言うネガティブな事で頭がいっぱいだった。


「入って来てください」


 ついにこの時が来てしまった。クラスメイトとの対面だ。俺は教室の扉を開いて中に入る。俺の髪を見てクラスメイトの全員が唖然とする。それはそうだろう、白髪の男が入って来たんだから。


「自己紹介してください」

「ぁ••••••」


 俺は声を出そうとした。しかし、声が出なかった。いや、出せなかった。声を出そうとすると何故か息が出なかった。


「大丈夫。落ち着いて」


 先生は俺に優しい言葉をかける。そして、教室を見渡し玲奈ちゃんを見つけひとまず落ち着く。


「俺は堺 陽馬です。見た通り白髪だがこれは地毛だ。髪の毛とか関係なくこれからよろしく」


 言えたぁ。言えたぞぉ。めっちゃ嬉しい。


 俺は自己紹介できた事に対する喜びを噛みしめる。


「陽馬君は白髪だが皆と変わりません。仲良くしてあげて下さいね。陽馬君は1番奥の席に」


 先生に言われた通りに俺は席に向かう。俺の席の隣には玲奈ちゃんが座っていた。先生も気を利かせてくれたのだろう。


「これからよろしくね。陽馬君」

「よろしく。玲奈ちゃん」


 俺はこのクラスで無事にやっていけそうだ。


 放課後になり、帰りの準備をする。

 それにしても大変だった。休憩時間は質問攻めにされて正直、今すぐ帰りたい。まぁ、いやじゃなかったけど。


 俺は凛華と合流して玲奈ちゃんと一緒に帰宅する。


 ◇◇◇◇◇


 僕が高校から帰って家で待っていると玄関が開く音がした。


「「ただいま」」

「おかえり」


 落ち込んでいないところを見るとどうやらクラス馴染めたみたいだ。2人共なんだか生き生きしているような気がする。


 ひとまず、安心したよ。

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