表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/32

3

「••••••なんで!なんでついて来るんだ!」


 陽馬君は泣きながらそう叫んだ。

 いきなり叫んだ陽馬君の声に僕はビックリした。今まで大きな声を出さずにいつもヒソヒソ喋っていた彼がここまで大きな声を出したのだから。口調は少し強めなのか••••••。


「怖いんだ。いつもいつも、周りの人の視線を感じると俺を蔑んでいるように感じるんだ。人と向かい合う事が怖いんだ。さっきもそうだ。無意識に恐怖を感じて逃げてしまうんだ。幻滅しただろ。呆れただろ。••••••もう、俺とは関わらないでくれ!俺を、1人にしてくれ••••••」

「陽馬君••••••」


 僕は無言で泣いている陽馬君に後ろから抱きつき、優しく頭を撫でた。


「辛かったんだね。僕には陽馬君の気持ちは分からない。でも君を支える事はできる。手を差し伸べる事ができる。共に悩む事ができる。君はもう1人じゃないんだよ。助け合える家族がいるんだ。だから、そんな風に1人で悩みを持ち抱える事をしなくていいんだよ。親父だって、凛華ちゃんだって、君の悩みを聞いてくれるし、一緒に考え悩んでくれるよ」

「そんな事したら皆に、家族に迷惑掛かるじゃないか」

「皆迷惑だと思うかな?陽馬君が前向きになってくれたって大喜びしそうだけど」

「••••••本当にいいのかな」

「そもそも自分を変える為に僕達と家族になったんじゃないの?そう僕は思ってたんだけど」

「••••••」


 驚いた顔をしているのが後ろからでも分かった。彼も彼なりに自分を変えようとして安心した。


「早くデパートに戻ろう。このままだと風邪ひいちゃう。くちゅん」


 秋のとても冷たい雨に長時間打たれた僕はくしゃみをしながら言う。陽馬君も寒そうに身体を震わせている。僕達は急いでデパートへ向かった。


 デパートに着くと凛華ちゃんと奏介、それと奏介の妹である金髪蒼眼の美少女の玲奈ちゃんがそこで待ってた。陽馬君は僕の後ろに隠れてついてきている。

 奏介と玲奈ちゃんは僕と陽馬君を見るや否や頭を下げてきた。


「湊お兄ちゃん。陽馬君。馬鹿な兄がごめんなさい」

「すまない。事情を知らなかったんだ」


 陽馬君がポカンとしていた。それもそうだろう。奏介は見た目はヤンキーだが中身はとても優しい奴なのだから。

 この言葉からして多分凛華ちゃんが2人に事情を説明してくれたのだろう。


「ごめんな。これからよろしく」


 奏介は陽馬君に頭を下げながら手を差し出した。陽馬君は少し同様した後、奏介と握手した。

 僕は少し感動した。あれだけ人を嫌っていた陽馬君が握手をしたのだ。しかも見た目ヤンキーの奴と。


「凄いな。ほぼ初対面の人と握手ができたじゃない。しかも、見た目ヤンキー」

「見た目ヤンキーは強調しなくていいだろ!」


 奏介のツッコミを無視して、涙目になりながら僕は陽馬君の頭を撫でた。陽馬君は少し嫌そうな反応をしたが嬉しそうにもしていた。


「それじゃあ、帰るよ。僕達風邪引いちゃうから」

「そうですね。早く帰りましょう」

「陽馬君。ごめんね。馬鹿な兄が」

「馬鹿は言わなくていいだろ」

「無神経って言った方がいいかな?」


 奏介と玲奈ちゃんが喧嘩しているが無視してデパートで傘を買う。正直、雲行きは悪かったが雨が振らないだろうと思い、傘を持ってきていなかったのだ。


「湊お兄ちゃん。お詫びに荷物を兄に持たせて」


 僕達が奏介と玲奈ちゃんの喧嘩を無視して帰ろうとすると玲奈ちゃんがそう言ってきた。


「罪滅ぼしとかなら別にいいよ。元々は僕がちゃんと奏介に伝えてなかったんだから」

「ついでに湊お兄ちゃんの新居で遊びたいから。ね。いいでしょ?」

「そこまで言うなら」


 僕達は奏介達と自宅へ向かった。家に着くと僕と陽馬君は一緒にお風呂に入る事になった。まぁ、陽馬君がお風呂に入りたがらないので、身体が冷えたままだと風邪をひいてしまうと考えた僕が強制的にお風呂に連れて行く事になったんだけど••••••。


「綺麗••••••」


 脱衣所でフード付きパーカーを脱いだ陽馬君の髪を見て僕は思わず言ってしまった。陽馬君は顔を真っ赤にして俯いていた。


「いや。その、ごめん。あの••••••。ポロっとでちゃったって言うか。その••••••。綺麗な髪だよ。もっと自信を持っていいほど綺麗だよ」

「••••••ありがと」

「どういたしまして」


 僕は陽馬君の感謝の言葉を心に刻んで共にお風呂に浸かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ