表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/32

2

 僕の朝は早い。僕は朝5時に起き親父の弁当を作らなければならないからだ。凛華ちゃんと陽馬君の面会に平日に休暇を取ってしまったので日曜日だが親父は振替の休日出勤しなければならなくなったのだ。


 僕が弁当を作り終え、ソファで少し休憩しているとパジャマ姿の凛華ちゃんが部屋から出てきた。時刻的に6時くらいだ。


「おはよう」

「••••••おはようございます」


 まだ緊張しているのか少しぎこちない感じがした。

 それにしても凛華ちゃんは朝早いのか。しっかりしているな。


「朝早いね。日曜日だからまだ寝ててもいいのに。コーヒーでも飲む?」

「いえ、結構です」


 断られてしまった。いや、これは遠慮しているな。家族なんだから遠慮しなくていいのに。


「遠慮しなくていいんだよ」

「••••••それじゃ、頂きます」

「オッケー」


 僕はコーヒーメイカーでコーヒーを作る。それを彼女に渡して隣に座る。


「••••••なんで隣に座るんですか」

「仲良くなりたいなぁって思ったからかな」

「•••そうですか」


 そう言うとコーヒーを口に運んだ。凛華ちゃんは苦かったのか苦渋の表情をする。それを見て僕は笑ってしまった。その反応を見た凛華ちゃんが顔を真っ赤にしながら僕を睨んで来る。


「いや、ごめんごめん。凛華ちゃんって結構可愛い反応するんだね」

「••••••」

「ミルクいる?」

「••••••いる」


 僕は顔を真っ赤にしながらもソファに座る凛華ちゃんを見ながら冷蔵庫から牛乳を取り出す。


「ほい、ミルク」

「••••••ありがとう」

「どういたしまして。そういえば陽馬君は朝大丈夫?」

「大丈夫ですけど、私が起こしに行きます」


 そういえば陽馬君は対人恐怖症だって親父から聞いたな。親しい人じゃないと怯えてしまうのか。早く仲良くならないとな。


「なんで勤さんは私達を拾ってくれたんですか?」

「親父は助け合いと言うか仲間?いや家族だな。そう言う関係や絆を求めてるんだよ」


 一応、親父が彼らを拾った理由は知ってるがまだ言わない事にする。まぁ、言ってる事は本当だけど。


 僕は朝飯の準備の為にキッチンへ向かう。凛華ちゃんは僕に許可を取ってからテレビを見始めた。正直、家族なんだから許可なんていらないんだけどな。


「そろそろ、朝ご飯できるから陽馬君起こしてきてくれない?僕は親父を起こしに行くから」

「分かりました」


 料理ができたので凛華ちゃんに陽馬君を起こしに行ってきてもらう。僕は親父を起こし、朝食を食卓に並べる。親父はスーツに着換え、席に着いた。陽馬君はフード付きのパジャマを着て席に着く。


「「「いただきます」」」

「••••••いだだきます」


 2人共、昨日より声がハキハキしているので少し慣れてきたように見える。凛華ちゃんに関しては早朝会話してから完全に慣れていると思うな。


「そういえば今日買い物に3人で行ってきてほしいんだが、行けるか?」

「いや、買い物は僕だけでいいよ」

「そういう訳には行かないんだ。凛華ちゃんと陽馬君の服や日用品を買わないといけないんだ」


 確かに凛華ちゃんと陽馬君の服や日用品を買わないといけないかもしれない。けれど、陽馬君は対人恐怖症なので人通りが多いところは駄目なんじゃないか?

 そう心配していると凛華ちゃんが口を開く。


「私と手を繋いでいると陽馬は大丈夫だよ」


 凛華ちゃんによると陽馬君は暴力を振られる事が怖いらしい。その為、信頼を寄せている人が近くにいると安心するそうだ。


「それなら大丈夫そうだけど、陽馬君、凛華ちゃんから離れちゃ駄目だからね」


 僕がそう言うと陽馬君は小さく頷いた。まぁ、彼も凛華ちゃんから意図的に離れないと思うけど一応、僕がちゃんと2人の事を見ておこうと思った。


「それじゃあ、お金は湊に渡しとくから。ごちそうさま」


 朝ご飯を食べ終わった親父は僕にお金を預けて自分の会社へ向かった。


 午後になり僕は凛華ちゃんと陽馬君を連れて近くのデパートに向かった。


「何を買うんですか?」

「君達の服と1週間分の食材、あとトイレットペーパーが無くなりそうだったかな?」

「••••••本当に1人で家事してるんですね。ところで勤さんってどんな仕事をしているんてすか?なんか忙しそうですけど」

「ああ見えて会社の社長だよ。まぁ、そのせいで"金目当ての女が寄ってくる。そんな人と本当の家族になれない"って愚痴ってた。それと、勤さんって言われるの親父嫌がると思うよ。お父さんとか親として認識している所を見せてあげた方が喜ぶよ」

「お父さんか••••••」


 凛華ちゃんと雑談をしている内にデパートに着いた。その間、陽馬君は凛華ちゃんにガッチリくっついていてたまにすれ違う人にビビっていた。


 僕達はデパートの服屋へ向かった。


「好きな服買っていいよ。お代金は親父持ちだから遠慮しなくていいよ」


 そう言うと2人は服を物色し始めた。そして、凛華ちゃんが彼女自身の服と陽馬君の服を籠に入れていく。正直、着れればいいと思っている感じでおしゃれとか関係なく彼ら自身が好きと感じた服を籠に入れているように見えた。


「お、お兄ちゃん。選び終わりました」


 遠くで2人を見ていた僕に凛華ちゃんが"お兄ちゃん"と言ってきたのだ。正直、飛び跳ねたいほど嬉しかった。


 僕は笑顔で籠を受け取った。


「分かった。会計してくる」


 僕は会計を済ませて凛華ちゃん達と合流する。そして、彼らをデパートにある広場に服を一時的に持って待ってもらい僕は食料品を買う。


「おまたせ。大丈夫だった?」

「大丈夫です」


 俺が戻ると見知った顔がその場に居た。


「湊じゃないか。買い物か?」

「そうそう。家族が増えたからね」


 僕と会話しているこの金髪イケメンは僕の親友で同級生の高津奏介である。


「そういえばそんな事言ってたな。君達が湊の弟妹かな?」


 そう言うと奏介は凛華ちゃんと陽馬君の顔を覗き込んだ。その瞬間、陽馬君が怯え涙を流しながら外へ逃げるように出ていってしまった。


「奏介!ちょっとこれ持ってて。それと見た目完全に不良になんだからちょっとは周りに気を配って!」


 僕はそう言うと奏介に手に持っていた食料品が入っている袋を手渡し陽馬君を追いかけようとした。


「その••••••すまん」

「僕も不注意だった。凛華ちゃんは奏介と一緒に居てくれ」

「わ、私も」

「凛華ちゃんはその金髪がネコババしないか見といて」


 僕は陽馬君を全力疾走で追いかけた。追いかけていると雨が降ってきたが彼は雨の中でも速さを変えずに走っていた。


 数分経つと彼が息を切らしながら立ち止まった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ