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初めての日常系です。楽しんで読んでいただけると嬉しいです。

 今日は秋の穏やかな土曜日。そして、新しい家族が増える日だ。僕の親父は養子を引き取る為にここ数ヶ月養護施設に行っていた。そして、今日15歳の2人の養子が我が家に来るのだ。その為に2階建ての大きい家に引っ越しをしたり、家具を買ったり準備していた。


「はぁ、落ち着かない••••••。新しい家族ができるんだよな••••••。ヤバイ、めっちゃ緊張してきた」


 僕はそう言いながら洗濯物を取り込み畳む。


 今までは僕と親父の二人暮しだったので家事は僕がして親父は手伝える時に手伝うって感じで生活していた。だが、そんな生活も今日でお終い。あぁ、楽しみだな。


 僕は期待と夢を膨らませながら親父の帰りを待った。


 数時間後、駐車場から車が止まる音がした。新しい家族に早く会いたい衝動を抑えながら僕は玄関へ向かった。


「ただいま」

「おかえり」


 玄関を開けて入って来た親父と新しく家族になる子達を出迎えた。養子として家族に迎えるのは2人らしい。1人はフードを被って顔を隠している少年で、もう1人は長い黒髪で警戒した眼差しを向けてくる少女であった。

 ••••••2人共親父の後ろに隠れていて可愛らしいな。どうやら親父には懐いてるらしいし大丈夫そうだな。


「ようこそ、堺家へ。これからよろしくね。夕ご飯準備できてるから早く上がって」


 僕はそう言い、リビングへ向かう。2人は親父の後ろに隠れているので親父に連れてきてもらう。


「今日は鍋か」

「そうだよ。なるべく親睦を深めようと思ってな。ささ、2人共座って」


 僕は2人を座らせて反対の席に座る。親父は僕の隣に座り2対2の形になった。


 2人は鍋をやった事がないのか食べ方をよく分かっていなかったので先に僕達が食べて、それを見本に2人共鍋を食べ始めた。2人共、余程お腹が空いていたのか一切喋らず物凄い勢いで食べ、あっという間になくなった。喋らなかったのは緊張していたからかもしれないが僕の料理を美味しそうに食べてくれて少し嬉しかった。


「ごちそうさま」

「••••••ごちそうさま」

「••••••ごち••••••さま」


 親父のごちそうさまに釣られて2人がごちそうさまを言う。

 正直可愛いと思った。


「はい、お粗末さまでした」


 食べ終わった皆の食器をシンクに置き、自席に戻る。


「それじゃあ、自己紹介でもやるか。俺からでいいか?俺の名前は勤だ。好きな食べ物は息子の手料理だ!」

「いや、キモい」

「辛辣!?」


 唐突な親父からの告白を綺麗に振った。勿論、親父はシュンとなっている。

 いや、だって『大の大人が好きな食べ物は息子の手料理だ!』って言ってたら普通にキモいじゃん。まぁ、嫌じゃないけど••••••。


「次は僕だな。僕はこれから君達の兄になる湊です。家事全般は僕がやっているから何か不便があったら言ってくれ」


 とりあえず僕は簡単な自己紹介を言う。親父のがインパクトありすぎて記憶に残らないだろうけど普通の自己紹介はこんなもんだろう。


「それじゃあ、次は凛華ちゃん」


 親父は女の子の方を見て言う。


 へぇ、この子凛華って言うのか。


「••••••はい。私の名前は凛華です••••••。••••••これからお世話になります」


 まだ緊張しているのか少しぎこちないな。もう少し気楽になってほしいな。


「何か事前に言っておきたい事とかない?」

「••••••言っておきたい事って?」


 不思議そうな顔をした凛華ちゃんが首を傾げる。


「アレルギーがあるとか、服は自分で洗いたいとか」

「••••••私は特に気にしません」

「そうか?それならいいけど」


 これで凛華ちゃんの自己紹介が終わった。

 次はそっちの男の子の方だな。

 僕は男の子の方を見るすると怯えたように少し彼の身体がビクリとした。いや、完全に怯えているな。


「大丈夫だから、名前言える?」


 僕は彼の隣まで行き、彼より姿勢を低くした。彼は少し距離を取ろうと椅子を動かす。


「••••••陽馬」

「陽馬君か、これからよろしくね」


 陽馬君はこれ以上喋れそうにないので自己紹介をここで終わりにした。この後、部屋の場所などを説明して2人は自分の部屋で親父が寝かしつけた。


「それじゃあ、あの2人について聞きたいんだが」


 僕は親父の面と向き合う。親父は2人の事を全て話した。


 2人は僕の1つ年下の15歳であり、それぞれ問題を抱えていると言う事だった。


 陽馬君はアルビノと言う全身の毛の色が白色になる先天性の遺伝子疾患の病気でらそれを気に食わない親に虐待され、人を信じなくなった少年であり、人と接するのが怖くなる対人恐怖症になってしまっているらしい。なので不登校にもなってしまったそうだ。フードを被っていて髪の毛が見えなかったが真っ白の綺麗な髪があるそうである。

 親父は『こんな綺麗な髪なのに虐待する親が許せない』と言い、陽馬君を口説き落としたらしい。まぁ、これでなんで親父にだけ懐いてるのか理由が分かった。


 次に凛華ちゃんの事だ。凛華ちゃんの親は小さい時に亡くなり、長年共に暮らしていた唯一の親族である祖父が病気で死んでしまって施設に預けられたらしい。しかも、彼女の祖父が死ぬ間際にイジメに会いすぐに彼女の祖父に駆けつけられず怒りに任せてイジメっ子達をボコボコにしたらしい。その結果、周りの人と深い関わりたくないと思ってしまったらしい。しかし、陽馬君には心を許しているため親父は2人を引き取ったそうだ。

 正直聞いてて同情した。唯一の大切な家族の最後にイジメと言うクソみたいな理由で立ち会えなかったのだから。その悲しみは計り知れないだろう。


 これは大変になりそうだな。と思いながら自室に戻り眠りについた。

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