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1学期が終わり僕達は夏休みに突入した。休みだが、僕の朝は早かった。僕が朝ご飯を作るからって理由もあるが、健康的な身体を保つ為にも朝早く起きている。
「手伝います」
僕が朝ご飯を作っていると後ろから凛華に声をかけられた。
「おはよう。ありがとう、それじゃあ、ソーセージ焼いてくれる?」
凛華は夏休みになってから手伝ってくれる事が多くなった。
正直、とても助かっている。彼女は施設でも家事の手伝いをやっていて手際がいいのだ。
「••••••兄貴。ちょっと相談があるんだが」
朝飯を食べ終わり、僕が自室で勉強していると陽馬が周りを気にしながら入ってきた。
なんでそんなにソワソワしてるんだろう。あ、なるほど。理解。
「なんの相談?勉強?••••••あ、もしかして恋愛?いいよ。玲奈ちゃんともっと仲良くなれるようアドバイスしてあげるよ」
「っ!なんで俺が玲奈ちゃんの事知ってるんだよ!?」
「いや〜。見てれば分かるよ」
陽馬は顔を真っ赤にしながら後退る。そして、「コホン」と一旦咳払いをしてから相談の内容を話し始めた。
「••••••凛華の事なんだけど。ちょっといいか?」
「凛華?凛華に何かあったのか?」
「いや••••••。いきなりな『私ってこの家に必要なのかな••••••』って相談されたんだ」
深刻そうな顔で陽馬がそう言う。
なるほど、それはちょっと心配だな。
「自分の無力さでも感じたのかな?それでなんて返したの?」
「『手伝いとかして家に必要な人になればいいんじゃないか?』って返した」
「それで夏休みから家事の手伝いを始めたのか。それで、発言のその理由は?」
「それが、言ってくれなかったんだ。何回聞いてもはぐらかされるし。それに一緒に帰る事が少なくなったんだよ。凛華のクラスに行ってもいないし」
「なるほど、何かいじめにあってるって思っているんだね」
「そう言う事、凛華は施設に来る前はずっといじめの事を家族に隠していたみたいだし、今回も我慢してるんじゃないかって••••••」
そこまで聞いた僕は自室にあるパソコンを開き、1つのアプリを起動した。
「••••••それは?」
「盗聴アプリだよ。浮気発見とかに使われるやつだね。電源が入ってる間はずっと盗聴できるよ」
「と、盗聴!?」
それは驚くだろう。なにせ、知らないうちに録音されているんだから。
「俺のも。もしかして••••••」
「勿論、入れてあるよ。僕のにも入ってる。さて、聞いてみるか」
「俺のにも入ってるのか••••••」
「あ、消そうとしても消えないから」
「えぇ!」
必死に消そうとしている陽馬は僕の言葉を聞いてスマホを落としてしまった。
まぁ、彼の事は一旦置いといて僕は凛華のスマホの録音データを開く。
「凛華にはバレないようにイヤホンつけてね」
僕は片耳だけイヤホンをつけ、もう片方を陽馬に渡す。
「あ、あぁ。分かった」
アプリには沢山の録音データがありこれを全て聞くにはとても時間がかかるだろう。これは、絞る必要があるな。
「一緒に帰らなかった日付は?」
「6月から少しずつ一緒に帰らなくなって、7月から毎日一緒に帰らなかった。だからその辺からいじめにあってるんじゃないか?」
「分かった」
僕は7月の放課後の時間帯の録音データを聞き始めた。
『あ、凛華ちゃん。いいの持ってるじゃん!ちょっと貸してよ』
『嫌ですよ!いつも返してくれないじゃないですか』
『はぁ?私に口答えするの?私はここら辺で有名な高橋カンパニーの社長令嬢よ?』
『そうよ!さっさと夏美さんにそれを渡しなさい!』
『意地でも離さないのね』
『バン』
そこまで聞いて陽馬がデータを止めた。彼の表情は真っ赤になっており、眉間にシワができていた。
「陽馬、もう部屋に戻っていいよ。後は僕が調べておく」
「ありがとう」
そう言うと陽馬は部屋から出て行った。
「さて、凛華を虐めた罪は重いぞ」
僕は怒りを抑えながら、録音データを聞き始めた。




