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5話・妖精さんは街に着いたみたいです

 朝になって目が覚めた。

 もちろん疲れは取れて頭もすっきり、目覚めは最高だったよ!


 いいね、あの薬草。

 アキトが近くにいない時に使うのは危なそうだけど、一緒の時には飲ませてもらおう。


 夕べ残しておいたスープを温めなおしたものが朝食になった。

 さらに味が染み込んでいておいしかったよ。


 それから荷物を片付け、火の始末をしたら街に向かって出発した。


 天気も良く、街道には障害となるものもなく、順調に進むことができた。


 ただ移動するだけだと暇なので、急上昇したり、低空飛行で地面すれすれを飛んでみたりして、遊びながら移動した。

 「落ち着きがないぞ」とか言われたけど、だって暇なんだもん。


「ねー、暇だよー。何か面白いこと無いの?」


「いや、ただ歩いているだけだし、仕方がないだろ」


「えー、じゃあー、これから行く街のこと教えてよ」


「ふむ。今向かっている街は、エルテリア神国のアッセンブラという街だ」


「神国というと、宗教国家なの?」


「いや、特別そういうわけではないね。建国神話に女神さまが登場しているからだという話だよ。女神さまが力を貸して強力な魔物を打ち倒し、荒れた地域に豊穣をもたらしたとかなんとか」


「なんかありがちね」


「神話なんてそんなもんだろ」


 むむぅ、身も蓋もないね。


「女神さまの姿を模した彫像が神殿にあるから、行ってみるといいよ」


「うん、わかった」


「で、アッセンブルの街はエルテリアの中でも西のはずれにある街で、あまり大きくはない」


「お手頃サイズなわけね」


「あ、ああ。大きくないとは言ったけど、『グラナダ大森林』に近い街ということで冒険者も多くて、かなり賑わっていると言えるんだ」


「おー、賑やかなのはいいね。美味しいものが食べられそう」


「ああ、魔獣の肉を使った料理は種類も多くて美味しいよ。そうそう、着いたらすぐに冒険者登録したほうがいいな。登録すればギルドカードが身分証代わりにもなるからな」


「やっぱりそうなるよね」


 冒険者、かぁ。

 異世界転生物の定番だよね。


 私は、その手の本もそこそこ読んでいるから、大体展開も読める。


 街の入り口で驚かれて、ギルドでも驚かれて、新人だからと因縁つけられて、模擬戦して能力の高さにびっくりされて、とかとか。

 マジでそのままテンプレ展開しそうなんだけど、いいのかなぁ。


 とりあえず転生者ということは内緒にするのは、アキトとも相談済み。

 結構私の魔法能力は高そうだけど、どこまで明かしていいんだろう。


 本当は目立ちたくないんだけど、妖精っていうことで目立つのは確定だよね。

 となると、力を示して舐められないようにしたほうがいいんじゃないかな。

 珍しいから捕まえて見世物にしようとか思う人も出てきそうだし。


 よし。

 やりすぎには注意するけど、「か弱い妖精」ではないことがわかるようにしよう。


「お、街が見えてきたぞ」


「あ、ほんとだ」


 遠くに街の外壁が見えてきた。


「大森林が近いからな。魔獣に襲われないように外壁で囲われているんだ」


「ほほう。人間同士の戦争は無いの?」


「ここはある意味辺境だからな。戦争とは縁遠い場所だ。けど別の国では戦争も起こるぞ」


「うー、戦争は嫌だなぁ」


「まぁこの国にいる限り戦争よりも魔獣を気にするべきだな」


「うん、わかったよ」


 そんな話をしている間に、街の門の近くまでたどり着いた。

 入り口には衛兵の人が3人いるね。

 門番だね。


 うーん、どうしよう。

 いきなり話しかけても大丈夫かな。


 とりあえずアキトの後ろに隠れておいて、あとは任せよう。


「妖精じゃねーか!」「どこで拾ってきたんだ!」「なんで裸なんだ!」


 うわ、あっさり見つかったよ! いきなり話しかけられたよ!


「ん? 妖精だから裸に決まってるじゃないか」


 いや、アキト君。

 そこに反応しなくてもいいんじゃないのかな。


「そう言えばそうか」「そうだな妖精だから仕方ないな」「うんうん、妖精さんはやっぱり全裸だよな」


 ええー! 3人とも納得しないでよ。

 ていうか、やっぱりそうゆう認識なの?

 アキトが間違ってるんじゃないの?


 ううう、アキトに対してだけならもう見られまくってるから今更恥ずかしくないけど、ほかの人にまで見られるのは恥ずかしいよ!


「で、どこで見つけてきたんだ」「妖精ってほんとにいたんだな」「妖精さん可愛い♪」


「詳しいことはギルドに報告する。だからここでは勘弁してくれ」


「ま、またねー」


 私はアキトに引っ付いて、その場から逃げるように飛び去った。


 うわー、後ろから視線がビンビン飛んでくるよ。

 さっさと行こう。


 門を抜けて大通りを進んで行った。

 私はアキトの周りをフワフワ飛びながらキョロキョロと周りを眺めている。


 うんうん、ザ・ファンタジーだね。


 ヨーロッパの古い街並みに雰囲気が似ていて、あまり高い建物はないみたい。

 ただ魔法的なものとか、異世界っぽいものも見当たらないのがちょっと寂しい。


 そしてこの街はアキトが言っていたように、大きくはないけど人が多く集まっているというのがわかる。

 通りの脇には屋台などが並んでいて、気軽に飲み物や食事を買うことができる。

 荷物を積んだ荷馬車が何台もすれ違い、門を抜けていく。


「あれは冒険者が手に入れてきた素材を商人が買い付けて、それを別の街に運んでいくんだ。『グラナダ大森林』は素材の宝庫だ。冒険者と商人が持ちつ持たれつで成り立っているのがこの街なんだよ」


「なるほどー」


「冒険者にとっては住みやすい街だよ。ちょっと荒っぽい雰囲気はあるけどな」


「なるほどー」


「俺と一緒にいれば手を出してくるやつはいないはずだ。離れるなよ?」


「うん、わかったー」


「うーん、ほんとに分かってるの?」


 そんなことを話しながらギルドを目指して進んで行った。


 ……でね。

 やっぱり注目されてるぅ!


 通りを歩いている人がチラチラとこちらを見るんだよね。

 まぁ気持ちはわかる。

 今まで行方不明で絶滅危惧種だった妖精が、全裸で飛んでるんだからね。


 うーん、でもどっちの理由でが注目を浴びているんだろ?

 妖精だから?

 全裸だから?

 怖くて聞けないよ!


 とりあえず私は視線を気にしないようにして、アキトについて飛んで行った。


あっさり着いちゃいましたね。

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