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3話・妖精さんは絶滅危惧種みたいです

 ハッ!

 がばっと毛布の中から顔を上げて、キョロキョロとあたりを見回す。

 えーと、夕方くらい? 空が赤くなってる。


「あ、目が覚めた? 夕飯の準備ができたよ」


「ふえ?」


 そっか、お風呂入ってたんだっけ。


 やっぱり寝ちゃったみたいだね。

 目を覚ましたら毛布の中に寝かしつけられてた。

 おぼれてなくて良かったよ。


 ん、いい匂いがする。


「ぐっすり眠ってたよ。体が小さいから薬草が効きすぎたのかも?」


「うん、でもすっごく気持ちよかったよ。また入りたいな」


「そうか? 俺がいる時ならいいけど、一人だとおぼれちゃうから止めときなよ」


「うん。ありがと」


 モソモソと毛布から這い出し、料理の近くに寄って行った。

 肉野菜スープだね。お皿には野菜とお肉が少しだけ盛られている。


 えーと、どうやって食べよう?


「これを使ってみな」


「うん」


 そう言って渡されたのは、一本の串。

 人間から見れば爪楊枝みたいなものだけど、私から見ればぶっとい串。

 細かく切ってもらったお肉を串に突き刺して、口に運んだ。

 お肉は柔らかくて、スープの味も染み込んでいておいしかった。


「おいしー! アキトって料理が上手なんだね!」


「そうか? いつも自分の分は自分で作ってるからな。美味しいものを食べないと力が出ないし、結局自炊のほうが安上がりだしな」


「ふーん、料理のできる男っていいね♪」


「あ、あはは。ありがとな」


 私はご機嫌でお肉と野菜を頬張った。

 スープの汁は程よい塩胡椒加減と、野菜のうまみが溶け込んでいて美味しい。


 異世界ものだと料理が未発達でひどいものが多いけど、この世界は調味料もちゃんと揃っていて大丈夫そうだ。


 妖精サイズの私には、自分で料理なんてまず無理だからね。

 お店とかで美味しいものが食べられなかったら、厳しいことになるところだったよ。

 うん、良かった良かった。


「ごちそうさま! ほんと美味しかったよ!」


「喜んでもらって何よりだ。さて、今夜はここで野営して明日の朝にはここを発つつもりだ。問題がなければ明日の昼過ぎにはアッセンブルの街に着くはずだけど、いいか?」


「うん、一緒について行ってもいいんだよね?」


「ああ、もちろんだ。街についた後どうするかは、それから考えよう」


「うん、ありがとう。アキトに出会ってなかったら、どうなっていたかわからないよ」


「俺も妖精に出会うなんていう珍しい経験ができたし、このままお別れするのは勿体ないと思ったよ」


「妖精ってそんなに珍しいの?」


「当たり前だろ。ミサキみたいな妖精が人間の前から姿を消してから、100年近く経ってるよ」


「え?」


「詳しいことはわからないけど、ある日突然妖精たちがいなくなったんだ。おそらく妖精の国に帰ったんだろうと言われているけど、なぜ帰ったのかは誰も知らないんだ」


「ええ?」


「それから100年くらい経っているけど、妖精が帰ってきたという話は聞かない。ごくまれに妖精の姿を見かけたという話はあるけど、まともに会話できた者はいないから、去っていった理由は不明のままだ」


「えええ?」


「ミサキが街に行ったら大騒ぎになるな、きっと。俺も楽しみだ。街に行ったらその辺の話を聞かせてくれよ♪」


「ふえええー!」


 そんなの知らないよ!

 私、妖精初心者だよ!

 こっちの世界の妖精のことなんて何もわからないよ!


 これはやっぱりお約束のあれね!


「わ、私、記憶喪失だから! 何も知らないよ!」


 ふふん! これで対処は完璧だわ!


「んん? ミサキ、さっき自分こと色々と言ってたじゃないか。コーコーニネンセーとか、マンガアニメゲームとか、よくわからないものを」


「うげ! え、えーと記憶が混乱していて、うまく思い出せないの! だからわからないの!」


「くくく。まぁ、言いたくないならべつに構わないけどな。じゃぁ街に行ったら名前以外は覚えていない、記憶喪失ということにしておこうか」


「う、うん、そういうことにしておいて。お願い」


 嘘だっていうのバレバレだけど、納得してくれたみたい。

 融通の利く人で良かったよ。


「ねぇ、ほかの妖精ってどんな感じなの?」


「どんな感じと言われてもなー、俺も会ったことはないし。一般的な知識としては、いたずら好きで神出鬼没。大事なものを隠したり、人の秘密をばらしたり、こっそり後ろから近づいて大声を出したり、ちょっと迷惑な種族らしい」


「うーん、迷惑ね」


「ああ。けど、気は良くてかわいらしくて本気で憎んだりはできない、子供みたいな感じだそうだ」


「そうなの?」


「そうだ。隠されたものも後でちゃんと見つかるし、それも実際に必要になるタイミングとかで。秘密をばらされるのは悪人の隠し事が多く、困るのは悪い奴だけだ。大きな声で脅かされるのは、まぁ、ご愛嬌ということかな」


「いたずら好きだけど、嫌われてはいないんだね」


 良かった。

 人前に出ただけで私まで嫌われたりするのは嫌だもん。


 でも、妖精さんたち、どこ行っちゃったんだろね?


「それと、ギルドには登録はしておいたほうがいいな」


「ギルド? 冒険者とかの?」


「そうだ。身分証を得るのには一番手っ取り早いからな。冒険者っていうのは、街中での安全な雑用みたいな依頼から、魔獣退治のような危険な依頼まで何でもこなす、いわゆる何でも屋だ」


「私にできるかな」


「ん? 妖精なら魔法が使えるだろ? 身体的な能力は低いけど、魔法との親和性はとても高くて、場合によってはエルフ以上だとも言われているぞ」


「魔法!」


 そうだ、妖精なら魔法が使えるはずだよ!

 ファンタジーといえば魔法だよ!


 魔法、使ってみたい!


そうそう、妖精さんの身長は25cmくらいです。

日本ならアゾンのドール服が合うかもしれません。

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