プロローグ・トラック事故は全裸でした
良くあるトラック転生です。
学校帰りにみっちゃんとアニメショップに行ったのよ。
お気に入りの乙女ゲーのグッズの発売日が今日ということで、ホームルームが終わったら速攻で行ったの。
と言っても予約してたからね、そんなに慌てなくても買い逃すことなんて無いんだけど、早く手に入れて堪能したかったのよ。
そんなわけで特に問題もなく、お目当てのグッズを手に入れホクホク顔で帰ってきたの。
みっちゃんと別れた後、横断歩道で信号待ちをしていたら大型トラックがキーッというブレーキ音を響かせながら、交差点に突っ込んできたの。
私は焦りながらも、信号待ちをしていたほかの人達と一緒に歩道の奥のほうへ逃げ込んだの。
「助かった」と思った瞬間、グッズを入れた袋が無いことに気が付いた。
信号のすぐそばに落ちてる!
反射的にグッズの入った袋めがけて走ったよ。
よし! とった!
でもその袋を手に取った時には、目の前にトラックが迫っていたのだ。
うわー。
私は袋をかばうように背中に回すことしかできなかった。
トラックはものすごいスピードで、目の前ギリギリを走り抜けていく。
なんと! 当たらなかったのよ!
ホッとしかけた瞬間、グンッと体が引っ張られるのを感じた。
トラックの一番後ろに何かフックのようなものが付いていたみたいで、それが目の前を通り過ぎる時に制服を引っ掛けてしまったらしい。
私の体が一気に引っ張られ宙を舞った。
ブチブチッ! ビリビリッ!
という、何かが引き裂かれる音とともに。
そして。
ゴキッ!
嫌な音とともに頭から落ちて、首が変な方向に曲がって、アスファルトの上に横たわる私。
なぜか痛みを全く感じていない私は、「ああ、死んじゃうんだな」って、他人事のように思った。
別に未練なんてないし……。
あ! せっかく買った静様のグッズ!
初回特典の添い寝ボイスCDも聴いてないよ!
悔しい!
やっぱ未練あるよ!
そうだ! 火葬するときに一緒に棺に入れてくれないかな?
そうすればあの世で見ることができるかもしれないじゃん!
いやいやいや、やっぱ死にたくないよ!
ピローン♪
パシャッ!
周りから写メを撮る音が聞こえる。
ひどいよね、私の死体を撮ってるんだよ。
「スゲー、なんで裸なんだ?」
「いきなり裸になったよね?」
「こんなことあるんだな!」
ん? 裸? 何を言ってるの?
ふと、道路のわきにある鏡が目に入った。
そこには路上に倒れている私の姿が映っている。
なぜか、着ていたはずの制服の破片が周りに散らばっていて、全裸で横たわる私が。
ええぇ~。
ピローン♪
パシャッ!
ピローン♪
パシャッ!
ピローン♪
パシャッ!
めちゃくちゃ撮られてる!?
「顔は平凡だよな」
「そうか? 意外とかわいいと思うけど」
「おっぱいはでかくないよな」
「いや、小さすぎず大きすぎず、ベストサイズじゃないか!」
「下の毛、生えてないね。ツルツルでかわいい♪」
「ああ、足を広げているせいで丸見えだな。これはきっと未使用品に違いないw」
「救急車来る前にもっとアップで撮っておこう♪」
「俺なんて動画で撮っちゃうもんね♪ 顔から胸から大事なとこまでぜ~んぶ、舐めるようにじっくりとな♪」
いやぁーーーー! やめて! 見ないでっ! 撮らないでーーーー!
ピローン♪
パシャッ!
どんどん人が集まってきている感じがする。
いやー! こんな、全裸で死ぬなんて、いやー!
そしてそのまま視界がぼやけて暗くなり、何も見えなくなって、何も考えられなくなったのでした。
うん、ちょっとだけ変わったトラック転生でした。
よくあることだよね。