雨女
私は雨女らしい。
幼稚園や小学校の運動会や遠足は、ことごとく雨に降られて、晴天だった記憶がない。
卒業式や入学式も雨に降られて、残っている写真は、屋内で撮影されたものばかりだ。
最悪なのが高校のスキー合宿だった。
例年になく暖冬で、スキー場に着いても、雪でなく雨が降った。
スキー場にある民宿の女将が「こんなことは初めて」という言葉がまだ頭に残っている。
学校の誰かと一緒に行くのなら、「クラスメイトの誰かが雨男か雨女」と押しつけられたが、傷心の一人旅に行った先でも雨が降ったことから「やはり私か…」と諦めの心境だった。
そんな人生だったが、なにがどう転んだのか、今は農業アドバイザーみたいな仕事をしている。
どこかに出掛けると雨になるなら、雨になって喜ばれる仕事をしようと思ったことからの起業だ。
簡単なことで、日照りに困っている地域が有れば、そこに旅行に行くだけで、私の実力が発揮できた。
私が雨を呼び、雨は恵みを呼んだ。ただそれだけだった。
口コミから私のところに依頼が来て、暇にならない程度に仕事が入ってくる。
先日は海外の砂漠地域に行って、三十年ぶりの雨とやらが降った。
その雨がきっかけに、砂漠が緑化できる恵みになるだろう…
ただ、今来ている依頼はどうしようか考えている。
行先は「南極」だ。
南極でも、私は雨を降らせることはできるのだろうか?
その雨を、緑の恵みのきっかけにできるのだろうか?
興味は尽きないが、下手して南極の氷がすべて溶けることにも成りかねない。
私は南極に行くべきなんだろうか…