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番外編 コロナが明けたよ-in 映画館-

東京アラート発動状態の都庁がRPGのラスダンっぽい禍々しいイルミネーションを放とうとも、緊急事態宣言が終了したのは紛れもない事実なのであって、つまりこっから先が娯楽産業業界の、特に軒並み公開が延期されて配給状態ガタガタな映画界にとって、肝中の肝の時期がやってきたわけです。


そういうわけで、金曜土曜の二日間連続で映画館に足を運んだわけですが、いやー空いてる。めっちゃ空いてる。金曜日はともかく、土曜日ですら全く人がいない。しかも上野ですよ? 外出している人は結構目についたのに、映画館に足を踏み入れるともうガラガラ。パンフレットコーナーの新作映画パンフレットの数の乏しさ。映画館であって映画館でないような空気感。ある意味貴重な風景を目に出来ました。


ほとんど貸し切り状態で何を観てきたかというと、ジム・ジャームッシュの『デット・ドント・ダイ』。正直ジャームッシュの映画はそんなに好きではないんだけど、この映画を観て確信した。やっぱ俺合わんわこの監督。そもそも「デッドマン」が公開された時、同じ年に公開された同じ西部劇映画の「クイック&デッド」の方が断然好みだもん。そんな私と合うわけがないじゃん。好みや性癖というのは、そう易々と変わらんものなのだなぁと、映画館を出てひとりごちる。


内容的には完全にゾンビ・コメディ。でも「ゾンビランド」ほどコメディに振り切っていなくて、どちらかというと自己言及的なメタフィクション構造を取ってる。それでいてカメラワークは完全にコントなのよな。喋り倒すキャラ同士を一つのフレームの中に収める。よって物凄くコント感が強い。映画を観に来たはずが、ちょっと肩透かし食らった感じ。


でもって主演のアダム・ドライバー。彼だけがこの映画唯一の救いというか、とても分かりやすい面白さを提供してくれる佇まいやった。なんやあの筋肉量。服がもうパツパツやん。それだけでも見てて面白いのに、もうすっかり十八番になったスター・ウォーズネタをぶっこんで笑いを取ってくるから、妙に微笑ましい気分で観る事ができる。これがアダム・ドライバーじゃなくて別の俳優さんだったら、俺もう観てられなかったと思うわ。


その次に最近元気のないリュック・ベッソンの新作が公開されていたからチェックしようとしたんだけど、パス。


うーん……なんていうかね。巷で言われているように「ニキータの焼き直しじゃん」って印象より、今どきKGBとCIAのスパイ合戦なんて、そんなの誰が観るの?って感じ。ボーン・シリーズやキングスマン、ミッション・インポッシブル・シリーズは、むしろ「対ソ連」という構図を鼻から捨てていたからこそ新しいスパイ映画として出迎えられたのに、2020年のいまになってソ連かよと。なんかどっちらけですわ。でも、たぶん監督の年代的に、それが監督自身にとってのスパイ映画の原風景なんだろなぁ。冷戦時代の独特の空気感が肌に沁み込んでいて、それを忘れることが出来ないんでしょう。とても分かり易そうな映画だからレビューしやすいとは思うんだけど、どうしよう、観ようかな。うーん、でも今、配給状態が整っていないのもあって、往年の名作たちがパッケージの世界からスクリーンの世界へ進撃してきてる最中だからなぁ。


私みたいに昭和の最後期~平成の最初期あたりに生まれた人達にとって、往年の名作、それも「金字塔」と銘打たれている映画を映画館で観る事は、とても特別な意味合いを持っている。「あの映画を映画館で観た」という、ある種の自慢になること以上に、その映画が持つ本来のクオリティを一ミリも損なうことなく、映画館という「正式な場」で鑑賞することに、なんとも言えぬ幸福感と達成感を覚える。パソコンやテレビといった日常空間に溶け込んだデバイスを通じて観る映画と、映画館というある種の「閉ざされた異界」で観る映画とでは、感じるものも違ってくる。少なくとも俺はそう思う。


ちゅーわけで、『ブレード・ランナー』と『AKIRA』を、生まれて初めて映画館で鑑賞したわけですが、もうね、ヤバイ(語彙力消滅)。テレビやパソコンの画面で何度も観てきた両作品だけど、印象が全然違う。特にブレラン。やっぱリドリー・スコットの本領って「黒いモノの撮影」にこそ出ていると思うんですが、ブレランの黒はすさまじいです。黒いモノを黒いモノとしてカッコよく撮ってる。銃の黒、レインコートの黒、コンクリートの黒、タイレル社屋の黒、髪色の黒、夜空の黒。それぞれ確かに黒なんだけど、微妙に光沢感や質感が違っていて……「エイリアン」や「ブラック・レイン」や「グラディーエーター」の黒も好きだけど、ことブレード・ランナーの黒の表現は抜きんでていると感じますな。


お話は、まぁ今更言う事でもないけど、ぶっちゃけた話フツーなんですよね。造られた生命・レプリカントの悲劇的な境遇であるとか、人とレプリカントの情愛関係の切なさとか、神の被造物である人間と人間の被造物であるレプリカントでも「向こう側」に辿り着いた時に初めて心が通う描写とか。なんというか改めて話運びはフツーそのもの。やっぱりこの映画のキモは撮影にある。さっき言った黒の表現もそうだけど、全く物語の進展に貢献しないガジェットが山ほど出てくるのも楽しい。映画で世界観を作ることは、手間を惜しまず、一見無駄に見える小物を作るのに等しいとするリドリーの映画哲学のようなものが垣間見えてくるようです。


んで、『AKIRA』ですわ。バブルだからこそたんまり金がかけられたってのが、スクリーンだとよく分かる。三コマ打ちとか使ってないでしょこれ。ほとんど二コマ打ちでやってるような気がするなー。だからなのか、キャラクターのキメ絵(止め絵)がほとんどないし、キャラ動作に関して印象的なシーンがあるかというとピンとこない。その代わり、流体の表現がえげつない。煙、雲、倒壊するビル、流血、膨張する肉体。「流れるモノ・変形するモノ」に対するフェティシズムがめちゃめちゃ溢れていて、こりゃあアニメーター冥利に尽きる作品ですな。まぁこっちも話はフツー。ていうか「幻魔大戦」的な、終末をオーラ(笑)で描いた作品に連なると思うけど、映像表現は比べるのも失礼なくらいこっちの方が上でしょう。


そういうわけで、まぁコロナ明け一発目というわけで、こんなユルい感じの雑談で締めさせていただこうと思います。次からはちゃんと映画レビューしますよー。

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