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番外編 涼宮ハルヒの消失――in 新宿

ハルヒ、まだまだ戦えるっしょこれ。

なんか季節感ある映画やってないかなーと漁っていたら、たまたま新宿にある「EJアニメシアター」で上映中との情報をゲット。そーいえばTVアニメ版は1期も2期も観てたけど、ついぞ劇場版は観てなかったなと思い返し、適当に昼飯を済ませて直行。


思い返すと『涼宮ハルヒの憂鬱』の第2期が放送された当時は、たしか放送告知もなんもなしに、1期の内容をそのまま再放送しますというような体で始まった記憶がある。(記憶違いだったらすみません)


ところが、話が進んでいく毎に「おや?」となり、当時大学生だった私は友人やネットの住人らから情報を搔き集め、「これ、1期をそのまま垂れ流しているんじゃなくて、実はしれっと2期やってんじゃないのか疑惑」を立ち上げ、そしたらあの悪名(?)高いエンドレスエイトが始まったという……今思い返すとかなり貴重な体験が出来たんですな。


さて、十年代が終わりを告げようとしているこの時期に、ゼロ年代の代表的アニメコンテンツを今さら映画館で鑑賞するという、この壮絶な時代錯誤感に思わず苦笑してしまう自分がいたことは認めましょう。


つまりどういうことか。鑑賞前の私は舐め切っていたんですな。『涼宮ハルヒ』の熱狂的ファンでもなけりゃあ、京アニの信者でもない。どこにでもいる普通のサブカル人間である私は、本当にただの「暇つぶし」として、この映画を消化しようとしていたわけです。


ところが、そんな私の驕り昂った消費者根性は、映画が始まってすぐねじ伏せられることになります。


このアニメ、思っていた以上にかなり「動き」ます。めちゃめちゃ動きます。凄まじい動きを、アニメーションを見せつけてくれます。


これだけ話すと、観たことがない方は激しいアクション・シーンでもあるのかと勘違いしそうなものですが、先に言っときますとアクションは皆無です。ド派手な、それこそ人間離れした超人的躍動感に満ちたアクションは、この映画にはありません。


私が凄いと思ったのは、この映画におけるアクションが、アクションという言葉の根底に横たわっている普遍的な映像的意味を……すなわち、キャラクターの何気ない仕草、我々がつい無意識にやってしまう習慣に沁みついた仕草を極めて細やかに描いている点に尽きるのです。


昇降口に落とした上履きをつま先でひっくり返して手を使わずに履くという、かったるそうな動き。弁当箱の包みを広げる際の手つき。机の上に通学用鞄を置いた際に鞄にかかる重力感。パーティキャップを被る際に顎にゴム紐をかける動作。椅子を引いて座る際の体重の掛け方。


とにかくありとあらゆる日常的な動きを、メインキャラ・モブキャラに関係なく、丁寧に丁寧に細やかに細やかに描いていくので、アニメーション的快楽が半端ないです。二時間四十分の上映時間があっという間。終始心地よいアクションにうっとりしてしまう始末。話の内容はともかくとして、もうこの映像の静的インパクトたるや凄まじいものがあります。


ガチでエグイです。エグイほど動きますこの映画。作品の上っ面だけを見て「全然激しいアクションがないじゃない」と口にする人は、それはもう、その人はアニメ好きでもなんでもない。もしあなたがアニメ好きを自称する方なのだとしたら、「日常における非日常」を描くこの作品のキモとも言うべき「ごく当たり前の日常的な動きをメイン・サブに関係なく忠実に再現する」という、ほとんど狂気的とも言える野蛮な挑戦心に満ちた映像的事実に感動し、そしてそれらの描写をしている際にはほとんど編集を挟もうとせず、極力ワンカットで映そうとする製作陣の勇気に惚れ惚れとしてしかるべきです。


この日常における仕草の徹底した描き方は、押井守の『人狼』を彷彿とさせる出来です。京都アニメーションって、これほどまでに凄いスタジオだったけかなぁと、浅学な私は改めて思い知らされました。


アニメーション。その一点においては、この映画はまだ最先端です。全然戦える、いや、むしろ勝っちゃうんじゃないかというレベルだと思います。


年の瀬にいい映画を鑑賞しました。もし東京近辺にお住まいの方で、まだ『涼宮ハルヒの消失』を観たことがないというアニメファンの方は……多分そういう方は希少種だと思うのですが、この際思い切って鑑賞して、普通種になりましょう。1/9までしかやってないぞー!


ではでは。

ちなみに、エンドクレジットが流れた時、周りの観客のほとんどが啜り泣いていました。

そりゃそうだ。私も木下監督や池田さんの名前を観た時は、ずしんと心にくるものがありましたよ。

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