襲来
フィアラの魔法が暴発するのはなぜなのかロウに聞いたことがあったが、言葉を濁らされて聞くことができなかった。なんで魔法についてはよく教えてくれなかったのか。あの時まではよくわからなかったが、今は分かるような気がしていた。
書斎で見つけた日記。おそらく自分の事を記していた内容。目覚めない何か。
「ロウお兄ちゃんはきっと…あたしに『しっと』してるんだ!あたしには才能が眠ってて、未だに目覚めないから心底呆れて…あれ?『しっと』ってなんだっけ?」
首を傾げて疑問符を浮かべる。いやそうじゃないだろう…その時だった。
『ギャハハハハハ!!今のチンケな魔法は小娘、テメェかぁ?』
声のした方を振り返る。大岩の上に人型の生物が座っていた。筋肉に覆われた屈強な肉体、性格の悪そうな顔、頭にはヤギの角のようなものが生えている。
「あなた何?女の子の前でパンツ一丁だと通報されて捕まっちゃうよ?服着た方がいいよ」
『この悪魔族のオレサマを前に大した余裕だなぁ…?面白ぇ!』
自称悪魔が立ち上がり、背中に羽根を生やす。そのまま浮かび上がった。
『しこたま魔力が込められた魔法だったからどんなもんかと思ったが…いいぜぇ?もう一度魔法使ってみろよ?』
指でちょいちょいと誘ってくる。
〈もし悪魔、魔族と出会ったら、死んだ気になって逃げろ〉
ロウの言った事であり、悪魔や魔族の話題になるたびに必ずと言っていいほどあげられた言葉だ。
魔族と渡り合うには相当な戦力が必要だ。ロウが仲間たちと共に本気で戦っても勝てるかどうかわからないという。以前戦ったことがあるらしいが、運良く生き残ることが出来たとのことだ。
その時に、膝に魔矢を受けてしまい、療養するということで現在に至るという。
義兄にそこまで言わしめている悪魔族が目の前にいるのだが、どうにもしっくりこない。
「弱そうなんだけど、大丈夫?死んじゃわない?」
フィアラから見ればどうにも恐れを抱くほど驚異的には見えないのだ。あれほど危険と言われた存在だ。逃げなければいけないのは頭でわかってるが…そこまで危険とは思えなかった。
『ククッ…心配は無用だぜぇ?やれるものならやってみな?』
「なら、遠慮はしないよっ!!」
ありったけの魔力を込める。比較的成功率の高い炎の魔法をイメージする。炎の玉を余裕ぶっこいた自称悪魔に落とす!
「くらえっ!これがあたしのファイアボール!!…っ!!」
ズキッと頭が痛くなる。この現象によって込めた魔力がおかしくなる。集中も途切れて制御ができなくなる。結果、魔法が暴走する。
生まれたのは巨大な火の玉。空中に現れたそれは崩れながら重力に従って落下する。炎の塊が悪魔に向かって降り注ぐ!しかし悪魔は手をかざすと透明の壁のようなものを作り出し、塊を防いだ。
『ヒャハッ!ギャハハハハ!!なんでぇ!ただの下手くそだったか!!もったいねえ、魔力量が泣いてるぜぇ!?』
悪魔があざ笑う。フィアラは悔しそうに唇を噛む。次の瞬間、悪魔の姿が消えたと思うと…ドッ!と腹部に衝撃を感じる。
「ガッ…!?」
身体が浮かび上がりそのまま飛ばされてしまう。ゴロゴロと地面を転がり、吐血してしまった。




