館
コロナと歩いてそんなにしないうちに、そこにたどり着いた。
館だ。大きめの洋館と言うべきだろうか。マンションのように窓の数も多く、部屋数も多そうだ。しかし所々ツタに覆われ、壁には所々ヒビが入っており、おおよそ人が住むところではなくなっているような様相だった。
「ここは城下町に暮らすある貴族が所有している館なの。別荘として購入したらしいのだけど、いざ来てみるとこの通りツタだったりボロボロだったり。修理しようとしたけど、業者から苦言。『何者かが住み着いてて修理が出来ない。危険だ』そこでギルドに調査の依頼が出されて何人か受けたのだけど、どういうわけか達成できないって感じになってるのよね」
コロナが淡々と話す。
「どうもこの館…出るらしいのよ」
ニヤリと笑いながらコロナはフィアラの顔を見る。
フィアラは館を見上げた。
「それで、コロナちゃんも怖くて仲間を連れてこようとしてたの?」
「…コロナちゃんて、なんか新鮮ね…そうじゃなくて!1人では入れないようだから、連れが必要だったの」
コロナは玄関を指差す。指先にあるのは離れたところにある二つのボタン。コロナが近づき、片方を押すが変化はない。もう片方を押しても反応は無いようだった。
「そっち側、押してくれる?」
言われるがままに反対のボタンを押す。すると、ギギギギと音を立てて、玄関の扉が開いた。
「やっぱり同時に押すものだったのね!私の考えが合ってて良かったわ!」
コロナは嬉しそうに手を合わせた。
一方、フィアラは難しそうな顔をして館を見上げていた。
「協力してくれてありがとう。フィアラにお願いしたかったのはここまでで、あとは私が調査してくるからここにいてもいいんだけど、どうする?」
コロナが顔を覗き込んでくるが、無視して館の周りを見渡す。曇り空だった空は真っ黒な暗雲を立ち込めさせ、すぐにも雨が降りそうだ。周囲の木々からもギャーギャーと鳥の鳴き声が響き渡り、不気味な印象を受けていた。そしてなによりもたった今開いた扉の中…
何も見えないのだ。
開け放たれた扉はひとりでに閉まることなく口を開けている。ドアを開ければそこに光は入り込むはずだけど、フィアラには光は内部の闇に飲み込まれてるように思えた。
「ここ、入らない方がいいかも」
フィアラはコロナの顔を見ずに話す。
「…理由を聞こうかしら?」
真剣な様子のフィアラを見てコロナは手の甲を頬に当てる。目線はフィアラから離さずじっと見つめる。
「これと言った理由はないよ。けど先が見えないし、不気味。なんとなく、そんな感じがする」
「…つまり勘ってこと?そんな理由じゃ調査は中止には…」
「わかってるよ。勘なんかじゃ理由にならないって。でもあたしもこんな気持ちになったの初めてなんだ。確証はないけど、怖い。中に入って何もなければいいんだけど…せめて灯りがつけば…」
そこまで話すと、はぁ…とため息が聞こえた。コロナが心配いらないというように肩をすくめている。
「あなたは知らないかもしれないけど、私がいるから灯りは平気よ。こんな風に灯りをつけられるから」
コロナが魔力を込めて手を挙げる。白い魔力だ。白い魔力が館の中に入り、天井近くで明るく輝くと、館の内部を光で埋め尽くした。
あまりの光量に思わず目が眩む。次に目を開けた時には、もう館には電気が灯されていた。




