方向転換
手を後ろに回して組み、鼻歌を歌いながら楽しそうに少女は歩く。長い髪とスカートを横風が揺らしているのも相まって、身体中がリズムを取ってるかのようだ。
その少し後ろをフィアラは歩く。今度は何してくれるのか。前を歩く少女の意図を見極めるために一挙一動よく見る。と、顔だけこちらを見てコロナが口を開いた。
「隣歩けばいいのに…」
ぷくっと頬を膨らませて不満そうだ。
フィアラに身体を向けて後ろ向きで歩き始める。
「心配しなくても、もういきなり攻撃とかしないわよ。…信じてほしいな」
急に泣きそうな顔を見せるコロナにフィアラはドキッとする。このまま泣かれても困るからどうしようかとオドオドする。
「でもそうよね…私、あなたに酷いことしちゃったし、酷いこと言っちゃったし…もう許してなんてくれないよね…グスッ…」
とうとう涙まで流して囃し立て、顔を手で覆ってうずくまってしまう。フィアラは弱いものいじめをしたような気持ちになってしまい、もういいやと折れることにした。
「ごめん、ごめんって。もういいから。許すからもう泣かないで」
「…ほんと…?」
「うんホントだよ。だから顔あげ…」
「やったぁ、これで仲直りね!」
手を差し伸べようとして止まる。泣いていたと思ったらとても良い笑顔で立ち上がったからだ。
「…今の…うそだったの?」
「嘘じゃないわ。演技よ!ふふっ、上手かった?」
微笑みながら上目遣いで聞いてくるコロナに、はぁぁ…とため息をつく。
「そういうことしてると嫌われるよ?」
「うん、気をつけるわね!」
「もういいや…」
コロナをおいて歩き始めるフィアラ。追いかけるように長髪が隣に並ぶ。楽しそうに笑いながらコロナはフィアラの顔を覗き込んでいた。
なんとか無視して歩いていると、また分かれ道があった。看板には片方の道に対して西大陸へと書かれている。もう片方には何も示されていないが、特に何もないのだろう。森の中に続いていた。
「こっちだね…ん?」
分かれ道を進もうとすると、道の先に人の集団が見えた。周囲を見渡して何やら探しているようだ。
「あれは…!別の道に行ってやり過ごしましょう。こっちに気づくかもしれないから少し急ぎましょ」
真剣な顔を見せてコロナはもう一つの道の方へ進む。振り返ってフィアラに手招きをした。
フィアラはついていくことにする。
コロナに追いついて一緒に歩く。
「あれは何なの?」
「あれは勇者教の戦士よ。あなたが手配されてるのはあの宗教が中心になってあなたを捕まえようと躍起になってるっていう話よ。西へ向かってるのを知っていて、ここで張っていたんじゃないかしら?」
勇者教…スターティアにある宗教もそんな名前だったような気がする。
「この2、3日で捕まえようっていう噂もあって、西の方を封鎖する話もあるから、今は西に渡るのやめた方がよさそうよ…そういえば、あなた何で追われてるの?反宗教活動でもした?」
「そ、それは…」
「まあいいわ。この先に館があるの。そこに行きましょう…ついでだから、私に付き合ってくれるとすごく助かるわ…無理強いはしないけど」
コロナが先行し、道を進んでいく。フィアラはそれについていく。空は曇り空になっていた。




