まさかの再会
「どう?まだ悪いことしてない?あれからそんなに経ってないから、何かしてたらそれはそれでびっくりだけど」
楽しそうに笑いながら聞いてくる少女。身じろぎしながらもフィアラは避けて道を通ろうとする。
「あの、ごめん、先を急ぎたいから通して」
少し強引に押し切り、道を歩くフィアラ。少女はぽかーんと動きを止めるがすぐに追いかける。
「ねえ、ちょっと待って!」
声をかけつつ少女はフィアラの手を掴む。
「もしかして私のこと、分からない?」
その言葉にフィアラは足を止めて少女を振り返る。
眠そうな表情から微笑みは消え、かわりに不安な様子に変わっている。フィアラはもう一度少女を見る。長髪だけは嫌な思い出がある。しかし共通点はそこだけで他の所はまったく覚えがない。姉の髪も長かったはずなのでよくある長さなんだろうと思い込んでいた。
つまり、覚えはなかった。
「どこかで会ったっけ?」
本当に分からなそうなフィアラに、少女は頭を抑えて息を吐く。
「はぁ…まさかとは思ったけど本当に分からないのね。まぁ、前会った時はこの格好じゃなかったし、無理もないかな…」
スカートを広げて自分を見下ろす少女。その姿にフィアラは少し申し訳ない気持ちを感じた。
「なんか、ごめん。でも、キミみたいな可愛い人見たことなくて…」
フィアラの言葉に、きょとんとする少女。
「…面と向かって言われると、照れるわね…」
言いながら少女はフィアラとの距離を広げる。スカートを畳みながらしゃがみ、荷物の中から布を取り出すと顎に付けて立ち上がってフィアラに向き合う。
「これで分かるかしら?」
どこからともなく槍を出現させて構える。その姿はフィアラの嫌な思い出と一致していた。
「っ!!」
警戒。少女を睨みつけて剣に手を掛ける。すぐに逃げられるように目線だけで周りを見渡す。少女の動きを見落とさないように集中してーー
「いやいやそこまでする気はないから安心して」
少女がそう言いながらパッと手を離し覆面を外す。槍は地に落ちずに霧散し姿を消した。覆面を荷物にしまうとスカートを持ち上げてみせて微笑む。
「こんな格好じゃまともに戦えるわけないでしょ?」
「………」
「…この様子だと信用してないわね。でも無理はないか」
スカートを離し、肩をすくめる。
「私はコロナ。コロナ=レティクル。色々なところを旅しているの。あなたは?」
「…フィアラ」
フィアラは答えるべきかどうか迷ったが、名乗られたから名乗り返すことにしたのだった。
「フィアラ…か。ふふ、可愛い名前ね」
はにかんだ笑顔を見せてクルッと回る少女ことコロナ。いきなり可愛いと言われ、フィアラは少し照れるのだった。
「ね、少し歩きましょうよ。あなたの行き先は…こっち?」
「…そうだけど…でもキミは向こうから来たよね?」
「ちょっとした用事で街に行こうと思ってただけだから平気よ…ふふ、なんならあなたでもいいし」
「どういうこと?」
「1人じゃどうにもならないものがあって、手伝ってくれそうな人を探そうと思ってたのよ。良かったら来てくれる?…何にせよ、少し歩きましょう」
歩き出したコロナに着いて、少し距離をとって歩くフィアラだった。




