旅の行商人ー1ー
「あなたは…?」
「それに答える前に、こいつを飲んでくれるかな?」
男は用意していたのか陶器の器を差し出してくる。中には水のようなものが入っているようだった。
「これを飲めばもっと体が楽になると思うから」
体を起こし、言われるがままに器の水を飲む。
「っ!?うう…にがぁ…っ!」
「ほう…」
そのまま飲み干すと顔を歪めて舌を出した。
「飲んだけど…なにこれ?」
「毒消し草を煎じたものさ。キミの身体には毒が回ってたようだから、傷の手当てと解毒薬の準備をしておいたのさ」
周囲をよく見ると薬を作るための道具だろうか、色々な物が転がっている。後片付けもせずに看ていてくれたのだろう。
「ありがとう」
「礼には及ばないよ。久しぶりの旅人さんだ。きっと良い話が出るだろうさ…そうそう、自己紹介がまだだったね。私はしがない旅の行商人。西と南の大陸を旅して物を売ってる商売人さ」
「商人てことはこのクスリは売り物…!ごめんなさい!あたし、手持ちがあんまりなくて…」
言いながら財布を確認する。解毒薬分の手持ちはありそうだが、買い物をする余裕はなさそうだ。そんな様子を見てか、商人は手を振る。
「ああ、いいんだ。私がしたくてやったことだからお代はいらないよ。もう一つ余ったからこれもキミにあげるよ」
そう言って、水のようなもの…解毒薬だろうか?が入った細い瓶を差し出してくる。
「ええぇ!?そんなの悪いよっ!お金払うから…」
「それじゃあ、こうしよう。お金の代わりの対価として、私が質問をするからキミがそれに答える。包み隠さずね。私はお金も大事だけれど、人との付き合いも大事にしたいと思うんだよ。それが例え敵の商人であっても、南陸中をおたずね者にされてるような極悪人でもね」
そこまで聞いてフィアラはドキッとするおたずね者…自分のことを知ってる!
「ああ、怖がらないで聞いて欲しい。キミを突き出そうとも思っちゃいないよ。むしろ、協力したいんだ。見知らぬ人からの差し出しものを、何の疑いもなく手に取るような純粋な子が極悪人のわけがないからね…キミが演技しているなら話は別だけど」
そこで言葉を切り、フィアラを一瞥し頭を下げた。
「どうか私を信じて話をしてくれないだろうか」
「あ、頭を上げてよ。あなたはあたしを助けてくれた。それに、対価を払わなきゃなのはあたしの方なんだから、貰うなら話さないとでしょ?だったら話すから…と言ってもあまり期待しないでね。あたしだってなんでここまでなっちゃったのかよく分からなくて…」
「ふむ…とりあえず、スープでも飲みながら話そうか。これは売り物じゃないから安心して飲んでくれね」
そうして2人はスープを飲みつつ、話を始めたのだった。




