森の出口の戦い
森をかけるフィアラの目の前に橙色の光が見えてくる。日の入り前なのか光もどこか弱々しい。
「出口…あそこが…!」
しかしその足は不意に止められてしまう。目の前を蜂の姿をしたものに遮られてしまったからだ。
その姿は普通の蜂のようだった。違うのは大きさ。人の頭ほどのサイズにドリルのような鋭い針。人の身体など簡単に貫きそうだ。ここは通さんと言わんばかりに羽音をたてる姿を見据えて、フィアラは剣を抜いた。
「今のあたしはすっごくイライラしてるから、容赦しないよっ!」
言いながら剣を振って蜂を切る。胴体を真っ二つにされた蜂は、緑色の体液を撒き散らしながら地面に落ちる。すると仲間の死を嗅ぎつけたのか新たに数体の蜂が現れた。現れた先からフィアラは剣を振って切り落としていく。しかし蜂達は次から次へと現れては襲いかかってくる。
「次から次へと…しつこいっ!」
体当たりをしてくる蜂を避けて胴体を切り落とす。
最後の一匹を斬ると新たにもう1匹現れた。
その一匹はそれまでに斬った蜂とはどこか違っていた。大きさは同じだが色は黒く、眼が真っ赤に光っていた。また黒いモヤのようなものをその身に纏わせている。
(…あれ。どこかで見たような…?)
その姿には既視感があった。つい最近蜂ではないが同じような姿を見た、そんな気がしていた。
呆然と見ていると、黒い蜂は身体を引っ込めてすぐにおしりを突き出した。その先に付いていた針がフィアラに向かって飛んでくる。
とっさに躱す。すると後ろから何かが削れる大きな音が響いた。何事かと振り返る。背後にあった木が穴を空けていた。飛んだ針の大きさ以上の大穴だった。
すぐに蜂に向き直る。幸い何もしてきてはいなかった。針が当たったら取り返しのつかないことになりそう。フィアラは剣を持ち直した。
蜂も様子を見てるのか動く気配がない。フィアラは駆けて蜂に剣を振り抜く。しかし、キィン!と金属音がして弾かれてしまう。
「っ硬ったぁっ!?」
蜂が好機と思ったのか翻り、針を突き刺さんと突き出しながら突進してくる。気づき躱そうとするが、躱し切れず掠らせてしまう。
「うあああっ!!」
悲鳴をあげて腕を抑える。掠った腕からはだらだらと血が流れ、力が入らない。
「こ、これじゃ…」
剣は振れない。残る手は魔法しかないが、上手くいくかわからない。蜂はお構いなしに身体を引っ込めて針を飛ばそうとしていた。
「一か八か…はあああっ!!」
手のひらに火の玉をイメージして火球を作り出す。それを蜂に飛ばして爆裂させる。爆発に巻き込まれた蜂はその身を燃やしてその場に落ちた。
「…やった…の?」
あまりにあっけない終わりにフィアラは力を抜いて膝をつく。肉が焼けこげる臭い。外皮だけ金属質で内側は普通の胴体だったようだが、そんな作りをした蜂など歪で気味が悪い。
不意にゴトッと音がしてそちらに目を向ける。
どこかに引っかかっていたのだろうか、黒い玉が転がっていた。
「何これ?」
フィアラが呟いたと同時、ピシピシッと音を立ててひび割れ、そのまま割れてしまった。
割れたと同時、黒いモヤが天へ昇っていく。
「なんだったんだろう…」
腕を抑えつつ立ち上がる。剣を拾って鞘に納め、森の出口へ向かう。
日はすっかりくれて、辺りは薄暗くなっていた。森から出たところでフィアラは身体の異変を感じた。
急に目眩がしたと思うと身体に力が入らず、倒れてしまう。体温が急速に冷えて寒気を感じた。
(…さっきのやつの…毒?……やば…い…しき…が……)
そのまま声にも出せず、意識を手放してしまった。




