すがる思いで
長髪の女が去ってから数分後。フィアラは立ち上がり、服についた汚れを払う。爆発魔法の後の残った熱で虫は付いてなかったようだ。ただ、湿気った地面にしばらく座ってたおかげで濡れてしまったようだが。
「全然何されたか分からなかったな…最後、何されたんだろう」
思い返す。剣を振りかぶったところで長髪に見られ、気がついたら吹き飛ばされていた。持っていた槍を動かしたようにも見えたが、定かではなかった。
「何にしても、もっと強くなりたいな…」
ため息をつく。剣を教わっていたとはいえ、中途半端で出てきたものである。やはりその剣の腕前は半端なものだろう。
「どうしたら……あっ、本!」
ふと思い至り、袋をひっくり返す。中から出てきた本を見る。
「『可愛い妹のための剣と魔法ガイド』…なんか恥ずかしいんだけど…」
題名はともかく著名としては兄のロウと姉のソフィアの名前が書かれていた。きっとわずかな時間ながら、フィアラのために書かれたものに違いないと思い込み、本を抱きしめる。感謝の気持ちを込めて祈った。
「お兄ちゃん、お姉ちゃん…ありがとう。力を貸してください」
本を開いて一文目から読んだところで、フィアラは本を閉じて投げた。
『この本を開いたということは、フィー、誰かに負けたな?へっへっへー、悔しいのう悔しいのう!マジざ、ま、あー!』
文末にも舌を出して馬鹿にするかのようなイラストが書かれており、開いた1ページ目の見開きからストレスがマッハになるような内容になっていた。
「うがああああ!!お兄ちゃんのバカぁ!!!」
木に向かってガンガンと頭を打ち付ける。ただし出血しない程度に。
額に若干の痛みを感じながら、もう一度本を開く。
『とまあ、これを書いてる時の予感を信じて煽ってみたが、そうでなかったら謝っておこう。本当にそうなっててその辺の木に頭を打ってないことを祈るしかないが』
もう打ってる…心に思いつつ続きを読む。
『正直なところ、今のフィーを旅に出すのは不安でしかない。剣も魔法も未熟、何か他に技能がある訳では無い。しかもお調子者と来た。この本を読むまでに何か成功し、有頂天になってる所を足元掬われたり、そもそも何も起こらず道中で倒れてしまったり、そうなるかもしれないことを思うと、歯痒くもなる。』
グサグサ書きすぎぃ...続きを。
『でもな、フィーが努力家なのは知ってる。お前がした努力は決してお前を裏切らない。だから、今後も努力を続けていきなさい。この本にはお前の努力にアドバイスできるように書くから、困った時また読み返してくれ。それでは、頑張ってな。ロウ』
次のページからは剣の振り方から武器の特徴、使い方など戦闘に関する情報が引用で書かれていた。
途中のページからは魔法についてのページになっており、姉からのメッセージも書かれていた。
『ロウくんがいっぱい書いてるみたいだから、私は簡潔にしちゃうわね。フィアラ、頑張ってね。応援してる』
その次のページからはソフィアによる魔法講座が書かれていた。
「ソフィ姉、ありがとう。でも今は」
そう呟いて本を閉じ立ち上がる。袋に突っ込んで走り出す。
「こんな虫だらけの森からは早く出よう!気持ち悪い〜!!」
出口に向かってかけていくのだった。




