刺客との戦い
遅くなりました。
「わあっ!?」
驚きつつナイフが飛んで来た方向を見る。そこには長髪の人が立っていた。ポニーテールに結われた髪を腰まで垂らし、動きやすそうな装束を纏って凛然と立っている。その顔には顎から鼻までを覆面で覆っていた。
「君は…!?」
問いかけるが返事は返ってこない。ただフィアラを鋭く見つめている。見定めしているような沈黙。しかし、すぐに沈黙は破られる。
どこからともなく槍を出現させて両手に持ち、駆け出して一気に距離が詰められる。呆然と見ていたフィアラに向かって槍を振り回した。
「うわあっ!」
長髪から離れるように飛び込んで振られる槍を躱す。第二撃は来ていなかった。フィアラはすぐに立ち上がり、剣を抜く。
「突然何さ!?危ないじゃない!!」
長髪は何も言わずゆっくりと歩み、投擲したナイフを回収、懐の鞘に納めるとポイっと捨ててフィアラに向き直り、槍を構える。戦闘の意思表示だ。
「むう!そっちがその気なら、こっちだって容赦しないよっ!」
フィアラも剣を構え、相手を見据える。
間合いは遠い。相手が槍使いなら魔法が使えるこっちが有利だ。投擲してきたナイフは捨てている。
「風の刃よ!…!?」
フィアラはそのまま風で出来た刃をイメージして長髪に向けて飛ばそうとする。が、長髪はそこにおらず、先ほどと同じように一気に距離を詰め、槍を振りかぶっていた。距離はもう目の前だ。
「は、速いっ!?」
魔法をやめて剣で槍を防ぐ。フィアラも負けじと剣を振るが、長髪はバックステップで躱すとすぐに距離を詰めて今度は突きを数回放ってくる。フィアラはなんとか躱すものの躱しきれず槍の穂先をその身に掠らせてしまう。
「くっ…痛いなぁっ!もうっ!」
苛立ちに任せて剣を振るうがバックステップで躱され、同じように距離を詰められ、同じように突きを繰り出してくる。このままではジリ貧だ。
「こうなったら…」
もう一度剣を振るって距離を置く。詰めてくるタイミングを合わせて自分の足元に魔法を放つ。比較的大きめの炎の魔法を、爆発魔法を。
光とともに爆炎が広がる。炎の熱さにむせながらも長髪を探す。いた。爆発で飛ばされて木に背中を打ち、むせ込んでいるようだった。一気に近づいて剣を振りかぶる。これで勝ちだ!そう思ったのもつかの間、時間を止められたかのような奇妙な感覚がフィアラを襲った。
長髪がフィアラを見た。と思うとフィアラは何かに吹き飛ばされ、木に背中を打ち付けてしまう。背中からの突然の衝撃に声も出せずにむせ込んでしまう。苦しさが取れて、はっと顔を上げると目の前に槍を突きつけられていた。
しばらくそのまま時間が過ぎる。実際には何分も経っていないのだが。長くそのままだった気がした。
「…こんなものかと思っていたけれど、最後のは驚いたわ…」
女声のどちらかというと低めの声が響く。声とともに突きつけられた槍も降ろされる。
「あたしを…殺さないの…?」
自分で口に出して恐ろしく感じて身震いをする。命の危険だったのだという事実があった。
「最初はそう思ったんだけどね…あなたから悪い感じがしなかったから、やめた」
フィアラに背を向け、何かを探す。見つけて拾い上げる。先ほどのナイフだった。懐に引っ掛けるとフィアラの前から立ち去ろうとする。
「スターティアで私達を見ていたから、というのが一つ。次の日には要注意人物として手配されていたのが一つ。そんなところかしら。あなたを追いかけてきた理由は」
フィアラはやっぱり…という顔をする。薄々ではあったが、スターティアの村で出くわした冒険者の1人だったことを思い出していた。長髪はもう一度フィアラを見つめる。
「あなたがどういう経緯で村を出て言ったのは知らないけど、忠告しておくわ。あなたが今後悪いことをしなければ、私は見逃してあげる。でももし悪いことをした時は、容赦しない。すぐに殺してあげる」
フィアラから目をそらし歩き出す。
「その時が来ないことを祈ってるわ」
そのまま長髪は去っていった。
魔力を感知された結果です。
スターティアで出くわした長髪が追いついてきました。しかも惜敗してしまいます。今後はどうなっていくのでしょうか…




