追われる少女、森へいく
「ふーんふふふーん…あっ、あの雲ひよこみたいな形してる!かわいい、ぴよぴよ!」
鼻歌混じりにフィアラは街道を歩く。時折空を見上げては形を評している。
特別意味がある訳でもないが、行く道の景色を彼女なりに楽しもうとしているのだった。
「ぴよぴよ…お?何かある…」
そうしながら進み続けていると、立て札のようなものが見えてきた。近づいて見てみると、それは木の板で出来た掲示板のようなものだった。道しるべが書いてある以外に、紙が一枚貼られている。
『この先港あり。金髪黒服の女を見かけた者は港役場まで!』
「…金髪黒服…この人とは気が合いそうだね!」
あたしの事なんだろうけど。という言葉は飲み込む事にした。
闇属性の疑いという事で牢に入れられ、処刑を待つばかりであったところを脱獄。追っ手があるようなことを兄が教えてくれていた。きっと、あの村では自分は極悪人なんだろうなと思うと悲しくなってくる。
はずれで暮らしていたとはいえ、それなりに好きになった村だ。散歩に出かければ通りすがりの人と話をしたりして………
「あれ…それくらいだねー。あはは…」
はぁ、と肩を落とす。それでも好きになったはずだからと濡れてない目をこすり、前を向く。
「港には行かない方がいいよね…うーみーって叫びたかったなー」
ぼやき、別の道しるべを見る。注意喚起の横にもう一つ書いてあった。
『森へ。西の大陸を目指す方はこちら。』
その方角へフィアラは歩き出す。空を見上げると、陽はひよこの雲に隠れていた。
ーーーー
ーー
黒の少女を迎えたのは、緑の壁だった。壁らしく茶色の柱が立っており、緑の重みを支えているように思えた。少女が歩いて来た道は、緑の壁の中を果敢にも入り込み、しかし途中で途切れているようにも思えた。
「すごーい…こんなにもたくさんの木々、初めて見たかも…」
続く道のりに従い、少女は森に入り込む。
森の中は木々が立ち並び、外界の光も届きにくいようで薄暗くなっていた。またそのせいか地面もしっとりと湿っており、足を取られそうだった。
「うーん、さすが森だ。暗いし、虫もいっぱいいるねー。うえ、耳元で飛ぶなぁ!」
近くでぶーんと音がして頭を伏せる。また音がした気がして耳を叩いてしまう。
「痛いぃ…んもうっ!調子に乗ってると焼き払っちゃうぞ!」
火の魔力をイメージし、放出する。フィアラの手から炎が出て、彼女の周辺を温めた。
「……?」
フィアラは不思議そうに自分の手を見る。
普段なら魔力が暴発して大きな炎が出てしまうのだがそうはならず、イメージ通りに魔力を使うことが出来た。
「これも封印が解かれた…から?」
そうだとするなら、きっと今までとは違って魔法も上手く発動出来るかもしれない。姉が使ってた魔法も使えるかも!そう思ったフィアラは未来ある自分の力を感じてにんまりと笑った。
しかし彼女は忘れてた。自分が追われる身であること。放たれた魔力は探知出来ることを。
トスッ
先へ進もうとしたフィアラの目の前にあった木にナイフが刺さった。




