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魔人フィアラー旧作ー  作者: 猫人侍
プロローグ
15/29

丘の上の壮行会



村を出たフィアラは待ち合わせの場所へと急ぐ。

村から丘への道のりには住んでいた家があるが、明かりは着いてなく、人気も無いようだった。兄も姉も一緒に待っているのだろう。家の中には入らず、丘へと先を急ぐ。


(…なんか、寂しいな)


丘へ続く道は彼女の散歩道だった。暇が出来ればこの道を通り、丘の上で空を見上げて時間を潰す。それがフィアラの楽しみでもあった。今回限りでここを歩くことはなくなるのだろう。


(…でも…)


フィアラはわくわくしていた。憧れだった世界に旅に出る。これから始まる冒険。どんな感じになるだろう。どんな景色が見られるんだろう。どんな人に会うんだろう。思いを馳せながら道を急ぐ。


満月の夜でありながら、数多の星々がこれでもかと輝いている。見上げた空の中、一際目を引くのはやはり大きな月だろうか。

丘の上では何故かは不明になるが、月が大きく見える。手をかざして、手のひらに収まらないほどの大きさになる。手を伸ばす。届きそうで届かない大きな大きな月。


その真下、丘の頂の大岩の上に目的の姿はあった。

1組の男女が仲睦まじく座り、空を見上げている。男は女の肩を引き寄せるように抱き、女は男に身体を預けるように男の肩にもたれかかっている。

と、男が女の身体を起こし、2人揃って立ち上がり、振り返る。


「待っていたぞ」


「無事に脱出出来たのね。フィアラ」


男、ロウと女、ソフィアが口を開く。


「うん…あたし来るの早かったのかな?なんだか、お楽しみの途中だったみたい」


「そんなことはないさ」


「ええ。フィアラが来るまでっていうことにしてたのよ」


ロウとソフィアは2人でいる時は本当に仲睦まじくしている。時にはフィアラがいる前でもイチャイチャと…羨ましいと思うこともフィアラにはあった。


「さて、時間はあるとしても油断は出来ないから、することをとっととやっちゃおうか。誰にも見られなかったか?たまにカンがいいやつがいるから」


大丈夫だったと思う…と伝える。冒険者らしき人達が居たことも。


「うん、心配だな。ともかく始めるぞ。まずは俺から」


ロウは小さな袋のような物を手渡した。


「定番のアイテム袋だ。持ち主の魔力量によって入れられる量が変わる。魔力を流してみろ」


言われたように魔力を流す。袋はみるみる大きくなり…


「…でかすぎだな…どんだけだよ」


袋は人が何人も入れる程に大きくなった。友達100人入れてもまだ余裕がありそうだ。ソフィアも大きさに目を丸くしている。


「まぁ大きさは流す魔力で調節出来るからな。ここまで大きくされると引かれるから適当な大きさで使えな」


うんと頷き、袋を小さくする。背負えるくらいの大きさにした。

袋の調節を見届けるとロウはソフィアを見る。


ソフィアはフィアラの首にペンダントを掛けた。


「これは御守りよ。私の魔力をありったけ込めた、風魔の御守り。本当にいざという時に使って」


そう言うとソフィアは慈しむようにフィアラを抱きしめ、頭を撫でる。


「身体に気をつけてね。あなたの旅があなたにとって良いものになりますように…」


そしてフィアラの頬に口をつけて離れる。フィアラが見上げると、ソフィアは笑いながらも瞳に涙を浮かべていた。フィアラも思わず涙ぐむがなんとか耐える。


「ソフィ姉。ありがとう!」


笑顔で伝えた。


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