丘の上の壮行会
村を出たフィアラは待ち合わせの場所へと急ぐ。
村から丘への道のりには住んでいた家があるが、明かりは着いてなく、人気も無いようだった。兄も姉も一緒に待っているのだろう。家の中には入らず、丘へと先を急ぐ。
(…なんか、寂しいな)
丘へ続く道は彼女の散歩道だった。暇が出来ればこの道を通り、丘の上で空を見上げて時間を潰す。それがフィアラの楽しみでもあった。今回限りでここを歩くことはなくなるのだろう。
(…でも…)
フィアラはわくわくしていた。憧れだった世界に旅に出る。これから始まる冒険。どんな感じになるだろう。どんな景色が見られるんだろう。どんな人に会うんだろう。思いを馳せながら道を急ぐ。
満月の夜でありながら、数多の星々がこれでもかと輝いている。見上げた空の中、一際目を引くのはやはり大きな月だろうか。
丘の上では何故かは不明になるが、月が大きく見える。手をかざして、手のひらに収まらないほどの大きさになる。手を伸ばす。届きそうで届かない大きな大きな月。
その真下、丘の頂の大岩の上に目的の姿はあった。
1組の男女が仲睦まじく座り、空を見上げている。男は女の肩を引き寄せるように抱き、女は男に身体を預けるように男の肩にもたれかかっている。
と、男が女の身体を起こし、2人揃って立ち上がり、振り返る。
「待っていたぞ」
「無事に脱出出来たのね。フィアラ」
男、ロウと女、ソフィアが口を開く。
「うん…あたし来るの早かったのかな?なんだか、お楽しみの途中だったみたい」
「そんなことはないさ」
「ええ。フィアラが来るまでっていうことにしてたのよ」
ロウとソフィアは2人でいる時は本当に仲睦まじくしている。時にはフィアラがいる前でもイチャイチャと…羨ましいと思うこともフィアラにはあった。
「さて、時間はあるとしても油断は出来ないから、することをとっととやっちゃおうか。誰にも見られなかったか?たまにカンがいいやつがいるから」
大丈夫だったと思う…と伝える。冒険者らしき人達が居たことも。
「うん、心配だな。ともかく始めるぞ。まずは俺から」
ロウは小さな袋のような物を手渡した。
「定番のアイテム袋だ。持ち主の魔力量によって入れられる量が変わる。魔力を流してみろ」
言われたように魔力を流す。袋はみるみる大きくなり…
「…でかすぎだな…どんだけだよ」
袋は人が何人も入れる程に大きくなった。友達100人入れてもまだ余裕がありそうだ。ソフィアも大きさに目を丸くしている。
「まぁ大きさは流す魔力で調節出来るからな。ここまで大きくされると引かれるから適当な大きさで使えな」
うんと頷き、袋を小さくする。背負えるくらいの大きさにした。
袋の調節を見届けるとロウはソフィアを見る。
ソフィアはフィアラの首にペンダントを掛けた。
「これは御守りよ。私の魔力をありったけ込めた、風魔の御守り。本当にいざという時に使って」
そう言うとソフィアは慈しむようにフィアラを抱きしめ、頭を撫でる。
「身体に気をつけてね。あなたの旅があなたにとって良いものになりますように…」
そしてフィアラの頬に口をつけて離れる。フィアラが見上げると、ソフィアは笑いながらも瞳に涙を浮かべていた。フィアラも思わず涙ぐむがなんとか耐える。
「ソフィ姉。ありがとう!」
笑顔で伝えた。




